超一流の医学研究者である渡邊昌先生のロングセラーの秀逸な本の内容を紹介します。
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血糖降下剤の作用と副作用
病院で治療に使われる糖尿病の薬にはどういう作用があり、どういう副作用があるのでしょうか。 高血糖といわれたとき、どういう薬が処方されるかといいますと、まず糖質の吸収阻害剤か尿素材が使われます。
腸からの糖質の吸収を阻害する薬は『αグルコシダーゼ』と呼ばれています。食べ物を食べるとデンプンは単糖にまで分解され、小腸で吸収されます。 この単糖への分解にαグルコシダーゼという酵素が関わっていて、糖の長く繋がった鎖を切って、短い一個のブドウ糖にして吸収しやすくしています。αグルコシダーゼ阻害剤は、小腸粘膜に局在する二糖類の分解酵素の作用を阻害して、ブドウ糖の吸収を抑える働きをします。
αグルコシダーゼ阻害剤には、『アカルボーズ』や『ボグリボーズ』という薬があり、通常の投与量ではほとんど体内には吸収されず、腸内で作用した後、糞として排出されます。
分解しきれなかったオリゴ糖は、腸内に一〇〇兆以上いる腸内細菌の餌になり。お腹が張る、グルグル鳴るといった軽い症状がでます。 放屁や下痢、便秘などの症状がでることもあります。
αグルコシダーゼ阻害剤の重大な副作用は低血糖症状であり、腸閉塞様症状や肝機能障害を起こすことがあります。 肝硬変があると、意識障害を伴う高アンモニア血症をきたすこともあります。
弱った膵臓を鞭打つ尿素材
もう一つのポピュラーな薬に尿素材があります。 高血糖症の初期の段階で、αグルコシダーゼ阻害剤と並んで処方されることの多い薬です。
尿素剤は、『SU剤』『スルホニル尿素剤』などと呼ばれています。どのような働きをするかというと、膵臓のランゲルハンス島のベータ細胞を刺激して、インスリンの生産を高めます。
尿素剤の薬品名では『グルクラジド』『グリベンクラミド』『トルブタミド』はよく使われる薬で、ランゲルハンス島のベータ細胞を刺激してインスリンの分泌を高めます。 インスリン分泌機能が残っている場合にのみ有効です。
しかしかんがえてみれば誰にでもわかることですが、高血糖症になったのは、膵臓が疲労してインスリンの分泌能力が落ちてしまったためです。 つまり、弱っている膵臓にさらに鞭打つように働きかけて、インスリンの分泌を盛んにする薬が尿素材なのです。 効果が次第に減っていく場合を『二次無効』といっていますが、これはベータ細胞を疲弊させてしまった状態です。
多くの糖尿病患者が誤解している点ですが、血糖値を下げるのみ薬は、疲れた膵臓の機能を回復させるものではありません。 そのような作用をする薬はないのです。
尿素剤は、むしろその反対に作用します。尿素材を使い続けると、ほぼ数年のうちに膵臓のうちに膵臓の機能が完全に駄目になり、インスリン注射に以降する人が多いようです。 つまり膵臓の弱ってしまったポンコツ車を無理して毎日高速フル回転で使い、とうとう壊してしまうようなことになります。
副作用としては、インスリン分解酵素活性の阻害や、インスリンたんぱく結合の乖離や、グルカゴンの分泌抑制作用などが報告されています。 さらに重大な副作用として低血糖や無顆粒球状があり、貧血や白血球減少症、肝障害やBUN、クレアチニン上昇も起きます。
注視しなければならないのは、消炎剤やβ遮断薬、抗生物質、高脂血症に使われるクロフィブラート、三環系抗うつ薬など、さまざまな薬剤がこの薬の作用を強めることです。 そのため、思わぬときに低血糖状態になることがあります。
最近、即効性のインスリン分泌促進剤が開発されましたが、やはり、膵臓に無理な負担をかけて、無理やりインスリンの分泌を促進することになります。 長期の影響はまだ分かっていません。
肝機能を損なうビグアナイド剤
