風に吹かれて旅ごころ

はんなり旅を楽しむはずが、気づけばいつも珍道中。

初夏の瀬戸内・岡高エリア 3-1(高松、直島)

2019-08-28 | 四国

2日目からの続きです。


● 朝からうどん

3日目は朝からいい天気。海を渡って島に行く日なので、うれしくなります。
朝食をゆっくりいただきます。
ほかの宿泊客が「うどんバイキングなんて贅沢すぎるね」と話していました。



この日もうどんを2杯。ふつうのうどんと味噌汁うどんをセルフで作ります。
アメリカのホテルに滞在した時には、自分でワッフルを焼き、生クリームを載せてチョコレートソースをかけて、朝からこってりと食べていました。
同じセルフスタイルでも、ヘルシーさがかなり違います。


味噌汁うどん、気に入りました。
香川の若竹ご飯と並んで、うどんのつゆをご飯にかけた「うどんご飯」なるものもありました。
ごはんにうどんつゆをかけてみたり、味噌汁にうどんを入れてみたり、こちらの人のうどん愛の強さに窒息しそう!

● レンタサイクル

天気がいい日なので、食後ひと休みしてから、ホテルでレンタサイクルをして、辺りをひとっ走りしました。
自転車だと行動範囲も広がります。といっても、高松港は港の辺りに見どころが集中しているので、やっぱりウォーターフロントへ向かいました。


昨日乗った、ことでんの高松築港駅
天気がいいと、お城や石垣もよく映えます。

● 瀬戸内の港

フェリー乗り場に行きました。
カラフルな彫刻インスタレーションが立っています。これも瀬戸内アートでしょうか。
私にはトーテムポールかこけしのように見えますが、こけし慣れ(?)していない四国の人は、おそらくそうは思わないことでしょう。


「Liminal Air- core- 」大巻伸嗣


男木島・女木島行きフェリーが停まっています。
桃太郎が渡った鬼ヶ島だといわれるところです。
時間がもう少しあったら、このふたつの島も訪れたかったんですが、また次の機会に!


そういえば、桃太郎って家来にした動物たちと一緒に、鬼ヶ島へ向かったんですよね。
当時はフェリーなんてなかったわけですし、小舟で行ったと思われますが、だれが漕いだんでしょう?
動物たちが櫂を扱えるわけもないので、やっぱり桃太郎が自分で漕いでいったのかしら?


大きなフェリーも停泊中でした。
これから乗る直島行きのチケット売場の場所を確認して、人が行き来する港の景色をぼんやり眺めていたら、けっこう時間がたっていました。
急いでホテルに戻って自転車を返し、チェックアウトして、再び港へ向かいます。

JR高松駅前には、1両のみの車両が停まっていました。
ちんまりとして、かわいい!


● 高速船とフェリー

先ほどの直島行きチケット売り場に行きましたが、窓口が開いておらず、チケットを買うことができません。
でも、フェリーの時間はせまりつつあります。
(なぜ?どうして買えないの?)とあせり、一人でわたわたしましたが、ふと、これは高速船のチケット売場ではないかと思い至ります。
そこからフェリー乗り場までは5分ほど歩かなくてはいけないため、(フェリーのチケットはもっと乗り場の近くで売っているはず)と推理。

乗り場の方に行ってみると、果たしてすぐそばに、フェリーのチケット売り場がありました。
ああよかった。でもわかりにくくて、一瞬青ざめましたよ。
高速船とフェリーのチケット売り場はもっと近くても良さそうに思いますが、逆に混乱するのかな。


これに乗ります

乗り遅れるかと焦って、全荷物をしょって埠頭をダッシュしましたが、なんとか問題なく、時間前に乗船。
出航までまだ余裕があったので、フェリー内を探検します。

土曜日に乗った小豆島行きフェリーはそこそこ混んでいましたが、このフェリー内はガラガラ。
なぜだろう?と思ったら、今日は月曜日だからですね。

席に腰を下ろしてバッグをおろしたときに気がつきました。
ぐるりと開くファスナーポケットがほとんど開いていたことを。
そこにパスケースやiPhoneを入れていたので、息を呑みましたが、なにも落ちずにいたようです。
気をつけないといけません。

船の出航の時には「ボー!」と汽笛が鳴って、桟橋にいる人がワーワーと手を振りながら追いかけるイメージですが、実際には静かに黙って出るんですね。
気がついたら、船は水の上を滑り出していました。

● 船上にて

フェリーは高松港を出発します。ゆっくりと小さくなっていく港の景色。
海風を顔に受けながら、朝からセンチメンタルな気分になります。


さようなら~


夜に訪れた時には光が灯っていた、赤い灯台、通称「せとしるべ」。
世界初のガラスでできた灯台で、高松港名物なんだそうです。


瀬戸内地方では、気がつくと不思議なアートがそばにあります。
フェリーの中にも、モダンアート的ななにかがありました。
とけていくのか、形になっていくのか?


