2020年夏のブログです
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柚月裕子さんの『あしたの君へ』(2019・文春文庫)を読みました。
これも旭川の本屋さんで見つけました。
久しぶりに家裁調査官が主人公の本。
というか、正確にはまだ研修中の調査官の一歩手前の調査官補、男子カンポちゃんが主人公です。
じーじの現役時代、こんな推理小説になるような難しい事件はなかったよな、と思いながらも、しかし、じーじが凡庸で気づかなかっただけかな、と反省をしたり…。
もっとも、話をきけばきくだけ、真実は深まるということはあったかもしれないな、という感想もあります。
ただし、今となってみれば、ただ話をきくだけでは、話は深まらないし…、とも思い、やはり経験と研鑽が大事か…、とまたまた反省。
例によって、あらすじはあえて書きません。
感想に限ろうと思うのですが、これがなかなか難しい。
元同業者のことはやはり冷静に見えにくいのかもしれません。
それにしても、物語のうえでのこととはいえ、カンポくんの上司はなかなかいいです。
適切なアドバイスをしたり、急な出張を許したり(実際には裁判官の許可が必要なので、こうはいきません)、行きつけのお店にボトルをキープしていたり、理想の上司です。
こんな上司に見守られながらなら、いい調査官が誕生するかもしれません。
今の現場は少しはこういうことに近づいているのでしょうか。
そして、同期同士の友情。
臨床は、やはり、同期、先輩らとの切磋琢磨からしか、成長ができない世界なのかもしれません。
久しぶりに新鮮な気分にさせてくれた、いい小説でした。 (2020.7 記)