月の裏側〜reprise〜

捻くれ者が音楽を語ったらどうにも収拾がつかなくなった件。マニアックな作品紹介と自分自身の音楽関係の思い出話を中心に。

NO.272 映画「シド・バレット 独りぼっちの狂気」

2024-08-08 00:03:38 | 映画

いつもの映画館、今週は音楽関連の映画が集中していまして、

どれにしようか迷いましたが、やはりピンク・フロイドが好きな身としては、

この映画は見なければと思い選びました。

 

シド・バレットは、ピンク・フロイドの初期メンバーで、

グループに大きな影響を与えています。ちょうどサイケデリックのブームで、

デビュー曲の「アーノルド・レーン」や「シー・エミリー・プレイ」の

独特な曲調は、シドの色ですね。しかしながら「アーノルド・レーン」は、

女性の下着に執着している男の歌だったりで、シドの感性は

普通の人とは違っているのが分かります。

 

 

ピンク・フロイドの「夜明けの口笛吹き」は、サイケ色の強いアルバムで、

聴く人を選ぶものでしょうけれど、サイケなものが好きな自分としては、

やはり外せないですね。ただアクが強いものなので、一般受けはしないですが。

「天の支配」は好きな曲だったりします。

 

 

そんな初期のフロイドに欠かせないシドですが、やはり薬物に依存していたのは

問題でした。芸術的なセンスはあったかもしれませんが、

フェードアウトしてしまいます。この映画は、古い友人やガールフレンドまで

集めてシドについて語ってもらっています。どうでもいい様な話も

あったりしますが、ロジャー・ウォーターズやデヴィット・ギルモア、

ニック・メイソンといったフロイドのメンバーの話は貴重かと。

 

ただやはり、シドは他人とは仲良くやっていくタイプではないので、

孤独に過ごすことになります。薬物の悪影響なのか、

精神を病んでいた感もあります。伝説的な人にしては悲しい晩年です。

 

元々監督は、ピンク・フロイド等のアートワークで有名な

「ヒプノシス」のストーム・トーガソンでしたが、死去のために

ロディ・ボグワナが意思を引き継いだとの事です。

シドの事を知らない人にとっては、やや分かりにくい感じだったかも

しれませんが、少しでも興味を持ってくれる人がいればとは思います。

 

 

1969年10月25日にベルギーのモン・ド・ランクリュで行われたフェス

「Music Power & European Music Revolution」の映像では

フランク・ザッパと共演している「星空のドライブ」がありました。

なかなか強力な組み合わせだなと。

 

 

 


NO.271 芸人と侮ることなかれ

2024-08-06 08:11:50 | 音楽雑学

NO.268のコミックソング関係で色々調べてみましたが、

実は芸人の方々にも、歌や演奏が上手い人が多いんだなと感じたわけです。

昔は何も考えずに笑っていましたが、改めてみると興味深いなと。

今回は、そういった方々を取り上げてみます。

 

1.クレイジーキャッツ

クレイジーキャッツは世代ではないですが、一時期、植木等さんがブームに

なった時に色々聴く機会があったわけです。その時にはユーモラスな曲に

注目したのですが、実は楽器も上手かったりします。

こちらのコントは、今では考えられないような大胆なものですね。

 

 

 

2.植木等「スーダラ伝説」

植木さんがブームになった時は、紅白にも出場していました。

聴いている人も演奏している人も楽しくなるような曲。

こういうのを自分では求めているんだなぁと思ってみたり。

 

 

3.タモリ「THE WALTZ IN WALTZ 」

タモリさんもジャズに関しては造詣が深いですね。

真面目なジャズのアルバムも出しています。

演奏前のやり取りはユニークですが、演奏は実にいいですね。

 

 

4.内田裕也「トラブル」

内田裕也さん自身は芸人ではありませんが

都知事選の政見放送とかはウケ狙いと思う人はいるでしょうが)

裕也さんのバックで歌っているのは、大物の人達。

昔の番組では、こういう事もやっていたんですね。

 

 

5.玉川カルテット

「笑点」とかでも出演していて、笑ったりしていましたが、

久しぶりに聴いてみたら、いい声しているんだなぁと改めて思いました。

こういう芸人は、今ではもう殆ど見かけなくなりました。

 

 

6. かしまし娘

最近、立て続けにメンバーが亡くなられています。

意外と映像は少ないですね。馬鹿な事はしていますが、

しっかりと歌は聴かせてくれます。 

 

 