もう一つよく使われるのは、肝臓からのブドウ糖の放出を抑える薬です。 ビグアナイド系血糖降下剤と呼ばれます。 薬品名として『塩酸メトホルミン』が良く使われる薬です。SU剤が効果不十分な場合、あるいは副作用等により使用ができない場合に使用します。
膵臓の機能とは無関係に作用し、肝臓の糖新生を抑制し、解糖作用を刺激し、腸管からのブドウ糖吸収も抑制します。 ブドウ糖は肝臓にグリコーゲンとして一時貯蔵され必要に応じて血液中に放出されます。
また筋肉、脂肪へのブドウ糖取り込みも促進するなど膵臓以上に多様な作用があります。 作用機序は不明でしたが、最近AMPキナーゼを活性化するからだと発見されました。 こうれでは運動による効果を薬で得ようという事になります。
この薬は、肝臓からのブドウ糖放出を抑える薬ですが、副作用として低血糖を起こしやすいという問題点があります。 それ以外にも幹細胞内のグルコーゲンを減らさないと、吸収されたブドウ糖は脂肪酸の方に合成されるようになり、中性脂肪が増えることになります。かえって脂肪肝などが増えないか心配です。
重大な副作用として血中乳酸値の上昇による乳酸アシドーシス、胃腸症状、倦怠感、長期投与によるビタミンB12の吸収が悪くなったりします。
臨床経験の少ないインスリン抵抗性改善薬
この薬は、インスリン抵抗性の増大に伴って最近開発された薬です。 インスリンレセプターの感受性を上げる効果があるとされていますが、新しい薬ですので未知の副作用の心配もあります。 現在でも肝臓障害が指摘されています。
インスリン抵抗性の程度は、空腹時血糖値と空腹時インスリン値を四〇五で割ったインスリン抵抗指数が指標とされます。 この数値が高いほど抵抗性改善薬の適応となっています。
インスリン抵抗性改善薬のピオグチタゾンは膵臓に対するインスリン分泌促進作用はなく、動物実験において糖取り込みや代謝を亢進(こうしん)させ、肝臓でのブドウ糖新生の抑制、ブドウ糖からグリコーゲンへの合成を促進させます。
筋肉や脂肪では、筋への糖の取り込みを促進し、嫌気的・好気的糖代謝の促進によりインスリン受容体機能を改善するとされています。
この薬剤は、閣内受容体であるPPARγに結合することによって様々な遺伝子を活性化して、抵抗性を改善することが発見されました。 脂肪細胞の分化に関連し、インスリン抵抗性の原因物質をつくる、大きい脂肪細胞にアポトーシス(自死)を起こして細胞死に導くことが注目されています。
しかし、本薬剤投与により重篤な劇症肝炎が起こり、早期に適切な処置を行わない場合、死亡に至ることがあります。 黄疸が認められたら直ちに投与を中止し、肝炎の治療を行う必要があります。 また浮腫や体重増加も起こしやすいので、食事療法を厳密に併用する必要があります。
恐い糖尿病治療薬による低血糖
このように、糖尿病の治療薬には副作用が多く、中には重篤な副作用を引き起こす例も多々報告されています。 決して気楽に飲む薬ではないのです。 飲み薬を処方された患者の側が、そのことを十分に認識しているかどうかが、これから問題にされるのではないでしょうか。 特に最近は医療訴訟なども頻発しています。
最も基本的な糖尿病治療薬の問題点は、高血糖を抑えることを目的とするために、低血糖を引き起こしやすいことにあります。 高血糖は八百ミリグラムくらいになっても昏睡にはならないといわれていますが、低血糖は五〇を切ると低血糖昏睡を起こし、危なくなります。ですから薬を飲んでいる場合は、高血糖を抑えることと同時に、常に低血糖に気配りする必要があります。
薬を使う場合は、数種類の薬の中から幾つかを組み合わせて使う場合が多いようです。 最初は一種類でも、やがてその薬が効かなくなると、次の薬が処方されるというように、いくつかの薬が併用されることが普通です。
人によって効く薬と聞かない薬があり、色々試してみて、血糖値を下げる薬を見付けるという方法です。 しかし、そうまでして薬で血糖値を下げるのは何のためでしょうか。
