◆ コロナ禍の“君が代” 東京公立学校卒業・入学式 (『紙の爆弾』)
取材・文◎永野厚男

対都教委"君が代"5次訴訟を提訴した現・元教職員ら
~3月31日の卒業式総括集会で(撮影・永野厚男)
「二個上(二学年上)の先輩の時にあった『式歌』がないのに、いきなり“君が代”の大きな声の歌が流れた」今年三月中旬、東京都内のある公立学校の卒業式終了後、校門外で取材していた筆者に、生徒たちが語った。
生徒会等を中心に卒業学年の生徒が練習を重ね、卒業式で保護者や下級生に披露する式歌(定番は「旅立ちの日に」「大地讃頌(だいちさんしょう)」等)が削除される一方、開式の辞で起立したまま、歌唱入り“君が代”CDを大音量で聞かされたのだ。
本誌昨年六月号で詳述したとおり、東京都教育委員会は二〇〇三年十月二十三日、入学・卒業式等で「教職員は、会場の指定された席で(舞台壇上正面に掲げた)国旗に向かって起立し、国歌を斉唱する」等を盛り込んだ“君が代”強制を強化する”10・23通達”を発出し、校長からこの文言通りの職務命令を出させ、不起立・ピアノ不伴奏等の教職員に懲戒処分を出した(被処分者は二一年四月末現在延べ四八四人、四八五件に)。
都教委は〇六年三月十三日には「児童生徒への“君が代”起立・斉唱指導を、教職員に徹底する」よう強制する通達まで発出している。
◆ 昨年の入学式は“君が代”なしも可だった
一年余前、コロナ禍の卒業式を直前に控えた二〇年二月二十八日。飛沫感染のおそれがあるとして、都教委指導企画課の小寺康裕課長(当時。現都教職員研修センター研修部長)と桐井裕美主任指導主事(同。現日野市立第三小校長)らが、当初は教室に分散し“君が代”なしの放送等での卒業式も可という趣旨の事務連絡を、都立学校に出した。
しかし同日の三時間後には、「体育館で国旗掲揚の下、卒業学年の生徒全員を集めた形で、“君が代”の起立・斉唱を強制する式」以外は不可とする、朝令暮改の事務連絡を出し直した。
これに対し、強い批判の声が湧き起こった。結果、入学式に向けた藤田裕司・都教育長の四月一日付通知は、“君が代”を含む歌(歌唱)は一切なしとし、二〇年四月の入学式では、杉並区や国立市の公立小中では“君が代”は「起立・斉唱はもちろんメロディーも一切なし」の入学式を実現できた(ただし校歌もなし。日の丸は壇上正面)。
保守市政の八王子市・日野市等の公立小中は“君が代”起立・斉唱を強行したものの、“君が代”なしだった国立市のある中学校では入学式終了後、校長の生徒を励ます感動的な話もあいまって、保護者から大きな拍手が起きている。
都立学校(高校・特別支援校)は安倍政権下の一斉休校要請の影響もあり、五月下旬以降の学校再開後も入学式そのものが行なわれず、必然的に“君が代”は一切なかった。
◆ 大音量の歌唱入り“君が代”CD
しかし今年三~四月の卒業・入学式に向け、都教委は二〇年十二月二十四日、一変した二種の通知を都立学校校長と区市町村教委(小中を管轄)に宛てメールした。
一通目、藤田裕司教育長の通知は、「歌唱は行なわず」と一見コロナ禍に配慮するポーズをとりつつ、「CD等に録音された歌唱入りの国歌を会場全体に聞こえるように再生する」とした。
同通知はこの前の箇所で、「教職員が本通知に基づく校長の職務命令に従わない場合は、服務上の責任を問われる(処分する)」と脅迫したうえで、
①式次第に”国歌斉唱”と記載
②教職員は会場の指定された席で国旗に向かって起立する、
と強制。
式典司会者は”国歌斉唱”の前の開式の辞で児童生徒、参列の保護者にも起立を促すので、自分の意志で進んで着席する人がいなければ、全員起立の状態が作られる。
