青山美智子さんのデビュー作『木曜日にはココアを』に続く第2作目『猫のお告げは樹の下で 』を読む。
とにかく読後の安らぎと幸福感が素晴らしく、以降続けて彼女の作品を追っかけることになりました(^^)
物語はオムニバス仕立てで、現状に息詰まってる人やこじれた人が登場し、何かに引き寄せられるようにある神社を訪れます。
人気もあまりない神社だけど、境内は綺麗に掃除が行き届いており、拝殿から少し離れたところに大きな”タラヨウ”の樹があり、その横にあるベンチにみな腰掛け一息つく。
そこでふと何かの視線を感じそちらを向くと、一匹の黒い猫が目に入る。
”みくじ”と呼ばれるその猫に、登場人物たちはなにげに悩みを語りかけると、みくじはいきなり樹の周りを凄い勢いで回り始める。
何事かと驚いていると急に走るのを止めて、とん、と樹に左足をかける。
すると頭上から一枚の葉っぱがヒラヒラと落ちてくる。
拾い上げて見たその葉っぱには”ある言葉”が刻まれていた。
それは悩みを抱える人たちへの、みくじからの”お告げ”。
失恋から立ち直れない美容師の若い女性に、中学生の娘ともっと仲良く話がしたい父親や、転校してきた学校でクラスメイトとなじめない小学生など、7人が登場する。
そしてそれぞれがみくじからタラヨウの葉に書かれた”お告げ”を受け取り、7つのストーリーが展開する。
お告げを受け取った人たちは、戸惑いながらもその意味を考えることで、滞っていた現状が静かに動き出していく。
それぞれが抱える誰にでもあるだろうごく身近な悩みに、読んでいる方は自然に共感し、その先に待つ幸せの予感を感じていく。
読み進めていくうちに、自分が今抱えている悩みさえも、主人公たちと一緒に薄れていくような安らぎを感じ、柔らかな木漏れ日を受けているような心地よさに、心が温かくなっていく。
どんなに悩んでいても、自分を取り巻く状況は変わることはなく、まず自分が何かを変えなければならない。
ちょっとしたきっかけ、そしてちょっとした心の持ちようでこんなにも気分が晴れていくものなんだと感心する。
さらにこの読後の幸福感に加え、青山美智子さんの作品すべてに通じることなんだけど、オムニバスと言うことでひとりのエピソードにかかるページ数が30ページほどで、とにかく読みやすい(^^)
なんでこんなに少ないページ数で、こんなに感動的なストーリーを濃厚に描けるのか、ほんとに驚きです。
そしてそれぞれの主人公たちが、絶妙に他の話にちょこっとだけ顔を出すのも楽しいんですよねえ。
ショートストーリーでとっても読みやすく、最近元気が出ないとか、なんかほっこりしたいっていう人には超おすすめの作品です。
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