トーマス・グラバー 第一章 トーマス十二歳、生まれ故郷を後へ フレーザーバラを離れる
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ギムナジウムへ入学
父は夕方六時頃、約束通り帰宅し、すぐにトーマスの部屋に入って来た。が、トーマスの法から
「父さん、大人の世界には転勤や転宅があることが良くわかったよ。 第一父さんはこのフレーザーバラに来る前は、別なところにいたんだよね。 それでまた、ここを離れてアバディーンという所へ引っ越しするんだよね。 転勤は大変だけど、大人の世界では当たり前だという事がよくわかったよ。 だから僕も皆と一緒についていくよ。 今朝は大きな声をだしたりしてごめんなさい」とぺこりと頭を下げた。
「おおう、トーマス、お前はやはり物分かりが早い子だなあ。 今度移る町はブリッジ・オブドンと言い、大きな町アバディーンのすぐ近くにあるんだよ。 それに三人の兄さんが寄宿しているギムナジウムも近くだから、三人とも新しい家から通学することになるんだ。お前も今度はその学校に入学するんだから、兄さんたちに負けないよう頑張るんだよ」。
「はい、父さん。 兄さんたちに負けないよう頑張って、僕も大きくなったら大きな家を建ててみせるよ」。
「そうだ、それでこそグラバー家の子だ。 お前は五人の中でも一番頭が良さそうだから、きっと大邸宅を建てる立派な男になるはずだよ」。
二人はそう話し合いながら一階へ降りて行き、トーマスは
「母さん、今朝はごめんなさい。大人の世界の転勤、転宅のことが良くわかったよ。だからきちんと自分の必要な荷物を整理しておくからね」
と母メアリーに笑顔を見せた。 しかし、その目が決して笑っていないで「尖り目」になっていたことを母メアリーは見逃さなかった。
1850年(日本歴嘉永三年)の春、グラバー一家は十数年住み慣れたフレーザーバラから馬車でアバディーン郊外のブリッジ・オブ・ドーンへ移住した。
この日は父母の関係者はもちろん、トーマスの教会学校の十数人の生徒たちも見送りに来てくれた。
その中にはあのエリザベートがいることを確認したトーマスは、これが彼女ととの永遠の別れになるような気がして、思わず涙がこぼれ落ちそうになった。
「男の子は女々しく泣いてはいけない」。 以前父から教えられた言葉を思い出し、懸命に涙をこらえた。
アバディーン郊外のブリッジ・オブ・ドーンへ移住したトーマス・グラバーは、三人の兄たちが通うキングスカレッジ付属のギムナジウムでスコットランドの伝統的な教育を受けた。
学校の教育課程はラテン語、英語、算数、地理などのほか、宗教を重視して作られており、構内には工作室も設けられていた。 自宅から学校までは歩いて二〇分弱だった。 この地へ移ってからも、エリザベートを思う気持ちは全く変わらない。
いや、彼女と会えなくなってから、なおさらに彼女への思慕はつのるようだった。 このため勉学にも余り身が入らない。
その代わりに工作室での旋盤(加工すべき材料を回転させ、穴をあけ、切断、研磨等を行う工作機械)技術の時間だけは、エリザベートの姿もしばし忘れて夢中になっていた。
(関連情報)
01.明治維新の大功労者 トーマス・グラバーのシリーズを始めます
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02.明治維新の大功労者 トーマス・グラバー フリーメーソンつぃいての活躍
本の 表紙と帯
https://blog.goo.ne.jp/renaissancejapan/e/95df680c734518c71420ceffc9cf0ad3
03.トーマス・グラバーと明治維新 FACTベースの基礎知識
https://blog.goo.ne.jp/renaissancejapan/e/d4b42ac9313d70fcc5a9e7b4f74f7ebd
04.トーマス・グラバー 第一章 トーマス十二歳、生まれ故郷を後へ 初恋の人との別れ
https://blog.goo.ne.jp/renaissancejapan/e/981d3ada11449dab0078dd90c263df5f
05.トーマス・グラバー 第一章 トーマス十二歳、生まれ故郷を後へ フレーザーバラを離れる
https://blog.goo.ne.jp/renaissancejapan/e/e0912b2050bf8f7e90f4c6a2642c6083
06.トーマス・グラバー 第一章 トーマス十二歳、生まれ故郷を後へ ギムナジウムへ入学
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この本には、歴史的に貴重な写真、図、文献なども数多く掲載されている秀逸な作品ですが、それらをPDF化して皆さんに紹介することもできますが、著者と発行所の『長崎文献社』に敬意を払って、全てを紹介するのは、控えたいと考えております。
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