◆ 教育の質より目先の財源? (TOKYO Web)
財務省は二十七日、財政制度等審議会(会長・吉川洋東大大学院教授)で、公立の小学校一年生で導入されている三十五人学級を、従来の四十人学級に戻すよう求める方針を提示した。
いじめ防止などに目立った改善がみられないとの理由だが、「未来への投資」ともいえる教育環境を、財政負担軽減の観点で安易に後退させることになる。文部科学省は強く反発しており、年末の予算編成で大きな争点となりそうだ。
三十五人学級は少人数指導によるきめ細かな教育が必要との判断から、民主党政権が二〇一一年に導入。一学級の人数を一年生では三十五人以下、二年生以降は四十人以下にすると定めた。
しかし、財務省が三十五人学級を導入する前の五年間平均(〇六~一〇年)と、導入後(一一~一二年)を検証した結果、一年生のいじめ認知割合は導入前が10・6%だったのに対し、導入後は11・2%と逆に微増。不登校は導入前が4・7%、導入後が4・5%と微減だった。
このため、財務省は「三十五人学級に明確な政策効果があったとは認められない」として、四十人学級に戻すよう要求。さらに、四十人学級に戻した場合は、教職員数を四千人減らすことができ、義務教育費の国庫負担割合(国は三分の一)を八十六億円削減できると試算を示した。
これに対し、下村博文(はくぶん)文科相は「きめ細かな指導という意味では、三十五人学級の方が望ましい」と、四十人学級復活に難色を示している。
<財政制度等審議会> 国の予算編成や財政のあり方を議論する財務相の諮問機関。委員は有識者や学者、財界人らで構成され、財政制度や財政投融資、国有財産など五つの分科会がある。新年度予算編成に向けて開かれる秋の会合では、各予算の方向性を議論・検証し財務相に「建議(意見書)」を提出。建議は予算編成に一定の影響を与えるため注目されている。事務局は財務省が担当している。
『東京新聞』(2014年10月28日【1面トップ】)
http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2014102890070959.html
◆ 「35人で指導充実」道半ばなのに… (TOKYO Web)
財務省が四十人学級の復活を求めた背景には、学級数を減らして教職員の数や教員給与を削減し、財政支出を軽くしたい狙いがある。だが、少人数学級を解消すれば「教室内での指導が行き届かなくなる」との不安が、教育現場や親から異口同音に聞かれる。数値や政策効果だけでは測れない、丁寧な議論が求められる。
「三十五人」を軸にした少人数学級の実現は、子の習熟度に応じた多様な指導を充実させたり、いじめ問題などに向き合うための「教育条件の整備」が目的だった。当初は全学年で導入しようとしたが、財政難のため一年生に限って導入した。「きめ細かい指導」の普及は、まだまだ道半ばなのが実情だ。
わずか三年余りで「効果なし」と判断するのは乱暴ともいえる。
三十五人学級見直し論は、「少子化で子どもが減るならば、教員数や給与を減らすべきだ」という財政上の論理にほかならない。さらに、四十人学級復活で生まれる約九十億円の財源を、教育予算の中で別途議論される「幼児教育無償化」の経費に充当すればいいという皮算用も財務省内にある。
また財務省は、日本の教育支出全体に占める教員給与の割合が、国際的に他の先進国に比べて高いと主張する。しかし、経済協力開発機構(OECD)の調査では、二〇一一年の国内総生産(GDP)に占める教育機関への日本の支出は、データの比較可能な三十一カ国の中で五年連続最下位だ。
目先の財源を得ることばかりが重視され、教育の質が落ちる事態は避けなければならない。
財政審の吉川洋会長も「教育の質が落ちていいと考える人は誰もいない」と訴える。その前提に立ち、よりよい教育を実現する方策が求められる。 (石川智規)
『東京新聞』(2014年10月28日)
http://www.tokyo-np.co.jp/article/economics/news/CK2014102802000114.html
