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EV電池なぜ燃える? 相次ぐ発火事故、専門家に聞く EV電池炎上10の疑問(上)

2025-01-26 12:50:15 | 自己紹介・人気記事

 

いつの間にか、リチウムイオン電池に取り囲まれている。

スマートフォンからクルマまで我々の生活に欠かせない技術だが、発火のリスクを抱える危険物の側面を持つ。

 

韓国では電気自動車(EV)が燃え、米ニューヨークでは配達サービスで使われる電動自転車の炎上が急増している。

リチウムイオン電池はなぜ燃え、危険性をどう封じ込めばいいのか――。電池業界に35年以上身を置く米24Mテクノロジーズの太田直樹President&最高経営責任者(CEO)に、素朴な疑問から安全対策の新技術まで幅広く聞いた。

 

同社は、ドイツのフォルクスワーゲン(VW)や京セラ、富士フイルム、伊藤忠商事などが出資する電池スタートアップだ。太田氏だけでなく、自動車メーカーの電池技術者や車載電池の品質・安全試験を手掛けるエスペックなどにも取材した。

車載電池の世界最大手である中国・寧徳時代新能源科技(CATL)の曽毓群(ロビン・ゼン)会長は、「安全性の問題が解決されなければ、壊滅的な結果になる」と危機感を訴える。

 

幸か不幸か、EV市場は成長の踊り場を迎えている。「少し時間の猶予ができた」(ある日系自動車メーカーの幹部)今こそ、電池の安全性と向き合うべきだ。

安全性を確保した電池は再利用の場面でも価値が高く、資源循環や経済安全保障の文脈でも重要な役割を担う。

 

 

Q1:最近起こったEV発火事故は?

韓国で事故が相次いだ。2024年8月1日、韓国・仁川のマンションでドイツ・メルセデス・ベンツのEV「EQE」が燃えた。

23人が病院に搬送され約1580世帯が断水、470世帯が停電、駐車場にあった車72台が全焼、70台が煙による損傷を受けるなどの多大な被害が発生したという。

 

その数日後には、韓国・起亜の「EV6」が発火する事故も起こった。

メルセデス・ベンツのEVが全焼したのはマンションの地下駐車場だった。火災を受け、一部のマンションでは地下駐車場へのEVの出入りを制限する動きも出てきた。

 

EVの発火リスクが表面化した事故としては、22年にポルトガル沖で起きた自動車運搬船の火災がある。

VWグループの車両約4000台を運搬していたが、水深3000メートルの海底に沈んだ。運搬船を運行していた商船三井は、ドイツ・ポルシェに損害賠償請求を起こした。商船三井は「ポルシェのEVの電池から出火した」と訴えたことが24年3月に明らかになっている。

 

 

Q2:燃えるのはEVだけ?

リチウムイオン電池はハイブリッド車(HEV)にも搭載されているし、太陽光発電や風力発電の電力を蓄える用途などで大容量の蓄電池が定置用・家庭用として普及しつつある。

発火・発煙の可能性がある点では変わらないが、電池の容量が大きいほど火災後の影響を考慮する必要があるだろう。

 

電動車1台に搭載する電池の容量は、HEVは1〜2キロワット時ほどで、EVでは100キロワット時を超える車種もある。定置用の蓄電システムはメガワット時クラスと大きい。

リチウムイオン電池市場が拡大すれば、電池火災のリスクも高くなっていく。韓国の調査会社SNEリサーチによると、リチウムイオン電池の需要は35年に5570ギガワット時に達するというという。

 

23年の実績は994ギガワット時で、12年で約5.6倍に拡大する見通しだ。5570ギガワット時の約85%を車載用途が占める。

今後、車載や定置用などを中心に中古電池を再利用(リユース)する事例が増えていくだろう。ある自動車メーカーの電池技術者は「劣化が進んでいる中古電池には怖さがある」と打ち明ける。

電池の内部状態を正確に推定し、リユースできるもの、リサイクルに回して資源を回収するもの、といった具合に選別していく判断技術が求められる。

 

 

Q3:そもそも電池はなぜ燃える?

発火する要因はいろいろあるが、キーワードは「短絡(ショート)」だ。正極と負極が正しくない電気経路でつながってしまうと、大きな電流が一気に流れ、発熱や発火を引き起こす。リチウムイオン電池の電解液は可燃性の有機溶媒である。

発熱によって正極が熱分解されると酸素を放出する。可燃性の物質と酸素が出合えば、激しく燃焼する熱暴走に至る。

 

例えば、クルマの衝突事故で電池パックが破損すれば、正極と負極がつながってしまう可能性がある。

外部からの衝撃だけでなく、電池セル内部の化学反応によっても短絡は起こる。「内部短絡」と呼ばれる現象だ。

 

リチウムイオン電池は正極と負極の間に、短絡を防止するためのセパレーターを配置している。何らかの原因でセパレーターが損傷して正極と負極がつながるのが内部短絡である。

 

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リチウムイオン電池の構造。正極と負極の間にセパレーターを配置し、内部短絡しないようにしている(出所:VectorMine/stock.adobe.com)

 

 



デンドライトがセパレーターを突き破る。負極側で発生したLiのデンドライトが正極側まで到達すると内部短絡を引き起こす(出所:24Mテクノロジーズ)

 

デンドライトが発生するきっかけの1つがコンタミネーション(金属異物の混入、以下、コンタミ)だ。

電池製造時に鉄(Fe)やクロム(Cr)などが混入し、この金属粒子を起点にデンドライトが成長していく。24Mの太田氏は「コンタミをゼロにするのはほとんど不可能」と話す。

