東京七生養護学校への性教育バッシングと教職員への処分に対して東京弁護士会が都教委に人権侵害を「警告」(抜粋)
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2005年1月24日
東京都教育委員会
教育長 横 山 洋 吉 殿
東京弁護士会
会長 岩 井 重 -
警 告 書
1 東京都教育委員会(以下「教育委員会」ともいう。)は、2003年9月11日東京都立七生養護学校(以下「七生養護学校」という。)の教員に対して行った厳重注意は、「不適切な性教育」を理由にするものであって、このことは子どもの学習権およびこれを保障するための教師の教育の自由を侵害した重大な違法があるので、これらを撤回せよ。
2 教育委員会は、同委員会に保管されている七生養護学校から提出された性教育に関する教材一式を、従来保管されていた七生養護学校の保管場所へ返還し、同校における性教育の内容および方法について、2003年7月3日以前の状態への原状回復をせよ。
3 教育委員会は、養護学校における性教育が、養護学校の教職員と保護者の意見に基づきなされるべき教育であることの本質に鑑み、不当な介入をしてはならない。
警告の理由
第1 子どもの人権救済申立の内容
当会が受理した2004年1月7日付申立人山田洋次、小山内美江子、斉藤貴男、川田悦子、堀尾輝久、蔦森樹、朴慶南ほか総数8125名にかかる「子どもの人権救済申立」の内容は、以下のとおりである。
1 事案の概要
七生養護学校においては、同校における知的障害を有する子どもたちへの性教育の内容、方法について、10年以上前から、学校内に研究会を設けて教職員が調査、研究を重ね、保護者の意見も聴取しながら、カリキュラム、教材の開発を行ってきた。
同校の性教育の実践については、外部にも報告され、評価を受けてきた。
2003年7月2日、東京都議会において、小中学校、養護学校における性教育についての質疑が行われた。7月4日、教育委員会と、東京都議会議員(以下「都議」ともいう。)3名、日野市議会議員2名が七生養護学校を訪問し、性教育の内容、方法について、校長、教頭らから事情を聞いたうえ、同校の保健室に保管されている教材を提出させ、調査した。この際、同行した新聞記者が同校内に立ち入り、これらの教材を並べて写真撮影し、翌日の新聞に記事として掲載している。
教育委員会は、これらの教材を同校校長から提出させて、委員会にて保管している。
また教育委員会は、7月9日、同校の教職員全員からの事情聴取を実施した後、「都立盲・ろう・養護学校経営調査委員会」を発足させて、不適切な性教育が行われていたこと、学級編成、服務規程違反の実態があることの報告を受けた。同年9月4日、教育委員会の指導にしたがい、性教育全体計画が作成され、保護者への説明がなされた。9月11日、教育委員会ほ不適切な性教育や服務規程違反などの理由により、七生養護学校の教職員を含む学校管理職37名、同教員等65名、教育庁関係者に対し、停職、降格、減給、戒告、文書訓告、厳重注意などの処分を行った。
教育委員会は、七生養護学校において行われてきた性教育の意義、必要性、効果などについて、現場の教員や保護者の意見を十分に尊重することなく、これを不適切として、同校教職員や保護者によって、開発されてきた教材の使用ができないようにし、性教育の内容を大きく変更することを処分をもって強要した。
これらの事実は、知的障害を持つ子どもたちに、性についての正しい知識を獲得し、心と体の大切さを学ばせたいとする教員および保護者の教育権を著しく侵害し、これらの教育を受ける子どもの権利を侵害したものである。
2 申立の趣旨
申立人が求めた申立の趣旨は、以下のとおりである。
1)人権侵害の事実
東京都立七生養護学校において、隣接する都立入所施設七生福祉園や通学生の保護者と話し合いを重ね、何年間も試行錯誤しながら進められてきた性教育「こころとからだの学習」について、東京都教育委員会は、
(1)十分な調査をすることなく一方的に不適切等と非難し、
(2)教材を没収し、教材の使用を禁止して授業をできない状態にさせ、
(3)不必要かつ執拗な事情聴取等を行うなどの事実上の圧力を加えて教師らを萎縮させ、指導を困難にし、
(4)校長職にあった教員を降格にするなど不当な処分を行い、また、このことによって事実上当該教育を継続できないようにし、
