僕が高校の頃 父が買ったギター
茶木のW-6
このギターを美人館 っていう楽器屋さんから買った
それが 音の神さまと出会った時だった
ここのおじさん 一宮っていう街の小さな楽器屋だけど
音に関しては 絶対に妥協しない人だった
ギブソンとかマーチンとかフェンダーのギターでも
自分が弾いて音が気に入らないと返してしまう
ギブソン マーチン フェンダーのギターが返品されるのは
ここの楽器屋さんだけ
とある タカ○ネというメーカーのセールスマンが
「 うちは コンピューターで設計して作っているから
全部同じ音をしてます 」
なんて言ったらしい
おじさん
「 オマエ もううちに来るなっ! 」
って 追い返したそうだ
僕は このおじさんに音というものを教えてもらった
そして 僕は
ギターってギターになっても木の妖精は
ギターの中で生きていて音を出すんだ
ということが解った
だから 丁寧に作られたギターはイイ音がする
このギター 京都にある茶木というメーカーで
チェロとかコントラバスなんかを作っていたらしい
それが 創業者の趣味でギターを作り始めた
趣味だから 採算は度外視
サイドとバックは ハカランダという材でできている
音は こしがあって前に出るが響きはキレイで
ちょっと くすんだようなギブソン系の音
メーカーに このギターのスペックを聞いたら
材のことも教えてくれたけど
今 このグレードのギターを作ると200万かかるそうだ
えっと・・・・ たしか8万で買った覚えがある
おじさん 4、5年前に脳梗塞を患って
思うように動けなくなってしまったし
昔の才気もなくなって ボーっとしている状態だった
でも そのあとを継いでいる娘さんが
「 こんな音のするギター 売っていいのだろうか? 」
って 客を前にして迷っていると
ボーっとしているおじさんは突然
「 そのギター イイ音せんな・・・・ 」
なんて 言ったそうだ
それで 娘さんの気持ちが決まって
そのギターは 売らなかったそうだ
僕にとっては おじさんは楽器の、音の、神さまだった
そのおじさんも先日 天に帰られた
と聞いた
最後は 不自由な肉体の中にいても
店を継いでいる娘さんのことが心配で帰られなかったのだろう
ひとつの時代が終わった
僕も そのときの中
40年という時を過ごしてきた
ちょっと さみしいけどね
ストラトのフロントピックアップでトーンを抑えて弾いたとき
「 このストラト 泣くね~ 」 といったときの
おじさんのうれしそうな顔を忘れないよ
イイ音を 本当にありがとう