勿論、血糖値を下げるのは合併症のリスクを下げるためです。 しかし薬には膵臓機能を回復させる働きはありませんから、一時的には血糖値を低く抑えても、必ずまた、もっと重大な膵臓機能障害による高血糖の問題が再燃してきます。
つまり、膵臓の働きを刺激するSU剤は、膵臓の更なる働き過ぎを招き、とうとうポンコツ車を壊してしまうことになります。 丁寧に乗ればまだ乗れるのに、短期間に高スピードで乱暴に走ると、残りの体力を使い切ってしまうのです。
そうなると、インスリン注射に頼るしかありません。 他の薬にも副作用が多く、SU剤やαグリコシターゼ阻害剤、ビグアナイド薬などとインスリンの併用が保険で認められていますが、実際の有効性については疫学的に証明されていません。
空腹時血糖値が二五〇ミリグラム以上、あるいは随時血糖値が三五〇ミリグラム以上となった2型糖尿病、重症の腎障害や肝障害があうときはインスリン治療が必要になるといわれます。 しかし、増殖性網膜症のあるときは急速な血糖コントロールが網膜出血をきたすので、ゆっくりとヘモグロビンA1Cを下げねばなりません。
インスリン注射は、血糖の上昇を予測して注射せねばならないので厄介です。インスリンは構造を変えることにより、即効型、中間型、持続型があります。 量が多すぎると低血糖発作に見舞われる危険がいくつもあります。
最近、開発された超即効型インスリンは食後血糖値の上昇は抑えるのですが、長期の平均値を表すヘモグロビンA1Cは必ずしもよい値になりません。 持続型インスリンは、インスリンに脂肪酸を結合させて皮下での吸収を遅くし、長時間一定量のインスリンが放出されるため血糖値を全般的に下げる効果があるとされています。
しかし、人工的に高インスリン血症をつくっているようなものです。 皮下注射はわずらわしいとサボる人もいます。 その代わりに皮膚への浸透やエアガンのように打ち込む方式、吸入式のものも開発されてきました。
インスリンは方法や種類により作用が異なるので、専門医とよく相談して慣れる費用用があります。
薬では糖尿病の進行を防げない
糖尿病の治療としてまず普通は血糖降下剤が使われ、合併症の症状があれば高脂血症薬や血圧降下剤も使われます。 しびれ等の神経症状があれば、rパルレスタットのようなアルドース還元酵素を得意的に阻害する薬が併用されるでしょう。
これは神経細胞内のソルビトールの蓄積を抑制することにより、糖尿病性末梢神経障害の自覚症状や、運動神経伝導促進の低下などの神経機能異常を改善するとされますが、血小板減少や肝・腎臓機能障害、貧血などの副作用を起こすことがあります。
大勢の糖尿病患者のカルテを見ていますと、薬では糖尿病の進行を妨げないことがはっきり見て取れます。 ほんの一時的に、二年か三年は血糖値を下げますが、確実に膵臓は弱っていきます。
薬で血糖が下がるため、高血糖症あるいは糖尿病が治ったと思い、食事と運動療法を中断したり、おろそかにするようになる人がずいぶんいます。 それほどのリスクがあるのに、一時的に血糖値を下げる必要があるのでしょうか。
私は、薬を全然飲んでいないので、薬の副作用について実際に経験したわけではないのですが、薬を飲んでいると、低血糖の問題など、いろいろやっかいなことが多いようです。命に関わる副作用もあります。 薬を飲んで血糖値が五〇ミリグラム以下になりますと、ひどい寒気を感じ、震えがくるといった症状に続いて低血糖性の昏睡が起こります。
糖尿病のコントロールは合併症を防ぐことにあります。 合併症を防ぐ試みは世界でもいくつかの臨床試験が行われています。 英国の研究では血糖を下げる以上の効果が血圧を正常範囲にすることによって得られる、という結果でした。 つまり、血圧が低い状態に保たれればまず合併症にはならない、と考えてよいでしょう。私が糖尿病と診断された時の血圧は一四〇ミリ以上の高血圧でした。 今は一二〇ミリ以下で、拡張期血圧も七〇ミリ前後です。