研究者らが「二〇年四月の通知は、コロナ禍ゆえ“君が代”を含む歌は一切なしとしていたが、二〇年十二月通知で“君が代”歌唱CDを『会場全体に聞こえるように流す』よう指示。このように内容を変えた理由は?」と、都教委にメールで質問。
都教委は、「今般の都立学校の卒業・入学式においては、式典会場内で、生徒等の間隔を十分に確保することが困難であることなどが想定されることから、国歌の指導に関する学習指導要領の規定と国のマニュアル等を踏まえて策定している都教委の感染症対策ガイドラインの双方に鑑み、国歌の歌唱はせず歌唱入りCDを会場全体に聞こえるように再生することとしたものです」とメールで回答した。
だが都教委の本音は、「天皇の治世の永続を願う」という“君が代”の歌詞を、会場全体に響き渡る大音量で流し起立状態で聞かせることにより、「児童・生徒一人一人に、(略)自国の一員としての自覚をもたせることが必要である。また国家の象徴である国旗及び国歌に対して、正しい認識をもたせるとともに、(略)それらを尊重する態度を育てることが大切である」(一二年一月二十四日の都教委臨時会”議決”)等、特異な国家主義思想を児童生徒に浸透させる意図があるのではないか。
◆ ほかを切り詰めてでも。君が代”に二分を確保
二通目である、指導部の小寺・佐藤聖一・丹野哲也三課長(現在はどちらも異動)名の通知は再度、“君が代”CD強制をダメ押ししたうえで、
入学式は「証書授与」や送辞・答辞がないため「計43分の実施例」を載せている。
実質四〇秒程度の“君が代”は、副校長が教職員の起立状況を点検するためか二分もとる一方、校歌(たいてい三番くらいまである)は二分しか計上しない等、学校現場から離れて久しい役人らしい、机上の計算だ。
この通知は、「生徒表彰等は、実施しない又は簡略化して実施する」とも明記。
生徒の要望が強い、この「表彰等」を実施したある都立高校教員に取材すると、「校長が指定の計六〇分に収めるため、自分の式辞の時間を三分削るから表彰等を実施したい、と都教委にお伺いを立てていた」という。校長は完全に都教委の支配下にあるのだ。
これら通知が出ると、これまで音楽教員のピアノ伴奏を強制されていた都立高校の中には、副校長が大慌てで校内予算から“君が代”CDを購入するところも出た。
一方、同様にピアノ伴奏を強制されてきた小学校の教員に取材すると、「副校長らは慌てず”余裕”の対応だった」という。
音楽教科書の教師用指導書が全学年“君が代”CDを付けてしまっているからだ。
因みに、寡占化で二社しかない小学校音楽の教科書会社は「いずれの学年でも歌えるよう指導する」と文科省が改悪した指導要領に忠実で、巻末に一頁を使い、小1から小6まで全て“君が代”の歌詞と楽譜を掲載。「平和を願う歌です」と、誤った説明まで載せている。
◆ “君が代”第五次訴訟を提訴
都立学校の現・元教職員十五人が三月三十一日午前、“君が代”不起立への二六件の処分の取消しを求め、東京地裁に第五次訴訟を提訴した。
第一次訴訟では最高裁が一二年一月十六日、戒告処分は容認しつつ、「減給以上の処分は原則違法」とし、都教委に対し減給処分の取消しを命じる判決を出し、これを踏襲した第四次訴訟までと、小学校音楽教諭一人の減給取消し訴訟、根津公子・河原井純子両元特別支援校教諭停職取消し訴訟を含め、”10・23通達”関連で教職員側は、計七七件・六六人の処分取消しを勝ち取っている(根津さんは四件中二件勝訴)。
