──── 八王子で印鑑を作り続けて110年 ────
こんにちは。東京、八王子で印鑑を作っている職商人(しょくあきんど)の平澤 東(とう)です。
風薫る爽やかな陽気になりました。連休が明けるころから朝晩でも暖房が要らなくなるようです。
先日お見えになった実印のお客様で、文字について詳しくご指示をなさった方がありました。下のお名前に『浩』の字があり、「旁(つくり)の上は牛にならないように」というご指示です。書体が篆書(てんしょ)だったので、すぐに真ん中の縦画が突き抜ける篆書は使ってはまずいな、と思いました。
『浩』『告』の中国での元字は上が牛、下が口、でした。「篆刻字林」を見ると最上部にある見出し文字も上が牛になっています。業界で出版している「常用漢字印章字林」の見出し文字は明朝体なので、現在の字になっていますが、小篆、印篆の文字は「牛」です。中国になく、日本で作られた読みやすい篆書「印章新体」の文字は、現在の楷書に近いように書かれています。
印鑑の文字、篆書は時として楷書から全く想像がつかない位に文字が変わることがままあります。そんな場合、接客時にお客様に辞書を見せたり簡単に筆書きしたりして説明をしております。今回の文字の場合には、線が突き抜ける、抜けない、の違いでしたがお客様のご希望、ご指示をまず伺うことが大切と思っております。
▲「常用漢字印章字林」で「浩」の字のページです。
左端に「浩」字の色々が縦書きに並んでいます。
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