(5)報道機関の適正を欠く取材を許し、また事実に反する報道を放置し、正当な批判・抗議をしない不作為により、生徒の教育を受ける権利及び名誉、保護者の子どもに対して教育を行う権利及び名誉、教師の教育の自由及び名誉を侵害した。
2)以上の人権侵害に対して、東京都教育変異会に対して
(1)①没収物について早急に返還をすること
②教材くからだうた等無形の教材も含む)の使用禁止の処置を早急に止めること
③元校長ら職員に対する不当な処分を撤回すること
④報道機関の真実に反する報道に対して是正を求めることの勧告を求める。
(2)①教師らに対する不要な事情聴取等による圧力を加えることのないこと
②報道機関に対する偏ぱな対応をしないことの警告を求める。
第2 調査の経緯及び内容
2004年1月 7日
人権救済申立を受理後、子どもの人権救済センター第3部会が配点を受け、両性の平等に関する委員会及び高齢者・障啓者の権利に関する委員会委員の参加を得て、調査部会を組織する。
2004年3月19日
申立人代理人からの事情聴取
申立に至る経緯、申立の趣旨の補足説明等を聴取した。
申立人が不当と主張する処分について、都数委は「不適切な性教育」と「服務規程違反」を理由としているが、部会としては、申立人が「不適切な性教育」が処分の理由とされたことを問題としていることを確認した。したがって、部会の今後の調査についてはこの点に限定して行うものとし、「服務規程違反」の有無、当否等については、調査を行わないこととした。
2004年4月19日,同月30日
申立人保護者、子ども及び申立人教職員からの事情聴取
申立人保護者及び子どもからは、七生養護学校で行われていた性教育授業の模様、保護者及び生徒の同授業に対する評価を聴取した。
申立人教職員からは、自ら或いは他の教職員が実践していた七生養護学校における性教育の内容、同校の取り組み姿勢、保護者の性教育に対する考え方の確認方法、対外的な評価、今回の処分等についての経緯等について聴取した。
2004年5月Ⅰ2日
東京都教育委員会からの事情聴取等
七生養護学校の教職員らに対する処分等の根拠、2003年7月の同委員全委員及び都議の同校訪問の経緯及び訪問時の状況等につき聴取したが、前者については「都立盲・ろう・養護学校経営調査委員会報告について」「都立首・ろう・養護学校の不正問題に対する懲戒処分等について」等に記載のとおりであると繰り返すばかりであり、性教育を不適切と判断した根拠について十分な回答を得られなかった。後者については、都議の調査権に基づくとし、都教委として独自の立場に基づくか否かは明確ではなかった。
2004年5月18日
七生養護学校における同校現副校長、事務室長及び教職員らからの事情聴取
副校長及び事務室長からは、従前の同校の性教育実践の内容及び学校側の方針、2003年7月の都議及び教育委員会の来校時の状況等について聴取を試みたが、詳細は東京都教育委員会から聞いて欲しい、それが正しいとの返答であり、実質的な回答をまほとんど得られなかった。
教職員らからは、今回の処分等以前に受けた調査の内容、都議来校以後の同校での性教育実施の制約状況等について聴取した。
2004年5月29日
東京都教育委員会への書面による再質問
前記のとおり、東京都教育委員会及び七生擁護学校から実質的な回答が得られなかった事項が相当あったことから、書面により、2003年7月の七生養護学校への訪問の経緯、訪問時の状況、性教育ないしその教材について不達切と判断した根拠等について再度質問した。
2004年6月4日
上記質問に対する東京都教育委員会からの回答
現在七生養護学校に関して訴訟が提起され、係争中であるため、回答を差し控えるとの回答であった。
2004年8月6日
束京都議会議員らへの面会申し入れ及び書面による質問
同月20日に都議らの代理人弁護士より連絡があり、面会に応じるか等検討するとの回答を得た。
2004年10月19日
上記に対する回答
事情聴取に応じることはできないとの回答であった。その理由として、第1に七生養護学校の視察は都政及び市政調査権を行使するため議員として活動する権能と義務があるが、その範囲内での行為であること、第2に本件では既に申立人らが東京都教育委員会に対して提訴していると聞いており、個別の回答は適当でないとのことであった。
策3 認定した事実 (略)
第4 七生養護学校の性教育について (略)
(続)