被処分者の会など”10・23通達”関連訴訟四団体は同日午後、都内で卒業式総括集会を開催。現・元教職員や弁護士、保護者ら約八○人が参加した。国際機関(ILO/UNESCO)は一九年、式典で明らかな混乱をもたらさない場合にまで”国歌”の起立斉唱行為のような”愛国”的行為を強制することは、個人の価値観や意見を侵害する、との勧告を出した。第五次訴訟原告団はこれを踏まえ、「東京の教育行政の異常さは国際社会にも認識されるに至っている」と明記した声明を出した。
その上で声明は、「『人権の最後の砦』である裁判所は今こそ、都教委の暴走から国民の権利・自由を守るため、問題解決に向けてその役割を果たすべき」と訴えている。
「教育公務員だからという理由で、基本的人権(思想・良心の自由)を制限されてたまるか、という思いで不起立した」と語った原告男性元教諭は、「のちに都高教組の支部長になった他校のある教員が、”10・23通達”後『うちの学校は幸い不起立者がいなくて良かった」と言っていた」(下線は筆者)というエピソードを紹介。教職員組合一部幹部の右傾化に、会場からため息も。
また、都教委(主に研修センターの課長ら)は、不起立処分の教員に課す“再発防止研修”と称する懲罰・いじめ研修で、「国歌斉唱時起立し、生徒に範を示せ」と、何度も”説諭”する。
原告の女性教諭は「教員が”国歌斉唱”時に立てば、生徒に『起立しなければいけない』という圧力になる。生徒に起立斉唱させるための圧力装置として使われることが、教員としての私の自尊心を奪うから、起立できない」と発言した。
筆者は、「自分に正直に生き、生徒にも誠実に接している原告たち」と、「上から目線の都教委や、その命令に抵抗せず従う一部組合ダラ幹(ここ十数年で元組合役員で校長になった者が数人いる)」とを頭の中で比較。当然ながら、前者の生き方に共感した。
※ 永野厚男(ながのあつお)
文科省・各教委等の行政や、衆参・地方議会の文教関係の委員会、教育裁判、保守系団体の動向などを取材。平和団体や参院議員会館集会等で講演。
月刊『紙の爆弾』2021年6月号
≪参考資料≫
「件名」から以下が、教育行政研究会の質問への都教委のメール回答の全文です。
第1段落の「感染症対策等」は、第2段落と重複しています。また第3段落は、都教委のいわば決意表明であり、「通知の内容を変えた理由は?」という質問に正対していません。
↓
件名:ご質問に対する回答(東京都教育庁)
<質問>
都教育長・藤田裕司様の2020年4月1日付通知は、コロナ禍ということで“君が代”を含む歌(歌唱)は一切なしとしていました。しかし20年12月24日付の通知は“君が代”の歌詞入りCDを、「会場全体に聞こえるように流す」よう指示しました。このように内容を変えた理由を教えて下さい。
<回答>
都教育委員会は、国内及び都内における新型コロナウイルスの感染状況や国や都の方針等を踏まえ、都立学校における感染症防止対策を講じた教育活動の在り方を決定しており、感染状況の変化や国や都の対策等の変更に応じて、教育活動の在り方も不断に見直しを図り、変更してまいりました。
今般の都立学校の卒業式・入学式においては、式典会場内で、生徒等の間隔を十分に確保することが困難であることなどが想定されることから、国歌の指導に関する学習指導要領の規定と国のマニュアル等を踏まえて策定している都教育委員会のガイドラインの双方に鑑み、「国歌の歌唱はせずCD等に録音された歌唱入りの国歌を会場全体に聞こえるように再生する」こととしたものであります。
今後とも、学習指導要領や通達に基づき、卒業式・入学式が適正に実施されるよう引き続き、各学校を指導していきます。
取材・文◎永野厚男

対都教委"君が代"5次訴訟を提訴した現・元教職員ら
~3月31日の卒業式総括集会で(撮影・永野厚男)