ですから、渡欧尿病だといわれて、これから一生糖尿病と付き合っていこうとする人は、ぜひ、まずは『食事と運動』による療法を試してほしいと思うのです。
厚生労働省による糖尿病治療のガイドラインでも、「まず始めは、十分な食事と運動による指導があって、それでも改善が見られない場合に限り、薬を処方する」となっています。
ところが、読売新聞に記事が出た後、イオいろな人が糖尿病について相談に来るようになったのですが、そのとき、「お医者さんに食事と運動の指導はされましたか」と聞いてみると、そんな指導はされたことがなく、いきなり薬を出されて、これを飲みなさいといわれた人がほとんどでした。
考えてみると、全国に医師は二〇万人いじょういても、糖尿病の専門医は三〇〇〇人しかいないので、大方の人は専門医でない医師の治療を受けている事になります。 それで、十分な知識を与えられず適切な指導もされないままに、薬が処方されている場合が多いのではないかと私は思っています。
一病息災の東洋的医学観
何でも薬で治そうというのは、西洋的な医学観であるような気がします。 つまり善悪二元論に立って、病気は何でも悪だから、薬でもってそれを根こそぎ退治しよう、一〇〇パーセント治してしまおうという考え方です。
それは実際、細菌退治などの感染症に対しては効果を発揮しました。 また、インスリンの発見のように、それまで助ける手立てのなかった患者の命を救うことさえできるようになりました。 しかし、抗生物質と耐性菌の出現はいたちごっこになっています。
私たちは西洋医学の力を信じてきたのですが、糖尿病や高血圧など、生活習慣が基となる病については、そのような西洋医学の考えでは、なかなか解決が難しいと思います。
そのような慢性病に関しては、私たち東洋人は『一病息災』の考え方を持っています。私は糖尿病を宣告される以前は、一病息災というのは病気を抱えて生きることだと、消極的なイメージをもっていたのですが、実際に高血糖と付き合う生活を送るうちに、この言葉にはもっと積極的な意味があると実感しました。
血糖値をコントロールする生活をおくっているうちに、それまであった高血圧症や高脂血症といってよい数値がみるみる改善され、全身のだダルさや疲れやすさ、肩こり、何となく気分の優れない感じなどの不定愁訴(ふていしゅうそ)が全部きれいに治ってしまったからです。
つまり、一病息災というのは、病気を抱えて生きるマイナスのイメージではなく、一つの病を見つめて自分の体をいたわることで、生活習慣を改善し、より積極的な健康を将来にわたって手に入れるというプラスのイメージで語られている言葉だと思ったのです。
そして『高血糖』を宣言されることは、まさに『一病息災』の東洋的な知恵を手に入れることと同じです。 ですから、高血糖が見つかったのは私にとってとても良かったと思っています。
この東洋の知恵は、まさに『メタボリックシンドロームとしての糖尿病』を克服する鍵になるように思えます。 考えてみると、昔もメタボリックシンドロームという現象はあったのでしょう。 どこかに病が出る場合、体の一部に症状が出ますが、体全体が何らかの原因で止んでいる場合が多いのです。
そのことを昔の人も良く知っていて、ひとつの病気をいたわることで、自分自身の体全体をいたわることができ、かえって『一病息災』で長生きできた人が多くいたので、この言葉ができたのだと思えます。
高血糖、高血圧、高脂血症、肥満など、市の四重奏・メタボリックシンドロームといわれる具合の悪い症状を、すべていっぺんに解決する知恵が、この『一病息災』の知恵なのです。
*一病息災とは
「一病息災」という言葉があります。 「無病息災」は「病気を(全く)せず元気であること」であるが、これに対して「一病息災」は「1つくらい病気があった方」が、身体に気を付けるので健康でいられる、長生きできる」といった意味である。
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