人工稚魚のうな重。味や食感は天然と変わらない
人工稚魚のうな重。味や食感は天然と変わらない
天然資源に依存していたニホンウナギの稚魚を人工的に大量生産する技術を、水産庁の研究機関が4日発表した。
人工稚魚の生産コストは2016年度時点で1匹4万円以上していたのに対し、生産効率を高めて1800円まで下げた。今後、都道府県や民間企業へ技術を普及し、量産化を目指す。
水産庁の研究機関、水産研究・教育機構(横浜市)を中心とする研究グループが大量生産システムを構築した。
成熟させた母ウナギから毎週200万粒程度の受精卵を安定的に採取することに成功。水槽で幼生のウナギ(レプトセファルス)をふ化させ、シラスウナギと呼ばれる稚魚の大きさまで成長させる。
人工的に採取した卵から育てた稚魚
幼生の期間は、死亡リスクが高い。
遺伝的に早く成長する稚魚を選抜し、鶏卵や脱脂粉乳など身近な原料で育てることにも成功した。独自開発した餌は特許出願中だ。
専用の自動給餌装置や大型の量産用の水槽も開発。安定生産と効率化を進めコストを下げた。
日本の食卓に上がるウナギは天然の稚魚を採捕し、養殖場で育てたもの。資源は減少しており、現在天然稚魚は1匹500〜600円ほどで取引される。
同機構の風藤行紀シラスウナギ生産部長は「人工稚魚で1匹1000円を切ることを目標にしている」と話す。
水産庁増殖推進部研究指導課の長谷川裕康課長は「商業化にむけた道筋がみえてきた」と期待する。
この技術を養殖に関心のある自治体や企業に提供し、制度面も含めて環境を整える。ウナギは生態に謎が多く、人工稚魚の大量生産は養殖業界で最難関と位置づけられていた。
ひとこと解説
水産研究・教育機構が人工ふ化したウナギを育て、次の世代をふ化させる「完全養殖」に世界で初めて成功したのは2010年です。
さらに遡れば、北海道大学で世界で初めてウナギの人工ふ化に成功したのは1973年。
しかし、そこから20年は人工ふ化した稚魚を育てることができなかったそうです。
すでに日本は半世紀以上も技術開発に取り組んでいるわけです。
民間企業の知恵をいかし、商業生産が可能なレベルまで価格(コスト)を引き下げることができるか。
資源減少で天然のシラスウナギは1キロ250万円程度と貴金属並みの価格で取引されています。この高値が密漁や不正流通を生む要因にもなっています。
(更新)
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日経記事2024.07.04より引用