ハリス氏は共和党政権の元高官らの支持を得た=AP
【ワシントン=坂口幸裕】
米共和党政権の元高官ら200人超が11月の大統領選で民主党のハリス副大統領を支持する書簡を発表した。
共和のトランプ前大統領について「(ロシア大統領の)プーチンのような独裁者にこびへつらう一方、同盟国に背を向ける。そんなことは許されない」と記した。
ブッシュ元大統領(第43代)、2008年大統領選で共和候補になった故ジョン・マケイン元上院議員、12年に候補だったミット・ロムニー上院議員らの元スタッフら約240人が連名で書簡を出した。
20年大統領選でもトランプ氏と戦った民主候補のバイデン大統領を支持しており、新たにブッシュ政権(第41代)の関係者も加わった。
書簡ではハリス氏と「イデオロギー的に意見の違いは多く、それは当然のことだ」と指摘しつつ、同氏に投票すると宣言。
「ドナルド・トランプの混乱したリーダーシップがあと4年も続けば、現実の生活者が傷つき、神聖な制度が弱体化する」と断定した。
「混乱ではなく意見の一致、分裂ではなく団結に努め、米国と子どもたちの誇りとなるような指導者に投票するよう呼びかける。
その指導者とはハリスと(民主の副大統領候補でミネソタ州知事の)ティム・ウォルズ氏だ」と訴えた。
ブッシュ元大統領(第41代)の大統領首席補佐官だったジーン・ベッカー氏、マケイン氏の首席補佐官だったマーク・サルター氏、ロムニー氏の選対幹部だったデビッド・ニーレンバーグ氏らが署名した。
共和政権の元高官らはバイデン氏が勝利した20年大統領選の際も「トランプ氏の再選は米国にとって大惨事となり、さらに4年間続けば民主主義に取り返しのつかない打撃を与える」と警鐘を鳴らした。
ブッシュ元大統領(第43代)やロムニー氏は名を連ねていないものの、トランプ氏とは距離を置く。7月15〜18日に中西部ウィスコンシン州ミルウォーキーで開いた党全国大会にも参加しなかった。
一方、8月19〜22日に中西部イリノイ州シカゴでの民主党全国大会にはクリントン、オバマ両元大統領らが演説し、党の団結を誇示。トランプ政権の元高官や共和の元議員らが出席し、トランプ氏批判を展開した。
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トランプ政権成立を米国の長期的な国益の点から懸念する共和党の元高官は、私の友人にも多いのですが、どちらかといえば今回の共和党全国大会に出席して、トランプ氏に苦言は呈するが、支持を表明するニッキー・ヘイリー元国連大使のような保守派が多かったと思います。
2020年には「ノー・トランプレター」として知られるアーミテージ元国務副長官ら共和党元高官のトランプの共和党指名に反対する公開書簡はありましたが、これも民主党候補を支援するものではありませんでした。
今回のように明確に民主党候補を支持するという共和党の元高官のトランプ氏への懸念は、より深刻で、かつ選挙戦への影響も大きいと考えられます。
共和党政権の元高官がこれだけの人数でトランプ氏を批判するのは、2020年に引き続きトランプ氏にとっては痛手。
先の民主党大会では、共和党の元下院議員のキンジンガー氏が2021年1月6日に議会占拠を煽動したとしてトランプ氏を批判し、共和党員にハリス氏への投票を呼びかけた。
トランプ政権下で国家安全保障補佐官を務めたマックマスター氏も最近の自著で、トランプ氏の大統領としての資格に深刻な疑問を呈した。
お世辞を言う人に弱く、部下のアドバイスを無視し、外交政策に一貫性を欠けたとして大統領としての資格を批判している。
このような批判がどのように浮動票に影響を与えるか注目される。
2024年に実施されるアメリカ大統領選挙に向け、ハリス副大統領やトランプ氏などの候補者、各政党がどのような動きをしているかについてのニュースを一覧できます。データや分析に基づいて米国の政治、経済、社会などに走る分断の実相に迫りつつ、大統領選の行方を追いかけます。
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2024.08.28より引用