ニューヨークの国連本部
【ニューヨーク=三島大地、佐藤璃子】
ロシアのウクライナ侵略から3年を前に、国連に亀裂が走っている。ウクライナや欧州は24日の国連総会で侵略を非難する決議を提出する予定だが、米国はロシア批判を避けた独自の決議案の採決を模索する。
トランプ米大統領がロシアのプーチン大統領との距離を急速に縮めるなか、ウクライナ戦争を巡る西側諸国の溝が鮮明になっている。
国連総会はウクライナ侵略から3年になる24日に、緊急特別会合を開く。これにあわせ、欧州やウクライナ、日本など50カ国超はロシア軍のウクライナからの「即時撤退」を求める決議案を共同で提出した。
決議案は年内の戦争終結を求め、「包括的で公正かつ持続的な平和を達成する必要性」を強調している。ロシアの国際法違反について、調査と訴追を行うことも求める。
一方、米国は「紛争の早期終結を強く求める」とした決議案を別途提出した。決議案は「ウクライナとロシアの持続的な平和を促進する」として「公正」という表現は除いた。
欧州の決議案に盛り込んだ「戦争」の文言も使用せず「紛争」と置き換えた。
米国のルビオ国務長官は21日の声明で、「トランプ氏はロシアとウクライナの戦争を終わらせ、持続的な平和をもたらす決議案に注力している」と強調。
すべての加盟国に対し、米国案に賛同するよう求めた。ロシアは米国の決議案を評価した上で「紛争の根本原因への対処」を求める文言を加えた修正案を提出した。
欧州の外交官は「ウクライナが違法な侵略の被害者という事実を再確認することが重要」としており、米国案を受け入れるのは難しいとの見方がある。
総会では米国と欧州、ロシアがそれぞれ提出した3本の決議案が採決される見通しで、ウクライナへの侵略への対応を巡る欧米の溝が浮き彫りになっている。
ロシアのウクライナ侵略が始まって以来、安全保障理事会は停戦決議を採択できずにいる。常任理事国のロシアが自国を非難する決議に拒否権を行使してきたことが背景にある。
米国は同日午後に予定される安保理にも同様の決議を提出する予定だ。
国連外交筋によると、現時点で採択されるかは不透明という。仮に採択されればウクライナ侵略が始まって以来、安保理として初めてウクライナ戦争に関する見解を示すことになる。
国連総会は安保理が国際平和の維持に向けて主要な責任を果たせないときに、緊急特別会合を開くことができる。決議には法的拘束力はないが、国際社会の一致した見解を世論に示すことができるとされる。
国連総会は侵略1年となる2023年2月に、ロシア軍の即時撤退などを求める決議を賛成多数で採択したが、24年2月には新たな決議の採決に踏み切らなかった。国連総会が決議案を採択すれば2年ぶりとなる。
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