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東京都の元「藤田先生を応援する会」有志によるブログ(2004年11月~2022年6月)のアーカイブ+αです。

「共謀罪」法 ケナタッチ氏のコメント(全文)

2017年06月23日 | 人権
 ★ 「共謀罪」裁決強行に国連報告者 「民主社会では認められず」
   「共謀罪」法の成立について、プライバシー権に関する国連特別報告者
   ジョセフ・ケナタッチ氏
が十五日付で寄せたコメントの全文は次の通り。 (東京新聞)

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 安倍政権が欠陥を有する共謀罪法の成立を不適切な速さで押し通す理由として正式に挙げている、「共謀罪法の成立が二〇二〇年東京五輪・パラリンピックに先立ち日本が国際組織犯罪防止条約(TOC条約)に加盟するための前提条件である」ということはないと、私以外の者から明確に指摘されているにもかかわらず、日本政府が国会での成立を強行したことには失望しておりますが、驚いてはおりません。
 ほとんどの公開された世論調査から判断するのであれば、このような日本政府の行動は、同法の必要性や、起案の適切性につき、国際社会は一言うに及ばず、とりわけ日本の市民に対して何らの説得力を持つものではありません。
 日本政府は恐怖の心理、テロに対する市民の恐れを利用して、そもそもテロ対策のために制定されたものではない国際条約に加盟するために必要である、というロ実のもとで成立を押し通したものです。
 それはすなわち、より高い行動規範を示すべき政府による疑わしき行動の裏にある真の目的に対して合理的な疑問を呈する、公及び専門家の意見の知性及び能力を著しく軽んずるものです。
 欠陥を有し危険な可能性を持ち合わせた法案を国会で性急に押し通すという行為はまた、私が各国政府に対して、乱用され国内市民のより厳しい監視及び管理につながる一方で、目に見える形での安全強化につながらないプライバシー侵害的な法律を押し通すために市民の恐怖に付け入ってはならないと呼び掛けた、二〇一七年三月七日付人権理事会宛て報告に直接反するものです。
 日本政府は、われわれが既に知っていたことを裏付けたにすぎません。すなわち、世論調査からは、日本市民の多数の意向に反し、信任を得ていないにもかかわらず、法案を国会で押し通すための多数を有し、これをもって法案を押し通したということです。
 とりわけ私は、政府が参議院において法案がきちんと議論されることを認めないような行動に出たということに失望しています。これは、重要な法案を検討し、導入するのに適切な方法とはおよそ言うことができません。
 政府が反対派の妨害戦略と捉えていると思われる行動にいら立ちを覚えることは理解できますが、法案を押し通すためにこのような強硬手段に出ることは、真に民主的な社会においては認められるものではありません。このような行動は、本当に声に耳を傾ける用意のある政府の行動ではありません。
 加えて言うならば、このような政府の行動及び、参議院において法案に関するきちんとした議論を認めることを拒否したことは、政府がプライバシーの実効的な保護措置を導入することも、既存の保護措置の強化を図ることもなく、あくまで欠陥のある法の成立にこだわる理由を根拠づける実質を備えた言い分がないことも示しています。
 現時点では、政府の言い分が存在しないのか、存在しても説得的なものではないので、なぜ政府がこのような行動に出ることを選択したのか、不思議に思わざるを得ません。
 仮に法案の実質を修正して私が求めた保護捲置を導入することにしたら、政府が弱く見えてしまうことを恐れたからなのでしょうか?
 しかし成立を強行することで政府は自分を強く見せられるかもしれませんが、賢明であるとも成熟しているとも映りません
 政府が反対論を強引に押しつぶして、友好的かつ建設的な批判を無視し、世論及びあらゆる法的論理に逆行し、プライバシー権・表現の自由・結社の自由を保護する義務を怠るというのは良い兆候であるとは言えません。
 日本政府は今日に至るまで、私の懸念に対して、公にも内々にも、満足な回答どころかいかなる回答をもしていません
 従いまして、私は現在も日本がプライバシー権に対する保護措置を改善しなければいけないと言い続けます。それは、この疑義ある法が成立した今、なおさらそのように考えます。
 私の立場は今もなお、間違いが犯されており正される必要があると指摘しなければいけない「批判的な友人」のものです。
 このため、私は日本を訪問し、さまざまな方法でプライバシー関連法や許可・監督の仕組みを強化する選択肢を模索するためにお招きいただくよう、最大限友好的な表現で再度日本政府に呼び掛けています。招かれることがあれば、進んで積極的にお手伝いします。
 それまでの間、私は日本の市民社会及び人権弁護士と密に協同し、プライバシー権及び関連する人権を守るために、どの保護措置を日本法に導入すべきであり、どのような新しい運用上の仕組みを導入すべきかにつき、公平かつバランスのとれた議論を行っていきます。
 全ての日本市民は、たとえ本日「共謀罪」法が成立していなかったとしても、この活動が必要になっていたことを忘れてはなりません。
 むしろ良い面に着目しましょう。市民社会、法実務家、客観的な研究者その他の利害関係者とともに、国会から離れて、そして今だけ、とりわけ国会内の熱が少し冷めるまでの間だけでも政治家から離れてこれらの重要な問題について議論する機会をつくりましょう。こうすることで、本当に問題になっている点について実質的な議論ができるようになります。
 そうすれば、誰が政権をとっていようと、誰が首相であるかを問わず、政府・首相が道理に耳を傾ける用意が整ったときに、われわれの客観的な議論の結果を示しましょう。
 これは、通常の法改正のみならず、仮に改憲について議論が再度なされるようになったときにも役立つはずです。
 道は長いものですが、私はこの長い道を全ての日本市民とともに進んで歩んでいくつもりであり、道中新たな友を多くつくることを期待しております。
『東京新聞』(2017年6月22日)

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