 

仮にコンタミがなくても、リチウムイオン電池は充放電を繰り返すとデンドライトが発生する。

電池の放電時に負極からめっきが剥離するようにLiイオンが正極へと戻るが、剥がれ具合が不均一になることがある。

 

この不均一な表面はLiが剥離しづらく、Liの一部は正極側に戻れず堆積する。充放電回数が増えればLiは積もって山となり、大きなデンドライトに成長する。

内部短絡を防ぐ最後の砦(とりで)となるのがセパレーターだが、電池容量の追求によって「どんどん薄くなっている」(太田氏)という。

 

セパレーターは薄くした方が正極や負極の活物質を多く搭載でき、電池容量を増やせるためだ。

正極と負極を隔てる防御壁はかつて、厚さが20〜25マイクロメートルあった。現在は10マイクロメートル前後まで薄くなっているという。

 

 


24Mテクノロジーズの太田直樹President&CEO。24MはVWや京セラ、富士フイルム、伊藤忠商事など
が出資する電池スタートアップ(写真:日経Automotive)

 

 

 

Q4:安全な電池はないの?

車載用の電池では、正極材にニッケル(Ni)とマンガン(Mn)、コバルト(Co)を使った三元系(NMC系)とリン酸鉄リチウムイオン(LFP)系の2つが主流だ。

前者はエネルギー密度を高めやすく、後者はエネルギー密度で劣るものの低コストで安全性が高いとされる。

 

全固体電池はどうか。有機溶媒系の電解液を固体電解質に置き換えることから安全性が高いとされるが、「内部短絡は起こる」(太田氏)。

内部短絡によって電池の温度が上昇すれば、「負極のLi金属が溶けて漏れ、電池の冷却水と接触してさらに発熱していく」(同氏)。

 

 

Q5:EV用電池が燃えやすい悪条件は?

低温時の急速充電が電池にとっては都合が悪い。低温時に充電すると、電池セル内部に温度勾配ができて一部だけが温かくなる。Liイオンは温度が高い方が移動しやすい。

温度差がある状態で急速充電によって一気にLiイオンを流し込めば、電池内部の反応状況にばらつきが生じる。こうなると、デンドライトが一部の場所に集中して生成されてしまう。

 

急速充電を続けると、負極側に取り込まれないLiイオンが出てくる。「満室のホテルに予約以上の客が押し寄せるイメージ」(太田氏)だ。

急速充電を繰り返すと、正極側に戻れず負極側にとどまるLiが増えていき、大きなデンドライトを生成していく。

 

こうした悪条件で、「過充電」が起きると発火のリスクは一気に高まる。電池は通常、容量が100%を超えないように充電を管理している。

ところが、電池管理システムの誤動作や不備などによって、100%を超えても充電し続ける過充電を引き起こす場合がある。こうなるとLiイオンが負極側になだれ込み、行き場を失ってデンドライトとなる。

=つづく

(日経クロステック/日経Automotive 久米秀尚)

[日経クロステック 2024年11月1日付の記事を再構成]

 

 

 
 
 
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京大・トヨタが全固体電池の新技術 フッ化物で容量3倍

2025-01-26 12:35:22 | エレクトロニクス・自動車・通信・半導体・電子部品・素材産業

京都大学やトヨタ自動車などの研究グループは「全固体フッ化物イオン電池」用正極の体積当たりの容量をリチウムイオン電池の約3倍に向上させた

電池に組み込んだ場合の体積エネルギー密度はリチウムイオン電池の2倍以上が見込める。電気自動車(EV)用途で2035年以降の実用化を目指す。

 


新しい電極を組み込んだ全固体フッ化物イオン電池=奈良女子大学の山本健太郎准教授(研究当時は京都大学准教授)提供

 

一般的に電池はイオンが正極と負極の間を行き来することで充放電する。多数のイオンと反応して多数の電子を取り出す電極ほど容量が高い。既存のリチウムイオン電池の電極は、基本的には原子1個につき電子1個しか取り出せない。

京大などが発表した正極材料の「窒化銅」は主に窒素がフッ化物イオンと反応し、窒素原子1個につき電子3個を取り出すことができる。

 

そのため体積当たりの容量がリチウムイオン電池の3倍、重量当たりの容量が2倍と高い。数十回の充放電に耐えうる耐久性もあるという。

窒素のような「陰イオン」を反応に用いる電池はまれで、「サイエンスとしても面白い」(京都大学の内本喜晴教授)と語る。

 

現在、電池研究者や電池メーカーの間では「全固体リチウムイオン電池」と呼ばれる、リチウムイオン電池の性能を高めた電池の開発が盛んだ。20年代後半の実用化が進むとみられる。

今回の電極はさらに次世代の全固体フッ化物イオン電池に向く。全固体フッ化物イオン電池の開発には、正極以外に負極と固体電解質が必要で、研究グループは別途開発を進める。

 

この電極を使って全固体フッ化物イオン電池を組み立てた場合、体積エネルギー密度が「リチウムイオン電池の2倍以上」(内本教授)が見込めるという。

EVの航続距離が現在の600キロメートル前後から1200キロメートル前後に伸びる可能性がある。35年以降の実用化を目指す。

 

京都大学とトヨタ自動車のほか、東京大学、兵庫県立大学、東北大学、東京科学大学の共同研究で、米学術誌「ジャーナル・オブ・ジ・アメリカン・ケミカル・ソサエティー」にオンライン掲載された。

 

 

 
 
 
 

 


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2025-01-26 11:19:06 | 日本政治・外交

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