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東京都の元「藤田先生を応援する会」有志によるブログ(2004年11月~2022年6月)のアーカイブ+αです。

誰も感動しない安倍晋三首相の記者会見の言葉

2020年04月29日 | 平和憲法
  =時代を読む(東京新聞)=
 ◆ 二人の政治家の違い
浜 矩子(同志社大教授)

 新型コロナウイルス対策への国々の取り組みを、どう見るか。このテーマで本紙から取材を頂戴した。その中で、ドイツのメルケル首相と安倍晋三首相の違いが話題になった。
 メルケル首相が国民に危機対応への協力を訴えかけると、その言葉の一つ一つが感動を呼ぶ。そして、落ち気味になっていた支持率が急伸する
 安倍首相が記者会見すると、言っていることがほぼ同じでも、国民は一向に感動しない支持率はむしろ下がる
 違いはどこから来ると思うか。この点について、質問を頂戴した。いい質問だ。

 この違いは、とても大切なことをわれわれに示してくれていると思う。
 重要なのは、何を言うかではない。誰が言うかだ。そして、どのように言うかである。

 二人の発言内容が似通っていたのは、安倍首相がメルケル演説を「あれが受ける」と「参考にした」からかもしれない。要はパクリだった可能性がある。二番煎じだ。これはいけない。だが、証拠はないから、仮にそうではなかったとしよう。
 あるいは、そもそも、多くの人々が二つの演説の類似性について知らなかったとしよう。
 それでも、安倍氏の発言が、メルケル発言のような感動を呼んだとは、とうてい思われない。なぜなら、安倍氏はメルケル氏ではないからだ。
 メルケル氏は、メルケル氏だから、その発言に人々が感銘を受けるのである。この人が言うなら本当なのだろう。この人が言うことだったら、協力しよう。ついて行こう。ついて行って大丈夫だ。人々がこのように思う人の発言には、重みがある。説得力がある。心に染み入るものがある。
 そして、人々がそのように思う人には、そのように思える語り口がある。つくられた語り口ではない。真摯(しんし)な語り口。信念に基づく語りロ。魂のこもった語り口。これが入々を引き寄せる。
 このような語り口をもたらすものは何か。それは共感力だ。共感力とは、他者の痛みがわかる感受性と想像力だ。もらい泣きできる心である。他者のために涙する目。そのような目を持つ人の口は、真摯に語る。魂を込めて語る。そのような人のロから出た言葉だから、人々はそれを信頼する。それについて行く。
 近頃、「強いリーダーシップ」を求める声が日本のあちこちで上がるようになっている。このことについても、質問を受けた。これは実に注意を要する問題だ。
 強いとはどういうことか。リーダーシップとは何か。これらのことについてしっかり頭を整理しないまま、強いリーダーシップを待望することはとても危険だ。
 それに乗じて、強権発動への扉をこじ開けようとする輩(やから)が出て来る。それが,「民意」だからというので、人権侵害を正当づける論法がしゃしゃり出て来る。
 本当に強い人とはどういう人か。
 その人は賢い人だ。その人は優しい人だ。その人は、自分のための点数稼ぎに走らない。その人は他者のために心血を注ぐ。その人は、他者のために涙する目魂を語るロを持つ人だ。
 涙する目と魂を語る口を持つ人が発揮するのが、強いリーダーシップだ。
 その人が発揮する強いリーダーシップなら、待望しても大丈夫である。

 以上の全てのことと完壁に無縁なのが、安倍首相だ。だから、彼の言葉には誰も感動しない。
『東京新聞』(2020・4・26)

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