《沖縄だより(週刊新社会)》
◆ 観光客激減でもろさを露呈
「復帰」後、沖縄開発庁が策定した「沖縄振興開発計画」は本土との経済格差を埋めるための施策が中心だった。
様々な開発で自然の海岸線は失われ、土地改良事業によってサンゴ礁が死に至った。
農業や水産業の代わりに観光産業が著しく成長を遂げた。
復帰(72年)時点で年間入域観光客数400万人余が、19年度で1000万に。さらに、県は「3年内1200万人」を目標に掲げた。
2018年度、沖縄に寄港したクルーズ船は528回。
港別では那覇港243回、平良港143回、石垣港107回、中城港28回。全国の港と比べても、一位の博多港に那覇港が二位で続く。
那覇の国際通りは、連日のように寄港するクルーズ船によって外国人観光客の波で溢れた。石垣、宮古島では、住民が買い物ができないと悲鳴を上げた。
これが、一変したのは新型コロナウイルスの発生後だ。日本だけでなく、今や世界に共通する「不況」という現象で現れた。
沖縄の実態を報告する。
沖縄に入港していたクルーズ船は、今どうなっているか。
那覇港管理組合によると、1月以降、3月9日までキャンセルのクルーズ船はおよそ51隻。一方、乗客ゼロのクルーズ船2隻(イタリア)も那覇港に入港した。
「乗客を乗せた航行は取り止めたが、コンテナ物資を那覇港で積む予定があったため」(『日本経済新聞』)というのがその理由。
クルーズ船の入港が無くなった今、国際通りは人影もまばら。
沖縄コンベンションビューローは、新型コロナウイルスの沖縄観光への影響について、「クルーズ船の寄港中止や航空路線の減便で、前年の3月~5月と比較して観光消費額は1000億円、入域客は150万人がそれぞれ減少する」と試算した(『琉球新報』)。
影響は多方面にわたるが、ホテル業界は客室稼働率が30%台に低迷。また、貸し切りバス会社や旅行代理店で、社員を自宅待機させたり、休業に追い込まれた事業所もある。
近年増え続けた観光客を目当てに事業を拡張した業者ほど、ダメージは大きいとみられる。
一見、観光特需に見えたかの沖縄の観光産業は、厳しい局面に立たされている。
県は、増加する観光客にホテルが足りないとホテル建設を奨励した。
浮足だった観光行政に対する責任は大きい。
本土との格差是正を目指してきた沖縄経済の実態だ。
観光の目玉・首里城の再建に力を注ぐよりも、生活の糧になる地域産業の育成こそが重要だ。
『週刊新社会』(2020年3月24日)
◆ 観光客激減でもろさを露呈
安里英子(あさと・えいこ フリー・ライター)
「復帰」後、沖縄開発庁が策定した「沖縄振興開発計画」は本土との経済格差を埋めるための施策が中心だった。
様々な開発で自然の海岸線は失われ、土地改良事業によってサンゴ礁が死に至った。
農業や水産業の代わりに観光産業が著しく成長を遂げた。
復帰(72年)時点で年間入域観光客数400万人余が、19年度で1000万に。さらに、県は「3年内1200万人」を目標に掲げた。
2018年度、沖縄に寄港したクルーズ船は528回。
港別では那覇港243回、平良港143回、石垣港107回、中城港28回。全国の港と比べても、一位の博多港に那覇港が二位で続く。
那覇の国際通りは、連日のように寄港するクルーズ船によって外国人観光客の波で溢れた。石垣、宮古島では、住民が買い物ができないと悲鳴を上げた。
これが、一変したのは新型コロナウイルスの発生後だ。日本だけでなく、今や世界に共通する「不況」という現象で現れた。
沖縄の実態を報告する。
沖縄に入港していたクルーズ船は、今どうなっているか。
那覇港管理組合によると、1月以降、3月9日までキャンセルのクルーズ船はおよそ51隻。一方、乗客ゼロのクルーズ船2隻(イタリア)も那覇港に入港した。
「乗客を乗せた航行は取り止めたが、コンテナ物資を那覇港で積む予定があったため」(『日本経済新聞』)というのがその理由。
クルーズ船の入港が無くなった今、国際通りは人影もまばら。
沖縄コンベンションビューローは、新型コロナウイルスの沖縄観光への影響について、「クルーズ船の寄港中止や航空路線の減便で、前年の3月~5月と比較して観光消費額は1000億円、入域客は150万人がそれぞれ減少する」と試算した(『琉球新報』)。
影響は多方面にわたるが、ホテル業界は客室稼働率が30%台に低迷。また、貸し切りバス会社や旅行代理店で、社員を自宅待機させたり、休業に追い込まれた事業所もある。
近年増え続けた観光客を目当てに事業を拡張した業者ほど、ダメージは大きいとみられる。
一見、観光特需に見えたかの沖縄の観光産業は、厳しい局面に立たされている。
県は、増加する観光客にホテルが足りないとホテル建設を奨励した。
浮足だった観光行政に対する責任は大きい。
本土との格差是正を目指してきた沖縄経済の実態だ。
観光の目玉・首里城の再建に力を注ぐよりも、生活の糧になる地域産業の育成こそが重要だ。
『週刊新社会』(2020年3月24日)
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