政府は2025年度に薬価(薬の公定価格)を引き下げ、医療費を2500億円前後削減する方針だ。国費の抑制効果は約600億円を見込む。
引き下げ対象の品目が特許切れ薬などで多くなる仕組みにし、創薬の支援と社会保障費の伸び抑制の両立を狙う。20日にも改定範囲を固める。
25年度の薬価改定は2年に1度の診療報酬改定の間の年に実施する「中間年改定」にあたる。この改定では医療機関や薬局による医薬品の仕入れ価格と、薬価との乖離(かいり)率が大きいものを対象とする。
厚生労働省によると、24年9月時点の全医薬品の平均乖離率は約5.2%だった。
25年度改定では、医薬品の種類によって、薬価の引き下げ対象となる条件に差を付ける。長期収載品と呼ぶ特許切れの新薬では乖離率の「0.5倍」超えを条件とする。
一方、革新的な新薬については平均乖離率を超えることを条件にし、該当品目数を抑える。
政府は中間年改定を21年度に開始し、25年度は3回目となる。これまでは全医薬品の平均乖離率の「0.625倍」の超える乖離率の品目を一律に対象とした。
この場合は医療費の削減効果が大きい半面、新薬などが対象になりやすく、製薬会社の研究開発意欲が減退しかねないとの指摘があった。
25年度の薬価は製薬会社などの指摘を反映し、柔軟な設計にする方向だ。医療費の削減効果は従来よりも落ちる。21年度は予算ベースで約4300億円、23年度は約3100億円だった。
25年度の薬価改定では新薬と同成分で価格が低い後発薬(ジェネリック医薬品)についても、対象を革新的新薬と同様に「平均超え」とする。後発薬を巡っては供給不安が約4年続く。薬価が急激に下がり、メーカー側が採算を確保しにくいことが要因との声がある。
25年度には物価高に配慮し、錠剤や注射剤などの区分ごとに薬価の下限を定める「最低薬価」を引き上げる。
消費増税に伴う対応を除いて、2000年度以降で初の引き上げとなる。医療上の必要性が高いものの採算が確保しにくい品目の薬価の特例的引き上げも実施する。
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後発医薬品については薬価が急激に下がることも問題ですが、それ以上に絶対額が低いことが問題で、採算が取れずに撤退する企業もありました。
最低薬価の引き上げは(どの程度になるかまだ分からないとはいえ)、後発品メーカーの再編と共に医薬品供給の安定化に寄与すると思います。