パワー・トゥ・ザ・ピープル!!アーカイブ

東京都の元「藤田先生を応援する会」有志によるブログ(2004年11月~2022年6月)のアーカイブ+αです。

☆ 治安維持法を、大学の教職課程で取り上げる

2023年01月11日 | 平和憲法

松本さん作の「レコードコンサート」。特高警察に「共産主義を広めている」とされ、逮捕された(提供:松本さん)

  《子どもと学ぶ歴史教科書の会会報「つどいの樹」【大学のキャンパス】から》
 ☆ 絵を描いただけで「思想犯」に

山本政俊(札幌学院大学教授)

 ☆ 学習指導要領から「批判力」が消えた

 「社会生活の諸問題を正しく判断する能力を育て、健全な批判力をもってこれらに対処しようとする態度を養う」(高校学習指導要領『社会科』目標・1970年版)というように、かつて学習指導要領には「批判力」と言う文言がありました。
 ところが78年版以降「批判力」という言葉が消えました。
 「人間」と言う言葉が挿入され、「社会と人間に関する基本的な問題についての理解を深め」「現代社会に対する判断力の基礎と人間の生き方について自ら考える力を養う」「進んで国家・社会の進展に寄与しようとする態度を育てる」に変えられてしまったのです。
 授業を通して、社会の矛盾や問題をどう解決するかというアプローチではなく、社会にどう適応するか。人間としての「生き方あり方」の教育が要請され、心がけで何とかしようとする教育が跋扈することになりました。
 ですから、時の政治や権力に立ち向かい、抗ってきた人々の歴史を意識的に学ぶ必要があります。権利は歴史の中の闘いで勝ち得てきたものであると。

 ☆ 自由な言論・表現を奪った治安維持法

 「10万1654人」と板書して問います。「これは何の数字でしょうか」
 「1925年から1925年から1945年までの20年間で、ある法律で検挙された人数です。何の法律でしょうか」。なかなか学生からは返答がありません。
 国体=天皇制を変革し、私有財産制度を否認する団体の結成や行動を取り締まることを目的として1925年に成立した治安維持法は、「改正」を重ね、最高刑は懲役10年から死刑へ。「結社の目的遂行の為にする行為」一切を禁止する「目的遂行罪」も加わり、自由主義的な研究・言論や、宗教団体の教義・信条さえも「目的遂行」につながるとされて、国民全体が弾圧対象になり、令状なしの捜索や取り調べ中の拷問・虐待が日常的に横行するようになりました。

 1941年1月から1942年2月にかけて、道内の教員、学生が治安維持法違反容疑で逮捕されました(北海道生活図画事件)。18人が起訴され、3人が懲役6か月の実刑判決、15人が執行猶予つき有罪判決を受けました。
 当時旭川師範学校(今の北海道教育大学旭川校)に学び、美術部の学生として絵を描いていた松本五郎さんは、法に触れることは何もしていないのに、突然検挙され、冬マイナス30度になるコンクリートの独房に1年3か月も入れられたのです。松本さんが特高警察に没収された絵の中に『レコードコンサート』があります(参照)

 この絵のどこがいけないかを考え発表します。
 「何が悪いのか何もわからないのです」この言葉に学生は衝撃を受け、恐ろしさを実感するのでした。

 「何も悪いことをしてなくても逮捕される可能性がある状態、つまりだれもが容疑者にされるような治安維持法。ただ音楽を聞いたり、映画を見ていたり、絵を描いていたり、勉強していたり、YouTubeなどをみていたり、何をしていても曖昧な理由で逮捕され,かねないなんて。そんな時代にならないためにも、過去の出来事としっかり向き合い、私たちの自由が奪われないように一人一人が積極的に政治に参加し、いいものはいい、だめなものはだめと発言していき、過去の悲劇を繰り返さないように努力したい」とはある学生の意見です。

 ☆ 山本宣治の人物調べ

 学び舎は「山本宣治の人物調べ」を取り上げています。彼のことを知らない学生もいました。教科書を読ませ、学生自身にインターネットで人物調べを体験してもらいました。
 ある学生の感想です。

「私はこの人のことは、講義を受ける前は、知りませんでした。しかし私は、今日この人にとても心を惹かれました。その理由は、勇気を出して治安維持法に反対したことです。結果的に殺されてはしまいましたが、殺されるのは承知の上で私は反対の立場に立ったのだと思います。山本宣治はもっともっと日本で称えられるべき人間であり、中学や高校の教科書で大きく取り上げてもいいのではないかと思いました。山本宣治の墓碑の背面に書かれている「山宣孤塁を守る!だが私は寂しくない、背後には多くの大衆が支持しているから」という言葉は私にとても勇気をくれました」。

『子どもと学ぶ歴史教科書の会会報「つどいの樹」 第10号』(2022年12月1日)


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