シークレットサービスも「グル」らしい
ドナルド・トランプ前大統領がペンシルベニア州の選挙集会で銃撃されてほどなく、ソーシャルメディアではリベラル派の陰謀論が氾濫しはじめた。
いわく、トランプの耳から流れた血は「演劇などで使われる赤いジェル」であり、この暗殺未遂は「偽旗作戦」であり、おそらくシークレットサービスがトランプ陣営と組んで「自作自演」したのだ、と。トランプが血を流しながら拳を突き上げるシーンは、「#staged」(やらせだ)とタグ付けされた。
Xにはこんな投稿もあった。
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「シークレットサービスはいつから大統領に『待て』と言われたら、その指示に従って彼を立ち上がらせ、彼の姿が群衆に見えるようにして拳を高々と上げることを許すようになったのか? これがフェイクだと思う私のほうがおかしいのだろうか?」
攻撃を受けた際、シークレットサービスは保護対象者に覆いかぶさり、有無を言わさず避難させるのが任務である。にもかかわらず、あの状況下でいわゆる「シャッターチャンスを与えた」ことが腑に落ちないというわけだ。
トランプとプーチンが共謀?
このようにトランプ暗殺未遂事件を受けて、リベラルのインフルエンサーなどによるネット上の陰謀論が一気に過熱し、「ブルーアノン」現象と呼ばれている。
ブルーアノンとは、右翼の陰謀論集団「Qアノン」をもじったもので、ブルーは民主党のカラーだ。
Qアノンに詳しいジャーナリストのマイク・ロスチャイルドは、ブルーアノンについてこう語る。
「悪賢いトランプは選挙戦を有利にするためなら自分の暗殺未遂を偽装するのさえいとわない、と考える左派の急進的なインフルエンサーらが拡散しているのです」
その説に燃料を投下したのは、強力な民主党支持者であるドミトリ・メルホルンだった。メルホルンは、リンクトインの共同設立者で民主党の大口献金者として知られるリード・ホフマンの政治顧問を務めている。
その彼が銃撃事件の後、民主党支持者に向けて、ある「可能性」について考えてみるべきだと促すメールを送った。
その可能性とは、「米国ではそんなことは恐ろしく、ありえないと思うかもしれないが、世界ではごく一般的なことだ。この『銃撃』はトランプがあの写真を撮らせるため、そして(事件に対する)反発から利益を得るために仕組んだのかもしれない」。
メルホルンはさらに、すべて大文字でこう付け加えた。
「トランプとプーチンが意図的にこれを仕組んだ可能性について、米国の新聞やオピニオンリーダーは誰一人として大っぴらに論じようとはしないだろう」
翌日、メルホルンはこのメールを送ったことを謝罪し、後悔していると述べた。
根本的には「MAGA」と変わらない
ブルーアノンが見ている世界では、主流メディアを含む影の勢力がジョー・バイデン大統領を潰し、トランプを政権に返り咲かせようと画策している。
ミネソタ州のオーグスバーグ大学で権威主義と急進化を研究するカール・フォークは、こうした「より陰謀的な考え方は、過去8ヵ月の間で顕著になっている」と指摘する。
たとえば、バイデンが精彩を欠いた6月の大統領選討論会について、あの失態は直前に薬を盛られたからだとする言説がソーシャルメディアをにぎわせた(バイデン自身は、時差ボケと風邪のせいだと説明している)。
討論会の翌週に「ABC」ニュースで放映されたバイデンのインタビューについても、大統領の声が弱々しく聞こえるようABCが音声を加工したという陰謀論が浮上した。
前出のロスチャイルドは、このような左翼の陰謀論的思考は、人々が自分たちの世界観を否定されるような展開を受け入れたくないときに生じると指摘する。ネット上の超党派的な環境とメディアに対する信頼の低さが、その「飛躍」を容易にしていると彼は言う。
「何年も前から(トランプのスローガンである)MAGA運動で見てきたものと同じです」
「トランプは信者を生け贄にした」