「二個上(二学年上)の先輩の時にあった『式歌』がないのに、いきなり“君が代”の大きな声の歌が流れた」今年三月中旬、東京都内のある公立学校の卒業式終了後、校門外で取材していた筆者に、生徒たちが語った。
生徒会等を中心に卒業学年の生徒が練習を重ね、卒業式で保護者や下級生に披露する式歌(定番は「旅立ちの日に」「大地讃頌(だいちさんしょう)」等)が削除される一方、開式の辞で起立したまま、歌唱入り“君が代”CDを大音量で聞かされたのだ。
本誌昨年六月号で詳述したとおり、東京都教育委員会は二〇〇三年十月二十三日、入学・卒業式等で「教職員は、会場の指定された席で(舞台壇上正面に掲げた)国旗に向かって起立し、国歌を斉唱する」等を盛り込んだ“君が代”強制を強化する”10・23通達”を発出し、校長からこの文言通りの職務命令を出させ、不起立・ピアノ不伴奏等の教職員に懲戒処分を出した(被処分者は二一年四月末現在延べ四八四人、四八五件に)。
都教委は〇六年三月十三日には「児童生徒への“君が代”起立・斉唱指導を、教職員に徹底する」よう強制する通達まで発出している。
◆ 昨年の入学式は“君が代”なしも可だった
一年余前、コロナ禍の卒業式を直前に控えた二〇年二月二十八日。飛沫感染のおそれがあるとして、都教委指導企画課の小寺康裕課長(当時。現都教職員研修センター研修部長)と桐井裕美主任指導主事(同。現日野市立第三小校長)らが、当初は教室に分散し“君が代”なしの放送等での卒業式も可という趣旨の事務連絡を、都立学校に出した。
しかし同日の三時間後には、「体育館で国旗掲揚の下、卒業学年の生徒全員を集めた形で、“君が代”の起立・斉唱を強制する式」以外は不可とする、朝令暮改の事務連絡を出し直した。
これに対し、強い批判の声が湧き起こった。結果、入学式に向けた藤田裕司・都教育長の四月一日付通知は、“君が代”を含む歌(歌唱)は一切なしとし、二〇年四月の入学式では、杉並区や国立市の公立小中では“君が代”は「起立・斉唱はもちろんメロディーも一切なし」の入学式を実現できた(ただし校歌もなし。日の丸は壇上正面)。
保守市政の八王子市・日野市等の公立小中は“君が代”起立・斉唱を強行したものの、“君が代”なしだった国立市のある中学校では入学式終了後、校長の生徒を励ます感動的な話もあいまって、保護者から大きな拍手が起きている。
都立学校(高校・特別支援校)は安倍政権下の一斉休校要請の影響もあり、五月下旬以降の学校再開後も入学式そのものが行なわれず、必然的に“君が代”は一切なかった。
◆ 大音量の歌唱入り“君が代”CD
しかし今年三~四月の卒業・入学式に向け、都教委は二〇年十二月二十四日、一変した二種の通知を都立学校校長と区市町村教委(小中を管轄)に宛てメールした。
一通目、藤田裕司教育長の通知は、「歌唱は行なわず」と一見コロナ禍に配慮するポーズをとりつつ、「CD等に録音された歌唱入りの国歌を会場全体に聞こえるように再生する」とした。
同通知はこの前の箇所で、「教職員が本通知に基づく校長の職務命令に従わない場合は、服務上の責任を問われる(処分する)」と脅迫したうえで、
①式次第に”国歌斉唱”と記載
②教職員は会場の指定された席で国旗に向かって起立する、
と強制。
式典司会者は”国歌斉唱”の前の開式の辞で児童生徒、参列の保護者にも起立を促すので、自分の意志で進んで着席する人がいなければ、全員起立の状態が作られる。
研究者らが「二〇年四月の通知は、コロナ禍ゆえ“君が代”を含む歌は一切なしとしていたが、二〇年十二月通知で“君が代”歌唱CDを『会場全体に聞こえるように流す』よう指示。このように内容を変えた理由は?」と、都教委にメールで質問。
