ピッコロ便り

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ピッコロ舞台技術学校「OBのいま」⑥ 村田晴弥 さん

2022年02月24日 | 演劇学校・舞台技術学校

コロナ禍のなか、3年ぶりの合同卒業公演に向けて、現役生たちは日々稽古やプラン作りに頑張っているところです。何とか公演日まで無事走り切ってもらいたいところですが、生徒たちの頑張りだけでは、公演にたどり着けない社会状況のため難しいところです。

今回の『OBのいま』は、舞台技術学校29期生(現役)で『株式会社パソナスマイル公演制作部テクニカルチーム』の村田晴弥さんです。

 

『現役生ですが…』

村田さんは現在、淡路島の「ハローキティショーBOX」「ハローキティスマイル」「波乗亭」「海の屋」などのテーマパークやイベントスペースで音響・照明のオペレーターとして活躍されています。日々現場で働く立派なプロ技術者なのですが、同時に現役の〈ピッコロ舞台技術学校〉の29期生でもあるのです…なぜ??

もともと村田さんは、昨年度の「ピッコロ舞台技術学校 体験講座」の修了生でした。

コロナ禍の影響で半年間のみの開講。卒業公演も出来なかった恵まれない年度だったのにもかかわらず、見事プロ技術者への道を切り拓き、夢を叶えたのですが、ピッコロ生活が楽しすぎたのか?卒業公演が出来なかったのが悔しかったのか?担当職員が止めるのも聞かず、今年度も〈ピッコロ舞台技術学校〉を受験。合格はしましたが案の定、仕事が忙しすぎて授業にほとんど参加できず29期生の間では“幻の有名人”と言われています。

〔実習授業にて〕

 

『燃えた!ハイスクールライフ』

「子どもの頃は将来、仮面ライダーになろうと思っていた」と真顔で話す、ちょっとヤバい村田さんですが、高校時代は、囲碁部・将棋部・弓道部をハシゴするという、よく言えば積極的!なようで実はやりたいことが定まらずフラフラしていたのでした。そんな時、友人から「放送部に入らないか?」と誘われます。正直あまり興味は無かったのですが、いま入部したら部長にしてやるという甘い?言葉に誘われ、4つ目のクラブに入部するのです。村田さんは肩書に弱かったのでした。

入部してすぐ、エントリーしていたNHK放送コンクールに、“部長”として朗読で出場しますが、何の経験もない肩書だけの部長ですので、当然のごとく最下位で落選。審査員の評価も散々で落ち込むも、逆に闘志を燃やし再挑戦を誓います。さすがに朗読は無理だと悟り、映像作品が面白そうだといきなり動画撮影を開始。台本も必要と脚本の執筆も始めました。ともに知識も手法も知らず情熱だけで突き進むそのパワーに刺激されたのか、村田さんの周りにはどんどん協力者が増えていきます。そして多くの仲間に協力してもらい作りあげた映像作品は何回か落選ののち、県大会決勝にまで進出!惜しくも全国大会出場こそ逃がしましたが、短期間に著しい進化を遂げたのです。

 

『燃え尽きた…社会人ライフ』

高校時代の体験から映像制作の道へ進みたいと考えた村田さん。しかし、諸々の事情から医療関係の学校へ進学~就職し、介護士として社会人の第一歩を踏み出します。元来、人の役に立つことが好きな性分でしたので、やりがいを感じていましたが、あまりの激務に、少しずつ自分が擦り切れていくような感覚に囚われるようになっていました。

そんな中でも、わずかな空き時間をみつけて脚本書きは細々と続けていました。生活の中で唯一ほっとする時間…「脚本家になれたらいいなぁ」 淡い願望を描きながら、仕事のこと、高校時代のこと、友達のこと、色々な題材から物語を紡ぎだしていました。一方仕事はさらに多忙を極め、いつしか自分がどこで何をしているのか、なぜこんなことをしているのか、益々わからなくなってきていました。

 

『萌える♡ピッコロライフ』

〈ピッコロ舞台技術学校〉の存在は、募集パンフレットを見かけて気にはなっていました。当時、メンタルが完全に行き詰まっていたこともあり、藁にも縋る思いでその門を叩きました。脚本を書く授業はありませんでしたが、放送部で触っていた機材の感触が懐かしく「音響コース」を選択。これがハマって一気にのめり込み、忙しい業務の合間を縫ってピッコロに通う日々。年齢や職業、立場も様々な同期生たちと切磋琢磨する毎日は楽しくて仕方がないものでした。コロナ禍のため、わずか半年間という短い学校生活でしたが、そこで得たものは村田さんの人生観を大きく変えたのです。

 

『萌えろ!キティーライブ』

一気に音響に目覚めた村田さんは、公演制作会社の技術部門に転職。日夜、演劇・イベント・ショーなどの音響、照明のオペレーションを手掛けるようになりました。「ハローキティショーBOX」「ハローキティスマイル」の名前からもわかる通り、キティちゃん関連のライブショーをメインに行っており、キティちゃんの知識なら、その辺のサンリオマニアには負けないと自負するほどです。とはいえ会社では、まだ1年目のド新人。技術者としては、わからないことや迷う場面も多く、先輩に叱られながら教えを乞い、ネットや専門書を片手に勉強、現場経験を積む毎日です。

 

『今、いちばんハマってることは~♪』

お笑い芸人・タレントの「バナナマン!!」と即答。出演番組は出来る限りチェックしています。あと、脚本書きもまだ続けているそうです。最近では知り合いのバンドの曲の作詞なんかも手掛けているとか。脚本家の夢はまだ継続中です。

 

『後輩たちへ!舞台技術者を目指す人たちへ!』

「よくぞ、この学校を見つけましたねと、まずあなたを褒めてあげたい。この学校は授業料が安すぎるのにもかかわらず、その何倍もの価値があります!頑張る人、頑張ろうとする人を応援してくれる!(いい意味で)中毒性がある、1年通っただけでは足りない、もっともっと居たくなる学校です。ただ、居さえすればいいという訳ではなく、積極性は必要だし同期の仲間たちとのコミュニケーションは必須です。

まだ新人の域の自分が言うのも何ですが、やりたい事があるなら一生懸命取り組めば、必ず出来る!答えが出るまで時間がかかるかも知れないけど、やるなら少しでも早く動きだすことが大事!大変なことも多いけれど好きと言う気持ちがあれば頑張れる。これは自分が実践していることなので自信を持って言えます。

みなさん是非〈ピッコロ舞台技術学校〉へ来てください。プロとして活躍している先輩たちも多いし、講師として後輩を指導くださっている先輩もいらっしゃいます。私も将来、必ず講師として戻って来ますので、一緒に燃える演劇を作りましょう!!」

〔やぁ〕

◆過去に掲載された「OBのいま」もお読みいただけます。

「OBのいま」① 渡辺 舞さん(舞台美術家・みらい舞台美術塾)

「OBのいま」② 竹内哲郎さん(舞台照明家・株式会社ハートス)

「OBのいま」③ 岩花さとみさん(舞台照明家・株式会社ハートス)

「OBのいま」④ 中村あすかさん(株式会社俳優座劇場舞台美術部)