財務省は二十七日、財政制度等審議会(会長・吉川洋東大大学院教授)で、公立の小学校一年生で導入されている三十五人学級を、従来の四十人学級に戻すよう求める方針を提示した。
いじめ防止などに目立った改善がみられないとの理由だが、「未来への投資」ともいえる教育環境を、財政負担軽減の観点で安易に後退させることになる。文部科学省は強く反発しており、年末の予算編成で大きな争点となりそうだ。
三十五人学級は少人数指導によるきめ細かな教育が必要との判断から、民主党政権が二〇一一年に導入。一学級の人数を一年生では三十五人以下、二年生以降は四十人以下にすると定めた。
しかし、財務省が三十五人学級を導入する前の五年間平均(〇六~一〇年)と、導入後(一一~一二年)を検証した結果、一年生のいじめ認知割合は導入前が10・6%だったのに対し、導入後は11・2%と逆に微増。不登校は導入前が4・7%、導入後が4・5%と微減だった。
このため、財務省は「三十五人学級に明確な政策効果があったとは認められない」として、四十人学級に戻すよう要求。さらに、四十人学級に戻した場合は、教職員数を四千人減らすことができ、義務教育費の国庫負担割合(国は三分の一)を八十六億円削減できると試算を示した。
これに対し、下村博文(はくぶん)文科相は「きめ細かな指導という意味では、三十五人学級の方が望ましい」と、四十人学級復活に難色を示している。
<財政制度等審議会> 国の予算編成や財政のあり方を議論する財務相の諮問機関。委員は有識者や学者、財界人らで構成され、財政制度や財政投融資、国有財産など五つの分科会がある。新年度予算編成に向けて開かれる秋の会合では、各予算の方向性を議論・検証し財務相に「建議(意見書)」を提出。建議は予算編成に一定の影響を与えるため注目されている。事務局は財務省が担当している。
『東京新聞』(2014年10月28日【1面トップ】)
http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2014102890070959.html
◆ 「35人で指導充実」道半ばなのに… (TOKYO Web)
財務省が四十人学級の復活を求めた背景には、学級数を減らして教職員の数や教員給与を削減し、財政支出を軽くしたい狙いがある。だが、少人数学級を解消すれば「教室内での指導が行き届かなくなる」との不安が、教育現場や親から異口同音に聞かれる。数値や政策効果だけでは測れない、丁寧な議論が求められる。
「三十五人」を軸にした少人数学級の実現は、子の習熟度に応じた多様な指導を充実させたり、いじめ問題などに向き合うための「教育条件の整備」が目的だった。当初は全学年で導入しようとしたが、財政難のため一年生に限って導入した。「きめ細かい指導」の普及は、まだまだ道半ばなのが実情だ。
わずか三年余りで「効果なし」と判断するのは乱暴ともいえる。
三十五人学級見直し論は、「少子化で子どもが減るならば、教員数や給与を減らすべきだ」という財政上の論理にほかならない。さらに、四十人学級復活で生まれる約九十億円の財源を、教育予算の中で別途議論される「幼児教育無償化」の経費に充当すればいいという皮算用も財務省内にある。
また財務省は、日本の教育支出全体に占める教員給与の割合が、国際的に他の先進国に比べて高いと主張する。しかし、経済協力開発機構(OECD)の調査では、二〇一一年の国内総生産(GDP)に占める教育機関への日本の支出は、データの比較可能な三十一カ国の中で五年連続最下位だ。
目先の財源を得ることばかりが重視され、教育の質が落ちる事態は避けなければならない。
財政審の吉川洋会長も「教育の質が落ちていいと考える人は誰もいない」と訴える。その前提に立ち、よりよい教育を実現する方策が求められる。 (石川智規)
『東京新聞』(2014年10月28日)
http://www.tokyo-np.co.jp/article/economics/news/CK2014102802000114.html
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