爽やかな風が吹く日
風が 木の葉を揺らし きらきらと光る木を見た
前にも 同じ光景を見たことを思い出した ・・・・
僕が亡くなった妻にプロポーズしようと決めたのは
彼女が僕を理想の男性だと言ったから
あとは なんかお互いに気が合って 話していることもおもしろい
楠正成も尊敬していし
僕と同じ価値観を持った女性だった
そして 僕はプロポーズをした
しかし 断られた
でも なんとなく交際は続いていて
僕に気があるみたいだった
それで
また プロポーズしたが断られた
こんなことが三回続いた
僕に気があるようで プロポーズすると断られる
僕は だんだん腹が立ってきて
その感情は最後に怒りに似たような感情に変わっていった
ある風の強い晴れた日だった
でも その風は爽やかな風だった
職場で外を歩いていた
心の中は 彼女のことを考えていた
しかし 先に書いたような怒りに似た感情が心を支配していた
ふと 強い風に枝を揺らしている木を見た
木の葉が風に吹かれ揺らめいて
木がキラキラと輝いて見えた
「きれいだな」と思った瞬間
怒りに似た感情がなくなった
不思議だった
その頃 僕の知り合いの幼稚園の園長先生(女性)から
その幼稚園の先生を紹介してあげると言われていた
でも プロポーズしている彼女のことがあって失礼になると思い
園長先生に会い 事情を話し断った
もちろん彼女のことも素直に話をした
そしたら園長先生が
「女性は 理想とか潔く生きるというだけでは
その男性に身も心も捧げることは難しいのよ
それもふまえた上で 最後に生活の中で
自分のすべてを包み込んでくれるような愛情が必要なのよ
ほんの一時だけ その時間があれば後はどんなことでも
耐えることができるのよ」
そのようなことを言って下さった
僕は そのことをよく考えてみた
そして これが最後だと思って
心をこめて 彼女に言った
「 貴女も知っているとおり楠正成は 永遠に正しい道を生ききった
でも 家庭の中ではどうだったんだろう
妻の久子を知らない人が おおいけど
正成にとっては 妻のいる家庭が唯一の安らぎの場所だったに違いない
また 久子も安らげる家庭を作り 生活の中でおたがい良いところも
悪いところも理解し合って愛し合っていたと思う
でなければ 正成はあのような活躍は出来なかっただろうね
日常の生活はどろどろとしていることが多いけど
そのなかで愛し合っていきたいと思う ・・・・ 」
あえて それ以上は言わなかった
怒りが無くなり 握っていたものを放して
すべてを天にまかせた
しばらくたったある日 電話で
「 抹茶のアイスクリームを作ったの・・・・ 」
と言ってきた
「 僕のために? 」と聞いた
「 うん! 」と答えた
熱田神宮の駐車場で僕はそれを食べた
そして どういう訳か今
熱田神宮のすぐ近くに住んでいる ・・・・