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2005年1月24日
東京都教育委員会
教育長 横 山 洋 吉 殿
東京弁護士会
会長 岩 井 重 -
警 告 書
1 東京都教育委員会(以下「教育委員会」ともいう。)は、2003年9月11日東京都立七生養護学校(以下「七生養護学校」という。)の教員に対して行った厳重注意は、「不適切な性教育」を理由にするものであって、このことは子どもの学習権およびこれを保障するための教師の教育の自由を侵害した重大な違法があるので、これらを撤回せよ。
2 教育委員会は、同委員会に保管されている七生養護学校から提出された性教育に関する教材一式を、従来保管されていた七生養護学校の保管場所へ返還し、同校における性教育の内容および方法について、2003年7月3日以前の状態への原状回復をせよ。
3 教育委員会は、養護学校における性教育が、養護学校の教職員と保護者の意見に基づきなされるべき教育であることの本質に鑑み、不当な介入をしてはならない。
警告の理由
第1 子どもの人権救済申立の内容
当会が受理した2004年1月7日付申立人山田洋次、小山内美江子、斉藤貴男、川田悦子、堀尾輝久、蔦森樹、朴慶南ほか総数8125名にかかる「子どもの人権救済申立」の内容は、以下のとおりである。
1 事案の概要
七生養護学校においては、同校における知的障害を有する子どもたちへの性教育の内容、方法について、10年以上前から、学校内に研究会を設けて教職員が調査、研究を重ね、保護者の意見も聴取しながら、カリキュラム、教材の開発を行ってきた。
同校の性教育の実践については、外部にも報告され、評価を受けてきた。
2003年7月2日、東京都議会において、小中学校、養護学校における性教育についての質疑が行われた。7月4日、教育委員会と、東京都議会議員(以下「都議」ともいう。)3名、日野市議会議員2名が七生養護学校を訪問し、性教育の内容、方法について、校長、教頭らから事情を聞いたうえ、同校の保健室に保管されている教材を提出させ、調査した。この際、同行した新聞記者が同校内に立ち入り、これらの教材を並べて写真撮影し、翌日の新聞に記事として掲載している。
教育委員会は、これらの教材を同校校長から提出させて、委員会にて保管している。
また教育委員会は、7月9日、同校の教職員全員からの事情聴取を実施した後、「都立盲・ろう・養護学校経営調査委員会」を発足させて、不適切な性教育が行われていたこと、学級編成、服務規程違反の実態があることの報告を受けた。同年9月4日、教育委員会の指導にしたがい、性教育全体計画が作成され、保護者への説明がなされた。9月11日、教育委員会ほ不適切な性教育や服務規程違反などの理由により、七生養護学校の教職員を含む学校管理職37名、同教員等65名、教育庁関係者に対し、停職、降格、減給、戒告、文書訓告、厳重注意などの処分を行った。
教育委員会は、七生養護学校において行われてきた性教育の意義、必要性、効果などについて、現場の教員や保護者の意見を十分に尊重することなく、これを不適切として、同校教職員や保護者によって、開発されてきた教材の使用ができないようにし、性教育の内容を大きく変更することを処分をもって強要した。
これらの事実は、知的障害を持つ子どもたちに、性についての正しい知識を獲得し、心と体の大切さを学ばせたいとする教員および保護者の教育権を著しく侵害し、これらの教育を受ける子どもの権利を侵害したものである。
2 申立の趣旨
申立人が求めた申立の趣旨は、以下のとおりである。
1)人権侵害の事実
東京都立七生養護学校において、隣接する都立入所施設七生福祉園や通学生の保護者と話し合いを重ね、何年間も試行錯誤しながら進められてきた性教育「こころとからだの学習」について、東京都教育委員会は、
(1)十分な調査をすることなく一方的に不適切等と非難し、
(2)教材を没収し、教材の使用を禁止して授業をできない状態にさせ、
(3)不必要かつ執拗な事情聴取等を行うなどの事実上の圧力を加えて教師らを萎縮させ、指導を困難にし、
(4)校長職にあった教員を降格にするなど不当な処分を行い、また、このことによって事実上当該教育を継続できないようにし、
(5)報道機関の適正を欠く取材を許し、また事実に反する報道を放置し、正当な批判・抗議をしない不作為により、生徒の教育を受ける権利及び名誉、保護者の子どもに対して教育を行う権利及び名誉、教師の教育の自由及び名誉を侵害した。
