実は、先週、「やがて海へと届く」を見た後に、クリエで観てきました。
「喪失と再生の日、その2」です。
スマホで結構長い記事を書いていたのですが、うっかり消してしまって、ショックで書く気力が出てきませんでした。
後で書きなおそうと思っていたのですが、気がついたら一週間もたっていました。
いまさらなのですが、感想をかきとめておきます。
これも、喪失と再生です。
まず、初演の時の巨大な三階建てのセットではなく、こじんまりとした「家」をイメージさせる二階建てのセットになっていたことにびっくりしました。
かわいらしいオレンジ色の電飾の屋根までありました。
初演の時は、音楽や脚本・セットだけでなく、演出や照明・ステージングもすべて、ブロードウェイ版を踏襲することが求められていました。
巨大な三階建てのセットは主人公ダイアナの頭(脳)で、それが赤から紫、そして青の三色のグラデーションで彩られていました。
赤はクレイジー、紫はネクスト・トウー・ノーマル(ノーマルの隣)、青はノーマルで表現され、巨大なセットの中をゲイブが縦横無人に走り回って歌う姿がとてもかっこよかったのです。
今回、それが「家」に変更されたことで、「ダイアナの物語」から「ダイアナと家族の物語」へと変わっているのを感じました。
また、確か、開演前には紗幕が下りていて、そこに安蘭さんの力強いまなざしが投影されていました。
10年前はまだ、双極性障害という病について知らない人が多く、ダイアナの抱える苦悩は、紗幕の向こうに広がる別の世界の物語でした。
けれど、十年経って紗幕はなくなり、客席に座る私たちも地続きの世界に生きているんだと気付かされました。
重いテーマですが、ロック調の音楽が魅力的で、私の大好きな作品です。
今回、ゲイブを演じた海宝直人さんがとても素晴らしく、「I'm alive」を完璧に歌う人を、初めて観ました。
ものすごい才能だと思います。
また、ナタリー役の昆ちゃんもものすごくよくて、初演よりぐっとナタリーの存在感が大きくなっているのを感じました。
母と娘の物語が厚みを増して、ダイアナの悲しみや苦しみがより深まったように思いました。
安蘭さんと新納さんの初演組は、やっぱり安定のうまさでした。
家に帰りついたら「鎌倉殿の十三人」をやっていて、さっきまでドクター・マッデンだった新納さんが坊主頭で奮闘していて、あまりにシュールで笑ってしまいました。
ネタばれになるので、内容には触れませんが、蓋をしてきたつらい事実を認め、しっかり向き合う事でしか「光」はつかめないのですよね。
映画も舞台も、結局、同じテーマでした。