2017年の暮れから突然イランで反政府デモが勃発していることはニュースでも紹介されている通りです。しかし少なくとも20人以上の死者が出てデモが各地に拡大しつつあると報じられているにも関わらず、一体どこに首謀者がいて指示を出しているのか、デモの目的は何なのかが今ひとつ不明なままです(ロウハニ大統領も敵が誰か不明のまま声明を発表)。1月2日のNY timesによると強硬派、改革派ともに抗議の対象になっているとされていますが、元々の反政府デモの動機は経済の停滞にあると言われます。経済停滞については、2015年の核合意によって米国の経済制裁が緩和される予定であったものが、トランプの核合意破棄宣言で米国の国際銀行がイランへの借款を認めない方向になり、30台以前の若者達の失業率も40%に上ろうとしていることから改革派のロウハニ大統領への不満も強くなっていると報じられています。
しかし「ロウハニに死を!」とシュプレヒコールを上げる民衆というのは何か違和感を感じます。強硬派アフマディネジャド氏に変わって、昨年再選されたロウハニ大統領は経済改革や世俗的な政治を取り入れる方向でむしろ民衆に支持される側にいたのではないかと思われるからです。ロウハニ大統領に対する敵意というのは、私はもしかすると2017年11月22日ソチで行われたプーチン、エルドアン(トルコ)、ロウハニ会談による中東新秩序建設への危機感から、CIA、モサド、スンニ派サウジアラビアなどがバックで糸を引いてイラン内乱へ持ち込もうとしている結果では、と想像します。
2017年ソチで行われた三者会談
2010年からチュニジア、エジプト、リビアと政権転覆に成功してきたアラブの春は、米国に都合が良いサウジアラビアは素通りしてシリアの内戦で泥沼化し、結局2011年4月以降6年経っても政権は転覆せず、米国はISISに「穏健派反政府勢力」を経由して多量の武器弾薬を送った(トランプ氏も明言)にも関わらず本気を出したロシアにISISを駆逐されて頓挫しました。2017年10月にイラクのモスルとシリアのラッカという二大拠点を失ったISISは10月12日未明にシリアから数千人の戦闘員と家族を大量のトラックとバスに分乗させてトルコ国境方面へ脱出しました。米国はこの脱出を承認し、多数の航空機を飛ばして監視し続けたとBBCが報道しています。シリアは今後ISISの駆逐に貢献したクルド人勢力をどうするのか、トルコともども悩ましい事態になると思われます。
米国・イスラエルの意を汲んだISISが消滅して、アサド=シリア、トルコ、イラン、ロシアが連帯を組めば中東はロシアの支配下に入ることは間違いないでしょう。今後は皇太子が改革を進めるサウジアラビア、内戦が続くイエメンがどう落ち着くかが注目されます。トランプは「エルサレムはイスラエルの首都」と波紋を投げかけて「後はイスラエルが勝手にやりなさい(米国は責任を持てないよ!)」と尻をまくってしまいました。トルコのエルドアン大統領は早速東エルサレムはパレスチナの首都とイスラム連合国会議で決議し、NATOの一端を占める国としてイスラエルがイランの核施設に攻撃をかけてもNATOは関与しないという姿勢を示しました。反トランプのエスタブリッシュメント勢力や中東に関与し続けたい米国勢力はイランに内乱を起こさせる位しか残る手がなくなってきたのではないかと思われます。シリアにはまだ米軍が残留していますが、それはイランに向かわせるためのものという報道も見られます。
シリアの内戦も当初は小規模で非暴力的なものが中心であったと言いますが、外国勢力の加担によってどんどんエスカレートして現在のような取り返しがつかない悲惨な状況になりました。イランは歴史のある国で支配層もシリアのような少数派によるものではないので、簡単に内戦に持ち込むことはできないと思いますが今後の行方、外国勢力が入らないかなど注意して見て行きたいと思います。
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