世にある日々

現世(うつしよ)は 愛おしくもあり 疎ましくもあり・・・・

While my guitar gently weeps

2012-07-17 | While my guitar gently weeps









僕が高校の頃 父が買ったギター
茶木のW-6

このギターを美人館 っていう楽器屋さんから買った
それが 音の神さまと出会った時だった

ここのおじさん  一宮っていう街の小さな楽器屋だけど
音に関しては  絶対に妥協しない人だった

ギブソンとかマーチンとかフェンダーのギターでも
自分が弾いて音が気に入らないと返してしまう
ギブソン マーチン フェンダーのギターが返品されるのは
ここの楽器屋さんだけ

とある  タカ○ネというメーカーのセールスマンが
「 うちは コンピューターで設計して作っているから
 全部同じ音をしてます 」
なんて言ったらしい
おじさん
「 オマエ もううちに来るなっ! 」
って  追い返したそうだ

僕は このおじさんに音というものを教えてもらった

そして  僕は
ギターってギターになっても木の妖精は
ギターの中で生きていて音を出すんだ
ということが解った

だから  丁寧に作られたギターはイイ音がする


このギター  京都にある茶木というメーカーで
チェロとかコントラバスなんかを作っていたらしい
それが  創業者の趣味でギターを作り始めた
趣味だから  採算は度外視
サイドとバックは ハカランダという材でできている

音は こしがあって前に出るが響きはキレイで

ちょっと くすんだようなギブソン系の音
メーカーに このギターのスペックを聞いたら
材のことも教えてくれたけど
今 このグレードのギターを作ると200万かかるそうだ

えっと・・・・ たしか8万で買った覚えがある


おじさん  4、5年前に脳梗塞を患って
思うように動けなくなってしまったし
昔の才気もなくなって  ボーっとしている状態だった

でも  そのあとを継いでいる娘さんが
「 こんな音のするギター  売っていいのだろうか? 」
って  客を前にして迷っていると
ボーっとしているおじさんは突然
「 そのギター  イイ音せんな・・・・ 」
なんて 言ったそうだ

それで  娘さんの気持ちが決まって
そのギターは 売らなかったそうだ

僕にとっては  おじさんは楽器の、音の、神さまだった

そのおじさんも先日  天に帰られた
と聞いた

最後は 不自由な肉体の中にいても
店を継いでいる娘さんのことが心配で帰られなかったのだろう

ひとつの時代が終わった
僕も  そのときの中
40年という時を過ごしてきた

ちょっと さみしいけどね

ストラトのフロントピックアップでトーンを抑えて弾いたとき
「 このストラト  泣くね~ 」 といったときの
おじさんのうれしそうな顔を忘れないよ

イイ音を  本当にありがとう