高松を離れた時にはセンチメンタルになりましたが、港を出て瀬戸内海に入ると、小さな島がポコポコ見えて、寂しくなくなります。
いったいこの海には、いくつの島があるのかしら。


海上保安庁の調査だと、外周が0.1Km以上の島の数は727あるそうです。
→ 
瀬戸内海には島がいくつあるかな (海上保安庁 海洋情報部)
多い!!

● 珍客あらわる

フェリーから海を眺めていると、ふいに目の前をなにか影が横切りました。
ひらひらと飛んでいくそれを目で追っていると、近くに留まりました。
それは、蛾でした。


右下にとまった茶色い影

君、なぜこんなところにいるの?
もうフェリーは陸から遠く離れ、今は海の真ん中です。
人間と同じように、港に停泊中に乗り込んできたのでしょうか。


アップ

小さくて華奢な蝶や蛾にしてみれば、ここは途方もない大海原。
羽を休める場所もないし、栄養をもらう花も咲いていません。
なぜここに来てしまったの…?
蛾はしばらく動きませんでしたが、私の熱烈な視線を感じたのか、やがてまたヒラヒラと飛んでいきました。

船が港に着くまで、休んでいけばいいのに・・・。
強い海風にあおられて、思わぬ場所に飛ばされてしまうこともあるでしょう。
近くを通るほかのフェリーに、またとまれればいいけれど。


普段、蝶や蛾はひらひらと優雅に飛んでいますが、海の上ともなると一気にハードボイルド感が増します。
かよわい羽根には大変すぎる場所ですが、陸に着くまでがんばって生き抜いてほしいなあ。
しばらく、蛾のことを考えていました。


● 直島の赤いカボチャ

ほどなくして直島の宮浦港に到着。周囲16km、人口約3,100人の小さな島ですが、最近では瀬戸内アートの拠点として有名です。
桟橋の先に草間弥生の赤いカボチャがあり、来島者を出迎えてくれます。
彼女のイメージもあいまって、お菓子の家の魔女の「よく来たね~、ククク」という声がどこからか聞こえてくるような気もします。


草間彌生 「赤かぼちゃ


絶大な人気がある彼女のアートは、とにかく強烈で鮮烈。
でも、意外なほどにしっくりと島の光景にとけ込んでいます。
中に入れるので入ってみました。


赤かぼちゃの中


黒い水玉部分はいくつかくりぬかれており、中に入れます。
雨が降ったら吹き込んでくるので、雨宿りには不向きですが、なかなか風通しがいいです。


赤かぼちゃから眺めた外の景色


かくれんぼをするにはよさそうですね。
ほかにも、巨大な氷の塊のようなオブジェがありました。
ステンレスメッシュで作られているそうです。


藤本壮介「直島パヴィリオン」

港から、ツツジ荘行きの村営バスに乗ります。
ほかの乗客はほとんど外国人。みんなアート好きなのかしら。
島内にはいくつもアートスポットがありますが、瀬戸内国際芸術祭の会期中ではない今は、地中海美術館しか開いていないとのこと。
ベネッセミュージアムもお休みだそうです。

さらに、ツツジ荘から地中海美術館へ行くシャトルバスもお休みとのこと。
急いで決めた旅だったので、ここまでアートプロジェクトがお休みとは思いませんでした。
でも、町の中にもアートオブジェはたくさんありますからね。

● 直島の黄色いカボチャ

終点のツツジ荘でバスを下りて、目の前の海岸を散策します。
この波止場には、草間彌生の黄色いカボチャがおいてあり、こちらも大人気。
色を合わせた黄色いTシャツ姿の女性が、時間をかけて何パターンも何パターンもポーズを取っています。
撮影仲間との会話から、韓国か中国の人のようです。
アジアの人は写真にこだわりますからね。


草間彌生『南瓜』

ゆっくりの島時間なので、イライラするつもりもなく、撮影が終わるまでゆっくり見守る姿勢をとりますが、周りに10人以上の人たちが待っていても、まったく気にせずポーズを取り続ける彼女たちはすごい強心臓。
結局、しびれを切らした日本人のティーンズ2人が、隙を見て切り込み部隊となり、流れを変えました。
そう、国際社会は競争だから、我が国もタフにがんばらないといけませんね。


