2010年の第7回本屋大賞第4位にランキングされた、三浦しをんの『神去なあなあ日常』を読む。
今回も私の中では未だにはずれのない本屋大賞にランキングされた作品を選んだ。
知らなかったんだけど、文庫本の表紙に、何やら伊藤英明やら長澤まさみの写真が載ってて、ここで初めて既に映画化されていたことを知る。
キャスティングが誰なのか、読み進めていく間になんとなくわかっていくのがちょっと楽しかった。
高校を出てからの進路も特に決まってなく、だらだらと日々を送っていた平野勇気だったが、卒業当日に突然担任から就職を決めてやったぞと告げられる。
家に帰ると母親は既に荷造りも済ませており、訳も分からないうちに送り出され、横浜から新幹線で名古屋まで、そして近鉄に乗り換え、さらに車両が1両しかないローカル線の終着駅へ。
そこで白い軽トラックに乗ってやってきた、金髪でがたいのでかい無愛想な男にそのまま乗せられ、山の奥へと続く曲りくねった細い道を約1時間走った後、集会所のような建物の前に下ろされるが・・・。
最初の数ページを読んだだけで、絶対に面白いと確信させてくれるほど、主人公がいきなりとんでもない田舎の山奥に放り込まれ、林業をやることになるというシチュエーションがいい。
読み終わった後にすぐにまた最初から読み始めてしまった。
読後の爽やかな心地よさは言うまでもなく、神去に住まう住人たちの、自然に寄り添いながらも逞しく、そして生き生きと過ごすスローライフな日々は、人として本来の姿であるような憧れすらも感じさせる程の魅力に溢れている。
そして主人公の勇気が、都会の垢をこそぎ落とすように力強く成長する姿も微笑ましいが、やはり影の主人公でもある、すべてを包み込む、神秘的なオーラをまとったような大いなる山々の荘厳さが素晴らしい。
深い森の中に静かに息ずく命や、湿った空気、木々の隙間から差し込む淡い光などが、鮮やかにイメージされ、まるで自分も同じ空間を共有しているような錯覚すら感じてしまう。
素敵な癒しがそこにある。なあなあである。
映画は見てないが、キャラクターのイメージが映画で固定されなくてつくづくよかったと、読み終わった後に感じた。
それぐらい登場人物がどの人も魅力的で、愛おしかった。
とくに荒っぽいが気が優しくて力持ち、愛すべきキャラクターのヨキは、ピタリとはまる俳優が思い浮かばなかった。
多分映画では伊藤英明が演じてるんだろうが、私はどういう訳かずっと赤井秀和がイメージされていた。
伊藤英明だとちょっと垢抜けすぎである。
それと次に読む本を探していると、なんと続編が既に単行本として出版されているのを発見した。
『神去なあなあ夜話』は本作から2年後の様子が描かれているみたいで、神去のみんなにまた会えるっていうことがただただ嬉しいね。
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