都教委は、「今般の都立学校の卒業・入学式においては、式典会場内で、生徒等の間隔を十分に確保することが困難であることなどが想定されることから、国歌の指導に関する学習指導要領の規定と国のマニュアル等を踏まえて策定している都教委の感染症対策ガイドラインの双方に鑑み、国歌の歌唱はせず歌唱入りCDを会場全体に聞こえるように再生することとしたものです」とメールで回答した。
だが都教委の本音は、「天皇の治世の永続を願う」という“君が代”の歌詞を、会場全体に響き渡る大音量で流し起立状態で聞かせることにより、「児童・生徒一人一人に、(略)自国の一員としての自覚をもたせることが必要である。また国家の象徴である国旗及び国歌に対して、正しい認識をもたせるとともに、(略)それらを尊重する態度を育てることが大切である」(一二年一月二十四日の都教委臨時会”議決”)等、特異な国家主義思想を児童生徒に浸透させる意図があるのではないか。
◆ ほかを切り詰めてでも。君が代”に二分を確保
二通目である、指導部の小寺・佐藤聖一・丹野哲也三課長(現在はどちらも異動)名の通知は再度、“君が代”CD強制をダメ押ししたうえで、
①国歌斉唱 二分という「計60分の卒業式実施例」を掲載。
②卒業証書授与 四〇分(呼名11四秒×四〇人X八クラス、壇上で授与11二分×クラス代表八人、担任移動二分)
③校長式辞 八分
④来賓紹介・祝電披露(名前のみ紹介) 二分
⑤送辞 三分
⑥答辞 三分
⑦校歌斉唱 二分
入学式は「証書授与」や送辞・答辞がないため「計43分の実施例」を載せている。
実質四〇秒程度の“君が代”は、副校長が教職員の起立状況を点検するためか二分もとる一方、校歌(たいてい三番くらいまである)は二分しか計上しない等、学校現場から離れて久しい役人らしい、机上の計算だ。
この通知は、「生徒表彰等は、実施しない又は簡略化して実施する」とも明記。
生徒の要望が強い、この「表彰等」を実施したある都立高校教員に取材すると、「校長が指定の計六〇分に収めるため、自分の式辞の時間を三分削るから表彰等を実施したい、と都教委にお伺いを立てていた」という。校長は完全に都教委の支配下にあるのだ。
これら通知が出ると、これまで音楽教員のピアノ伴奏を強制されていた都立高校の中には、副校長が大慌てで校内予算から“君が代”CDを購入するところも出た。
一方、同様にピアノ伴奏を強制されてきた小学校の教員に取材すると、「副校長らは慌てず”余裕”の対応だった」という。
音楽教科書の教師用指導書が全学年“君が代”CDを付けてしまっているからだ。
因みに、寡占化で二社しかない小学校音楽の教科書会社は「いずれの学年でも歌えるよう指導する」と文科省が改悪した指導要領に忠実で、巻末に一頁を使い、小1から小6まで全て“君が代”の歌詞と楽譜を掲載。「平和を願う歌です」と、誤った説明まで載せている。
◆ “君が代”第五次訴訟を提訴
都立学校の現・元教職員十五人が三月三十一日午前、“君が代”不起立への二六件の処分の取消しを求め、東京地裁に第五次訴訟を提訴した。
第一次訴訟では最高裁が一二年一月十六日、戒告処分は容認しつつ、「減給以上の処分は原則違法」とし、都教委に対し減給処分の取消しを命じる判決を出し、これを踏襲した第四次訴訟までと、小学校音楽教諭一人の減給取消し訴訟、根津公子・河原井純子両元特別支援校教諭停職取消し訴訟を含め、”10・23通達”関連で教職員側は、計七七件・六六人の処分取消しを勝ち取っている(根津さんは四件中二件勝訴)。
