パワー・トゥ・ザ・ピープル!!アーカイブ

東京都の元「藤田先生を応援する会」有志によるブログ(2004年11月~2022年6月)のアーカイブ+αです。

★ 東京の教育現場からの報告①

2023年01月02日 | 暴走する都教委と闘う仲間たち

  《『いまこそ』から》
 ★ 新指導要領の観点別評価について

 新指導要領は、「学習評価の充実」を新たな目標として置く。「指導と評価の一体化を図る」〈観点別学習状況評価の観点〉は、

ア 知識・技能、
イ 思考・判断・表現、
ウ 主体的に学習に取り組む態度

 の3観点である。1学年からこの観点評価が始まった。

<高校から>

○山口氏(都立高校国語科教員)
 1学年担当の教員が定期テストから各生徒の観点別評価をつけるのに大変時間を要し、国語教科会の成績会議が大幅に遅れた。
 解答用紙を回答の得点とは別に、3観点の評価に割り振ってABCをつけた上で総合評価を出す。各観点の判断は深慮を要し、大変時間がかかったのだ。
 担当者はこんなことを何のためにやるのかと虚しくなり涙が出たという。
 担当者に何が一番大変かと問うと、「学習内容を進めるごとに、それに観点を無理やり結び付けなければならないこと。『国語科学指導案』の提出、研究授業が課されていること。」
 いつも生徒の行動観察をしなければならない
 ベテラン教員は、総合的に70点取れる子は観点も70だといい、今までは、「授業案」等出して授業してきたことはない。観点評価のある当該学年は持ちたくないのが本音で、現場の混乱は極まっている。

○大能氏(都立高校国語科教員)
 国語科は、今回大改訂され、各2単位の必修と「言語文化」に2分された。「現代の国語」は(論理的な文章、実用的な文章⇒思考力・判断力・表現力、話す・聞く、書く、読む)。「言語文化」は(文学的な文章〈小説、随筆、韻文、古文、漢文〉⇒書く、読む)。基本的に無理なことを現場に押し付けているのだ。
 その上で「現代の国語」で、想定外なことに小説を掲載した第1学習社の教科書が文科省の検定を通り、教科書採択数が跳ね上がったため、他社から猛反発を受ける事態となった。
 都教委は、3月この教科書採択校に、「現代国語」で小説を扱う時は、「読む」でなく、「書く」領域で指導せよと指導した。それは研修と年間学習指導案の提出をめぐる極めて高圧的なものだったという。関連して、教科書採択の変更も認める異例の決定をした。
 5月の、観点別評価の教科主任者の研修は、採択校以外でも、「各単元で使う領域は一つ」だと強調され、指導計画案に一つを選ぶ○を求めた。都教委は検定のツケを現場に負わせている。
 国語科の領域とは、「話す・聞く」「書く」「読む」の3つを指す。国語の学習が、「話す・聞く」だけ、「書く」だけ、「読む」だけで成立するとは考えにくい
 現場の定時制校では生徒の必要から実用的文章に力をいれることもある。とくに高校生では未知の事がらについて考えを書かせるのだから、いきなり討論や論述はできないのではないか。それをしようとすれば、大学生の学力低下を嘆く文科省が、ますます学力低下を招こうとしている気がする。
 国語教育の崩壊である。他の教科書や、現場の教師はあまり変わっていないのが実情である。

<公立中学校から>

○T氏(都公立中学校英語科教員)
 観点別評価については、2019年から抽出校になって練習させられてきたが、一人の生徒を複数の教員の評価では誤差が当然。私は普段の学習の様子をバックグラウンドに考えてつけている。他の教員はどうしているのだろうか。
 190人の評価は労力が大きすぎる。具体的に配当基準が現場にまかされ、言語指導だと、文法の誤り1点、誤り多は2点と細かい。

 

★質疑応答&討論

Q 授業案の指導教諭は誰か。

A高校 指導教諭は主任教諭、平教論はならない。

Q 観点評価の学校の取り組みはどうか?

A1高校 主体的学習の態度評価では、漢字はやる気があれば書けるはずだという意識で評価。しかし必ずしもそうではない。300人の生徒を何かの根拠を基準に観点をABCで評価しなければならない。3つの総合で5・4・3・2・1を出してから、最後につけている。統一基準でないと保護者の疑問には答えられない。3点評価を若い教員に圧しつけている。どう押返すか展望が見えない。

A2高校定時制 少人数なので、各評価をパソコンに複雑な式を作り入力して評価している。都教委は現場で基準を作れといっている。

A3中学 もちろん大真面目につけている。「主体的な態度」を評価するのが最も難しい。今まではノートなどでつけてきたがそれはダメだ。400人もの多人数だから。

★ 講評 安原氏
 国の教育の関わり方が、指導要領から教員がはみ出るのを「削る」対応から、国の方針を教員に「なぞらす」方向に歴史的に変化の流れ。
 価値観に関わる道徳の教科化もあり、新指導要領もその文脈にある。民間の教育導入もされ複雑化した。教員の横のつながりが階層構造にされた
 しかし、子どもの権利を保障し、教師の専門性の意識を持つ教師が多いように感じられた。子どもの権利に資するためには、教師の集団制・同僚性・協力性から活路を見出すことが出来ると思い励まされた。

(まとめ 木村)

『いまこそ(予防訴訟をひきつぐ会通信) no.27』(2022年12月10日)

 


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