話を暗殺未遂事件に戻すと、集会参加者のなかに死傷者が出たと報じられても、「やらせ」だと主張する反トランプ派のアカウントがいくつもあった。死者も「演出の一部」だというのだ。
民主党支持のインフルエンサー「@LakotaMan1」は、50万人以上のフォロワーを抱えるXにこう投稿した。
その彼が銃撃事件の後、民主党支持者に向けて、ある「可能性」について考えてみるべきだと促すメールを送った。その可能性とは、「米国ではそんなことは恐ろしく、ありえないと思うかもしれないが、世界ではごく一般的なことだ。この『銃撃』はトランプがあの写真を撮らせるため、そして(事件に対する)反発から利益を得るために仕組んだのかもしれない」。
メルホルンはさらに、すべて大文字でこう付け加えた。
「トランプとプーチンが意図的にこれを仕組んだ可能性について、米国の新聞やオピニオンリーダーは誰一人として大っぴらに論じようとはしないだろう」
翌日、メルホルンはこのメールを送ったことを謝罪し、後悔していると述べた。
根本的には「MAGA」と変わらない
ブルーアノンが見ている世界では、主流メディアを含む影の勢力がジョー・バイデン大統領を潰し、トランプを政権に返り咲かせようと画策している。
たとえば、バイデンが精彩を欠いた6月の大統領選討論会について、あの失態は直前に薬を盛られたからだとする言説がソーシャルメディアをにぎわせた(バイデン自身は、時差ボケと風邪のせいだと説明している)。
討論会の翌週に「ABC」ニュースで放映されたバイデンのインタビューについても、大統領の声が弱々しく聞こえるようABCが音声を加工したという陰謀論が浮上した。
前出のロスチャイルドは、このような左翼の陰謀論的思考は、人々が自分たちの世界観を否定されるような展開を受け入れたくないときに生じると指摘する。ネット上の超党派的な環境とメディアに対する信頼の低さが、その「飛躍」を容易にしていると彼は言う。
「何年も前から(トランプのスローガンである)MAGA運動で見てきたものと同じです」
「トランプは信者を生け贄にした」
話を暗殺未遂事件に戻すと、集会参加者のなかに死傷者が出たと報じられても、「やらせ」だと主張する反トランプ派のアカウントがいくつもあった。死者も「演出の一部」だというのだ。
民主党支持のインフルエンサー「@LakotaMan1」は、50万人以上のフォロワーを抱えるXにこう投稿した。
「トランプが『暗殺未遂』をより現実的で信憑性のあるものに見せるために、カルト信者のひとりを『生け贄』にするのは容易に想像できる」
彼は後でこの投稿を削除したが、それでも翌日の朝にはトランプが国旗の下で拳を突き上げている写真に添えて、こう書き込んだ。
「フェイクの血。逆さになった米国旗。俺は信じない。完璧すぎるからだ」
一方、この悲劇的な事件に関する詳細が明らかになるにつれ、少なくとも一人のバイデン支持者は何が起きているのかを認識し、陰謀論を撤回しようとしたようだ。「熱心な民主党支持者」を自称する女性はこう投稿した。
「トランプの集会での銃撃は自作自演だと無条件反射的に反応したのは、私の判断ミスだったようだ。トランプという人間に対する信頼は完全に失われているため、この出来事の信憑性を即座に疑ってしまった。でも私は間違っていた」
とはいえ、まだ納得していない反トランプ派は少なくない。
彼女の投稿には「自分の直感を信じるんだ」とリプライがついた。「トランプがやることに限界なんてない。11月の大統領選の勝利を確実にするためなら、なんだってやるはずだ」
Republican presidential candidate former President Donald Trump raises his fist as he is rushed off stage after an assassination attempt during a campaign rally in Butler, Pa.
記事2024.07.14より引用