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東京都の元「藤田先生を応援する会」有志によるブログ(2004年11月~2022年6月)のアーカイブ+αです。

★ 出版労連の人権理事会第五六期への教科書採択に関する特別報告

2024年09月26日 | 人権

  《国際人権活動ニュースから》
 ★ 「教育機関における学問の自由と表現の自由」

吉田典裕(幹事/出版労連)

 2024年6月18日から7月12日にかけて、国連人権理事会第五六会期がジュネーブで開催されました。この会期に、ファリダ・シャヒード特別報告者による特別報告「教育機関における学問の自由と表現の自由」が提出されました。本稿執筆時点で公表されているのは「先行未編集版」で、まだ確定版ではありませんが、趣旨が変わることはないと思われます。

 ★ 特別報告への投稿の呼びかけに応える

 特別報告をまとめるに先立って、特別報告者は10の問いを立てた「投稿の呼びかけ」を発表しました。
 これに応えて、出版労連教科書対策部東京・教育の自由裁判をすすめる会国連に障がい児の権利を訴える会、そして「日の丸・君が代」ILOユネスコ勧告実施市民会議(CCIU)の四団体がレポートを提出しました。
 以下に筆者が属する出版労連のレポートを紹介します。

 「呼びかけ」は「一般的枠組み」「教育機関の自治」「〔教育機関の〕財源」「〔教育機関に対する〕監視」「教育における表現・書籍へのアクセスの自由」の5つの見出しが設けられ、それらのもとに全部で10の特別報告者が聞きたい問いが設けられています。
 そのうち問9では教員は教育において表現の自由を享受しているか問10では教科書などの教材を自由に選択できるのか否か説明してほしい、という趣旨の内容が述べられています。まさに日本の教科書検定や採択にかかわる問いです。
 そこで、この2問についてレポートを送りました。

 ★ 出版労連の報告内容

 問9については、

①日本の初等・中等教育の内容は学習指導要領による「法的拘束」を受けていること、
学習指導要領の内容は特に社会科において政治的に中立でないこと、そのうえ教員は文科省による検定に合格した教科書を使用する義務が法定されているなど、教員は学問の自由・表現の自由を享受できていないこと、
③教育機関における学問の自由は学習指導要領と検定教科書の使用義務による二重の制約を受けていること、
④教科書検定の仕組み自体が中立ではないことを「従軍慰安婦」の例で紹介し、教員は必ずしも政治的に中立ではない「政府の統一的な見解」を教えることになり、学問の自由・表現の自由を享受できていないこと、
⑤歴史教科書の問題は2022年の自由権委員会の日本政府に対する総括所見でも述べられていること、

 を報告しました。

 問10では(問9からのパラグラフの通し番号で)

⑥義務教育教科書では、教員は自分で教科書を選ぶことができないこと、
国立・私立の学校では学校ごとに採択が行われていること、
学習参考書などについては教員が使用を決定することができるが、その場合でも事前に校長や教育委員会の承認が必要な場合があり、その選択には制約を受けていること、

 を紹介しました。

 ★ 特別報告で教科書検定・採択のあり方に言及

 特別報告のパラグラフ36には、出版労連の投稿内容に対応するような次の記述があります(筆者訳)。やや長くなりますが引用します。

「(a)〔学習指導要領のような〕公的基準は、教材の内容を規定することなく教育の目標と成果を決定するべきである
 (b)教科書の執筆に関するガイドラインは、著者が多様な立場を包含するさまざまな解釈を提供できるように作成されるべきである。
 (c)さまざまな出版社による幅広い教科書が認定され、教師はこれらから選択することを許されるべきであり、また教師は〔教育担当〕省の事前の承認なしに補足資料を導入できること」

 各国政府への勧告を述べたパラグラフ84(f)

(ⅲ)には「教員または教員組合の参加を得て、さまざまな出版社による幅広い教科書を認定し、教師がこれらから選択できるようにすること」、
(ⅳ)には「承認および認定の手続き、および特定のイデオロギー的および政治的要件ではなく、専門知識に基づく教科書選択の基準を明確にすること」、

 つまりつまり教科書の認定(検定)にも採択にも教員や教員組合の参加を確保し、また教員参加と専門知識に基づく教科書採択を確保することなどを勧告しています。

 

 ★ 問われる日本政府の姿勢

 出版労連としては、これらの内容を大いに歓迎します。国連の人権を担当する諸機関が市民社会の意見を重視していることを今回も実感した次第です。
 問題は日本政府が今後どう対応するかです。近年は国連人権諸機関からの勧告に対し、「法的拘束力がない」などと背を向ける姿勢が顕著に見えます。実際、2022年の自由権規約第7回日本政府報告審査への自由権委員会の総括所見では「繰り返し勧告する」という言葉が目立ちました。
 毎回の勧告を実行しようとしないからこういうことになるわけで、私たちは運動と世論を広げ、このような政府の姿勢を変えさせることが求められていると言えます。

『国際人権活動ニュース 第144号』(2024年9月17日)

国連経社理特別協議資格NGO 国際人権活動日本委員会
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