さっちゃん 空を飛ぶ

認知症で要介護5の妻との楽しい日常を 日記に書き留めたいと思います

さっちゃんはいったい誰に会いたくて、どこへ行きたいのでしょう? 僕にはまったく分かりません!

2020-02-02 23:05:46 | 幻影? 妄想?
一昨日、金曜日の夜のこと。
夕食後の8時台のいつごろからだったか、さっちゃんがしきりに訴え始めました。
「誰それのところへ行かねば」「どこそこへ行かねば」
何故か家中をうろうろと歩き回り始めました
僕にも、「あなたも一緒に来なさい」「これから行くよ」などと命令口調で言います。
もちろん、明瞭にこのように語っているかどうかは不明なのですが、そのように聞き取れます。

僕は「いったい誰に会うの?」「その人はどこにいるの?」と聞くんですが、返事はありません。
「もう夜で外は真っ暗だし、すごく寒いよ」
「誰に会いに、どこへ行くのかも分からないのに、僕は一緒になんて行かないからね」

などと、さっちゃんに冷たく言い放ちます。

さっちゃんの口調はだんだん涙ぐんでるような哀調を帯びたものに変わって来て、
僕の返答もさっちゃんに負けじと、冷静な冷淡に聞こえるような口調になってしまいます。
さっちゃんは僕の体を押したり、手を引っ張ったりして、一緒に連れ出そうとします。
この日は今年初めて冬型の気圧配置になった日で、北風も強く、気温も低くて本当に寒い日でした。
部屋着のまま外に出したら、寒さに懲りて出掛けようとは思わなくなるだろう、そんなことを考えたりもしました。
でも、それはあまりにも可哀想。
もうしばらく待てば、さっちゃんも気分が変わって布団の中にもぐり込んで静かになるだろう。
そんな風に思っていましたが、30分経っても、小1時間経っても変わりません、むしろ激しくなっていくようです。

こうなると、さっちゃんのやりたいようにやらせるしかありません。
さっちゃんにジャンパーを着せ、部屋のズボンの上から外出用のズボンも重ねて着せ、さらに大きなダウンのチョッキのようなのを着せました。
毛糸の帽子に、手袋も着せて、万全の防寒対策を施しました。

そうやって、一緒に外へ出ました。
「僕は知らないんだからね。さっちゃんが行くところへ付いて行くだけだからね」と、念押ししておきます。
さっちゃんは誰に会えばいいのか、どこへ行けばいいのかなど全然分かってはいません。
本人もそれは分かってるようで外の道路に立って、「どっちだろう?」と、いきなり悩んでいます。
僕たちの住んでいる棟を反時計回りに歩き始めました。
9時15分でした。

時々悩みながら、さっちゃんは進んで行きます。
僕はさっちゃんの2、3m後ろから付いて行きます。
団地の別の棟の駐輪場の中を抜けたり、団地の公園を通ったりしながら、ただただ進んで行きます。

団地の周囲の道路に出た時、さっちゃんがどちらへ進もうか迷ってる風な時でした。
左方向から自転車が近づいて来ました。
さっちゃん、その自転車の人に何やら話しかけました。
その自転車の人はさっちゃんとは数メートルほど離れていたにもかかわらず、
さっちゃんのさほど大きくない呼びかけの声に心を留めて、停まってくれました。

その自転車の人は中学生か高校生の女子でした。
素直で優しそうな、伸びやかな体つきの女の子。
さっちゃんは停まってくれた彼女の方に歩み寄って、何やら話しかけています。
その女の子は少し困った表情を浮かべながらも真面目に耳を傾けて聞いて、理解しようとしてくれています。
僕はそんな彼女に「認知症なんですよ」と告げます。
それでも変わらず真面目に耳を傾け続けてくれました。
長くなると本当にこんな夜に申し訳ありませんから、「もう遅いですから、お帰りになってくださいね」と言いました。
それでも彼女は耳を傾け続けてくれます。
「本当にもうこれくらいで」と、僕は急かすように彼女に言います。
やっと自転車でこの場を離れる気になってくれた彼女に、別れ際こんな風にお礼の言葉を伝えました。
「話しを聞いてくださって有難う」

思わぬ心温まる体験も出来ました。
そのせいという訳ではないでしょうが、さっちゃんも家へ戻る気分になってくれたようです。
家へ戻ると、その後のさっちゃんは穏やかでした。
9時40分。
コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 2016年の忘事録/今は自分の... | トップ | さっちゃんの1日デイサービ... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

幻影? 妄想?」カテゴリの最新記事