──── 八王子で印鑑を作り続けて110年 ────
こんにちは。東京、八王子で印鑑を作っている職商人(しょくあきんど)の平澤 東(とう)です。
前回に続いて「判読できない印鑑の文字」について書いてみます。
今回は「壽」(ことぶき、今は「寿」を使う)の字です。篆書だとまるで変わってしまいますね。以前にもご紹介しましたが篆書は同じ文字でも数種あります。今回の「壽」の字も「篆刻字林」には多くの文字が出てきます。
実はこの「壽」の文字、私が初めて彫った印鑑の文字です。25年以上も前に大学卒業後、見習い修行に行って、初めて彫った文字でした。稽古彫りと言って、柘植(つげ)の木の原木に師匠が字を入れてくれて、慣れない刃物を持って3日くらい掛けて彫りました。直径で3センチ以上あった大きな丸型印です。文字は下の「篆刻字林」の下段右から2列目、上から3つ目の画数の少ない字が書いてありました。
この時に初めてみた「壽」の篆書。判読できませんでした。勝手な推測で「馬」と兄弟子に言ったら、思いっきり笑われたのをまだ覚えています。この字は、曲線がなく、直線ばかりで角をしっかり彫ったり、四角の穴の中を彫ったりの稽古によいので、初めての稽古彫りに師匠が選んだ字だと思われます。
個人のお名前に使うと「ひさ」とか「とし」といった読み方をすることが多いです。
楷書だと画数が多く難しい文字も、今回のように篆書にすると簡単な字になることもあります。憂鬱(ゆううつ)の「鬱」も同じことが言えます。
▲「篆刻字林」にある「壽」の文字。下段、右から2列目、上から3つ目の字は簡単な字です。
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