2020年4月のブログです
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アイヌ民族の作家である鳩沢佐美夫さんの『コタンに死す-鳩沢佐美夫作品集』(1973・新人物往来社)を再読しました。
この本は20年くらい前に帯広の古本屋さんで購入したもので、一度読んだきりだったのですが(鳩沢さん、ごめんなさい)、今回、すごく久しぶりに読みました。
1973年、じーじが大学に入った年の本ですが、内容は全く古くありません。
それどころか、アイヌの人々への差別問題だけでなく、最近、問題になった知的障碍者の避妊手術事件などがすでに描かれていて、作者の問題意識の深さにびっくりさせられます。
短編集ですが、じーじは作者の自伝的な小説である二つの小説が印象に残りました。
一つはおばあちゃんとの思い出話を描いたもの。
おばあちゃんのアイヌ民族の知恵がたくさん描かれていて、美しい小説です。
もう一つは、戦時下での小学生の姿を描いた小説。
アイヌ民族ゆえにだんだんと差別をされる主人公の憤りと哀しみが描かれます。
哀しいことですが、この現実を忘れてはならないと強く思います。
これを読んでじーじは、小学生の頃に、貧乏な子や頭の悪い子をみんなと一緒になって馬鹿にしていた自分を思い出し、申し訳なさと自分への怒りでこころがいっぱいになりました。
鳩沢さんの文章はとても美しい日本語です。
日本語教育を受けたのだから当然かもしれませんが、下手な日本人の作家さんより美しいです。ましてや、今の若い作家よりはずっとうまいです。
アイヌ民族の人たちとのことだけでなく、じーじたち自らの内にあるすべての差別意識についても、深く考えていきたいと思いました。 (2020.4 記)