2)以上の人権侵害に対して、東京都教育変異会に対して
(1)①没収物について早急に返還をすること
②教材くからだうた等無形の教材も含む)の使用禁止の処置を早急に止めること
③元校長ら職員に対する不当な処分を撤回すること
④報道機関の真実に反する報道に対して是正を求めることの勧告を求める。
(2)①教師らに対する不要な事情聴取等による圧力を加えることのないこと
②報道機関に対する偏ぱな対応をしないことの警告を求める。
第2 調査の経緯及び内容
2004年1月 7日
人権救済申立を受理後、子どもの人権救済センター第3部会が配点を受け、両性の平等に関する委員会及び高齢者・障啓者の権利に関する委員会委員の参加を得て、調査部会を組織する。
2004年3月19日
申立人代理人からの事情聴取
申立に至る経緯、申立の趣旨の補足説明等を聴取した。
申立人が不当と主張する処分について、都数委は「不適切な性教育」と「服務規程違反」を理由としているが、部会としては、申立人が「不適切な性教育」が処分の理由とされたことを問題としていることを確認した。したがって、部会の今後の調査についてはこの点に限定して行うものとし、「服務規程違反」の有無、当否等については、調査を行わないこととした。
2004年4月19日,同月30日
申立人保護者、子ども及び申立人教職員からの事情聴取
申立人保護者及び子どもからは、七生養護学校で行われていた性教育授業の模様、保護者及び生徒の同授業に対する評価を聴取した。
申立人教職員からは、自ら或いは他の教職員が実践していた七生養護学校における性教育の内容、同校の取り組み姿勢、保護者の性教育に対する考え方の確認方法、対外的な評価、今回の処分等についての経緯等について聴取した。
2004年5月Ⅰ2日
東京都教育委員会からの事情聴取等
七生養護学校の教職員らに対する処分等の根拠、2003年7月の同委員全委員及び都議の同校訪問の経緯及び訪問時の状況等につき聴取したが、前者については「都立盲・ろう・養護学校経営調査委員会報告について」「都立首・ろう・養護学校の不正問題に対する懲戒処分等について」等に記載のとおりであると繰り返すばかりであり、性教育を不適切と判断した根拠について十分な回答を得られなかった。後者については、都議の調査権に基づくとし、都教委として独自の立場に基づくか否かは明確ではなかった。
2004年5月18日
七生養護学校における同校現副校長、事務室長及び教職員らからの事情聴取
副校長及び事務室長からは、従前の同校の性教育実践の内容及び学校側の方針、2003年7月の都議及び教育委員会の来校時の状況等について聴取を試みたが、詳細は東京都教育委員会から聞いて欲しい、それが正しいとの返答であり、実質的な回答をまほとんど得られなかった。
教職員らからは、今回の処分等以前に受けた調査の内容、都議来校以後の同校での性教育実施の制約状況等について聴取した。
2004年5月29日
東京都教育委員会への書面による再質問
前記のとおり、東京都教育委員会及び七生擁護学校から実質的な回答が得られなかった事項が相当あったことから、書面により、2003年7月の七生養護学校への訪問の経緯、訪問時の状況、性教育ないしその教材について不達切と判断した根拠等について再度質問した。
2004年6月4日
上記質問に対する東京都教育委員会からの回答
現在七生養護学校に関して訴訟が提起され、係争中であるため、回答を差し控えるとの回答であった。
2004年8月6日
束京都議会議員らへの面会申し入れ及び書面による質問
同月20日に都議らの代理人弁護士より連絡があり、面会に応じるか等検討するとの回答を得た。
2004年10月19日
上記に対する回答
事情聴取に応じることはできないとの回答であった。その理由として、第1に七生養護学校の視察は都政及び市政調査権を行使するため議員として活動する権能と義務があるが、その範囲内での行為であること、第2に本件では既に申立人らが東京都教育委員会に対して提訴していると聞いており、個別の回答は適当でないとのことであった。
策3 認定した事実 (略)
第4 七生養護学校の性教育について (略)
(続)
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