24日、国民に向け演説したアルメニアのパシニャン首相(アルメニア首相府提供)
=ロイター
アルメニアとその後ろ盾であるロシアの間で非難の応酬となっている。アゼルバイジャン領内でアルメニア系住民が多数派を占める係争地ナゴルノカラバフ地域を巡る紛争で事実上敗北したアルメニアは24日、ロシアの責任を追及した。
これに反発したロシアが25日にアルメニアを批判する声明を出し、亀裂が広がっている。
ナゴルノカラバフでは「対テロ作戦」を名目にした9月19〜20日のアゼルバイジャン軍の攻撃を受け、アルメニア系住民が武装解除に応じた。
アルメニア側によると、現地では200人以上が死亡し、約400人が負傷した。両者の間で和平協議が進む見通しになった。
ナゴルノカラバフ地域で同胞を軍事支援していたアルメニアのパシニャン首相は24日、国民向けの演説で「責任は民族浄化の政策をとったアゼルバイジャンと、ロシアの平和維持部隊にある」と厳しく批判した。
旧ソ連末期に始まったナゴルノカラバフ紛争は2020年秋に再燃し、アルメニアと軍事同盟を結ぶロシアが停戦を仲介した。ロシアは2000人規模の平和維持部隊も現地に派遣していた。
パシニャン氏は、平和維持部隊が今月19日の攻撃を防げなかったとして「目的や動機について深刻な疑念を呼び起こす」と非難した。
アルメニアの安全保障体制が「効果的ではなかった」とも述べ、ロシアなどとつくる軍事同盟の役割に疑問を呈した。
これに対して、ロシア外務省は25日、「ロシアに対する受け入れがたい攻撃だ」と非難する声明を発表した。パシニャン氏が「内政と外交の政策を破綻させた自らの責任を逃れようとしている」と反発した。
さらにパシニャン氏が「ロシアからの方針転換」を準備し、「新しい西へと向かう」ための措置を取っていると主張した。アルメニアが11日に米国との合同軍事演習を開始するなど欧米に接近していることに危機感を示した。
アルメニアの首都エレバンでは攻撃が始まった19日以降、パシニャン氏の辞任を求める激しい抗議デモが続いている。インタファクス通信によると、地元警察は25日、デモ参加者142人を拘束したと明らかにした。拘束者数は200人を超えたとの情報もある。
アルメニアはロシアなど旧ソ連5カ国との軍事同盟、集団安全保障条約機構(CSTO)に加盟する。
20年の紛争再燃や今回の「対テロ作戦」で同盟が機能しなかったとの不満を強めた。CSTOからの脱退などロシア離れがどこまで進むかが焦点になっている。