被処分者の会など”10・23通達”関連訴訟四団体は同日午後、都内で卒業式総括集会を開催。現・元教職員や弁護士、保護者ら約八○人が参加した。国際機関(ILO/UNESCO)は一九年、式典で明らかな混乱をもたらさない場合にまで”国歌”の起立斉唱行為のような”愛国”的行為を強制することは、個人の価値観や意見を侵害する、との勧告を出した。第五次訴訟原告団はこれを踏まえ、「東京の教育行政の異常さは国際社会にも認識されるに至っている」と明記した声明を出した。
その上で声明は、「『人権の最後の砦』である裁判所は今こそ、都教委の暴走から国民の権利・自由を守るため、問題解決に向けてその役割を果たすべき」と訴えている。
「教育公務員だからという理由で、基本的人権(思想・良心の自由)を制限されてたまるか、という思いで不起立した」と語った原告男性元教諭は、「のちに都高教組の支部長になった他校のある教員が、”10・23通達”後『うちの学校は幸い不起立者がいなくて良かった」と言っていた」(下線は筆者)というエピソードを紹介。教職員組合一部幹部の右傾化に、会場からため息も。
また、都教委(主に研修センターの課長ら)は、不起立処分の教員に課す“再発防止研修”と称する懲罰・いじめ研修で、「国歌斉唱時起立し、生徒に範を示せ」と、何度も”説諭”する。
原告の女性教諭は「教員が”国歌斉唱”時に立てば、生徒に『起立しなければいけない』という圧力になる。生徒に起立斉唱させるための圧力装置として使われることが、教員としての私の自尊心を奪うから、起立できない」と発言した。
筆者は、「自分に正直に生き、生徒にも誠実に接している原告たち」と、「上から目線の都教委や、その命令に抵抗せず従う一部組合ダラ幹(ここ十数年で元組合役員で校長になった者が数人いる)」とを頭の中で比較。当然ながら、前者の生き方に共感した。
※ 永野厚男(ながのあつお)
文科省・各教委等の行政や、衆参・地方議会の文教関係の委員会、教育裁判、保守系団体の動向などを取材。平和団体や参院議員会館集会等で講演。
月刊『紙の爆弾』2021年6月号
≪参考資料≫
「件名」から以下が、教育行政研究会の質問への都教委のメール回答の全文です。
第1段落の「感染症対策等」は、第2段落と重複しています。また第3段落は、都教委のいわば決意表明であり、「通知の内容を変えた理由は?」という質問に正対していません。
↓
件名:ご質問に対する回答(東京都教育庁)
<質問>
都教育長・藤田裕司様の2020年4月1日付通知は、コロナ禍ということで“君が代”を含む歌(歌唱)は一切なしとしていました。しかし20年12月24日付の通知は“君が代”の歌詞入りCDを、「会場全体に聞こえるように流す」よう指示しました。このように内容を変えた理由を教えて下さい。
<回答>
都教育委員会は、国内及び都内における新型コロナウイルスの感染状況や国や都の方針等を踏まえ、都立学校における感染症防止対策を講じた教育活動の在り方を決定しており、感染状況の変化や国や都の対策等の変更に応じて、教育活動の在り方も不断に見直しを図り、変更してまいりました。
今般の都立学校の卒業式・入学式においては、式典会場内で、生徒等の間隔を十分に確保することが困難であることなどが想定されることから、国歌の指導に関する学習指導要領の規定と国のマニュアル等を踏まえて策定している都教育委員会のガイドラインの双方に鑑み、「国歌の歌唱はせずCD等に録音された歌唱入りの国歌を会場全体に聞こえるように再生する」こととしたものであります。
今後とも、学習指導要領や通達に基づき、卒業式・入学式が適正に実施されるよう引き続き、各学校を指導していきます。
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