これも、写真で見たときには(うわっ、どぎつい!邪悪!)と思いましたが(失礼)、実際には素朴な浜辺に、いい感じにマッチしています。
現代アートってすごいですね。
個性の特異性が強くて、なにかほかのものと合わせるのは難しそうなのに、案外うまくバランスがとれるところが。
その絶妙なマッチングがあちこちで見られるのが、ここ瀬戸内です。


別の角度から見ると、かぼちゃによりかかって海を眺めている人たちもいました。
みんなのんびり。いい場所です。

● 埋もれた鳥居

砂に埋もれた鳥居もありました。
これはアートなのか、宗教建築なのか、わかりませんが、アーティスト名がないため、実際の鳥居のようです。


鳥居の扁額には「恵美須神社」と書かれています。島民は島の漁業と海上守護の神様である恵美須を祀っているのでしょう。
災害危機管理の見方から、(鳥居が埋没したのは、火山の噴火による火山灰の体積かしら)と、周囲の自然環境が気になります。
ただ、これまでに直島で噴火が起こったことはなさそう。
とすると、浜辺に立つこの鳥居は、海流や風が運んできた砂浜の砂に埋もれていったと思われます。


今ではずいぶん低くなり、一般的女性サイズの私が、鳥居の上に手が届くほど。
次に訪れた時には、もっと沈んでいるかもしれないので、今のうちにと思ってくぐりました。
ちょっとリンボーダンス気分になりました。

鳥居には、願い石がたくさん置かれています。
普通の鳥居には、つま先立ちしてもジャンプしてもなかなかうまく置けないので、ここはいいチャンス。
私も一つ、置いてきました。


きれいな海に見とれます。普段見慣れた本州の海岸に比べて、島の浜辺は格段に美しいですね。
ここは海水浴場なので、まだ泳ぐシーズンには早いですが、すでに水着姿の外国人が泳いでいました。

● 港まで散歩

ここから本村港まで歩いて行くことにします。
先ほどバスで来る途中にあった村で、もう一つの港があるところ。
帰りは本村港からフェリーに乗ろうと思います。

沿道には花がたくさん咲いており、目を楽しませてくれます。
過疎化が進む一方でしたが、現代アートを取り入れたことで息を吹き返した直島。
観光客がたくさん訪れるため、村の人たちも「見られている」と意識するようになり、島は美化されたと聞いています。

自転車に乗った2人連れがやってきました。
2人ともはちきれそうに健康体の女性で、ふうふう音を上げながらペダルをこいでいます。
私を見て止まり、「ええと、島の人ですか?」と聞きました。
「いいえ」と答えると、「あ~」とがっかりした表情を浮かべます。
なにを知りたいかわかるので、「もうちょっと行って突き当りを右に曲がると、草間さんのカボチャがありますよ」と言いました。
「ありがとうございまーす!」
「がんばってくださーい!」

歩きながら考えます。世界的な意味で島の人かと聞かれたら、答えはイエス。
私は本州島、日本島の住民です。
ただここでは、直島の人かと聞かれたんだと、さすがにわかります。
これでイエスと答えたら、日本人全員島の人ということになりますからね。

● 直島のマンホール


マンホールを眺めていると、ちょうど農作業帰りのおばあさんが通りかかったので「このマンホールに描かれているお花は、なんでしょう?」と聞きました。
「うーん、なんだろう?」と言われたので「直島の花といったらなんですか?」と聞くと「つつじだねえ」と教えてくれました。
ということで、これはつつじですね。


直島の町の花はヤマツツジ

さらに歩いて行くと、気になる神社の入り口がありました。
そばまで行ってみましたが、ずーっと上まで続く階段が待っていたので、サックりあきらめました。
昨日の今日なので、まだ脚に疲れが残っている感覚。
長い階段を攻略するのはやめておきます~。


直島八幡神社

● 時が停まった町


さあ、海が見えてきました。暑いですが気持ちがいいです。
本村港が見えましたが、まだフェリーの時間まであるので、辺りの町を散策してみることに。
町を歩いていても、誰もいません。時が停まったような町。
町全体が、大きな眠れるアートなのかと思えるくらいです。

細道にさまよいこんでも、車通りに出ても、どこも閑散としています。
アートプロジェクト会期外に加えて月曜日なので休業というところも、けっこうあります。
どうやらいちばん静かな日に来てしまったみたい。
まあそれはそれで、非日常感たっぷりでいいですが。

その2に続きます。



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