7.横山ホットブラザーズ

のこぎり芸はインパクトありますが、結構ミュージシャンとも共演しています。

チャーと石田長生さんの馬呆(BAHO)との共演があったのにはびっくりです。

そしてチャーは実に楽しそうに演奏していますね。

 

 

更にウルフルズのライブにもゲストで呼ばれ、大歓声で迎えられたりも。

 

 

8.テツandトモ

ジャージ姿での「なんでだろう」のワンパターンな感じですが、

結構、歌は上手かったりします。昔のニューミュージックを歌わせると、

実に様になっているというか、お世辞抜きでいいハーモニーですよ。

 

 

 

9.どぶろっく

この人たちは、芸人にしておくのが勿体ないくらいですね。

時には、ゆず顔負けのコーラスを見せてくれたり。

「神様と農夫」のMVとか、あまりに壮大でオペラかと思ったくらいです。

ただ歌詞が下ネタなので人には勧めにくいですが。

「もしかしてだけど」のこのバージョンがギリギリセーフかなと。

 

 

10.グループ魂「チャーのフェンダー」

元々は、宮藤官九郎さんが率いるコントグループ。

このグループも下ネタも多いのですが……。

この曲はチャーの断りもなく作ったかと思っていましたが、

MVには、ちゃっかりチャー本人もギターを弾いていたりします。

オマケにコントっぽい事もやっていたり。

ユーモアには寛容なチャーらしいですね。

 

 

他にも色々な芸人さんがいますが、またの機会があったらにしますか。

逆にさだまさしさんのトークみたいに、

芸人顔負けの面白いものもあったりしますので、その辺りも考えて見ますか。


NO.270 映画「トノバン 音楽家加藤和彦とその時代」

2024-08-02 07:59:40 | 映画

ここ最近の異常な暑さでやる気が削がれてしまっていました。

まだ暑い日が続いていますが、気を取り直して書いていこうかと思います。

 

公開開始からかなりの時間が経ってしまいましたが、ようやく地元でも

「トノバン」が公開されました。感想は色々な人が書いているので、

ここでは割愛させていただきます。関係者の方々のインタビューが

淡々と並べられて、時折流される映像に唸るという感じですか。

 

個人的には、初期のアシッドフォーク的なものも

取り上げてもらいたかったですが、まぁ一般的なウケはよくないと思いますし、

その辺りは仕方ないかなと思っています。

遠藤賢司さんのデビューシングルのB面の「猫が眠ってる」では、

加藤さんがタブラで参加しています。このシングルバージョンは当時、

カバーをしたりしていたジャックスの早川義夫さんも演奏に参加していますね。

(A面の「ほんとだよ」は、木田高介さんが参加)

時代を先取りし過ぎた感があるような。

 

 

アルバム「スーパー・ガス」に収録されている「児雷也冒険譚」も

アシッドフォーク的な曲ですが、この曲をメインとした2枚組は却下されて

「ぼくのそばへおいでよ」となったわけです。

 

 

サディスティック・ミカ・バンドも最初は評価されてなかったですが、

大物プロデューサーのクリス・トーマスと関わる事で

評価もされていくわけです。(解散の原因ともなりますが)

ミカさんのボーカルは、好みが分かれる感じかなと。

「塀までひとっとび」で聞き比べてみます。

 

 

映画では、再結成のサディスティックミカバンドは触れられてなかったですね。

自分自身は再結成の方もあまり聴いてなかったので、聴きたかったなと。

映画で使われた演奏でもインパクトあったのが、高中正義さんですね。

 

 

個人的に思ったのですが、色々な人のインタビューがありますが、

その人がどのように加藤さんと関わってきたのが

分かりづらいなとは思いましたね。加藤さんの事をよく知らずに

映画を見た人には、ちょっと不親切かなと。

つのだ☆ひろさんは、ジャックスからの付き合いがあったと思いますし、

最初の頃のサディスティック・ミカ・バンドのドラマーでしたし、

泉谷しげるさんは、「春夏秋冬」とか「80のバラッド」とかの

プロデュースをやってもらったといった関りがあるし、

坂崎幸之助さんは、復活フォークルとか和幸とかでの関りが強かったのに、

その辺りも触れてないのはどうかとは思いました。

そして安井かずみさんとの事も淡白だったなと思ってみたり。

加藤さんと安井さんとのコンビの曲は、いい曲が沢山あるのに、

もっと紹介してほしかったとは思います。

有名なのが竹内まりやさんの「不思議なピーチパイ」ですが、

何故か印象に残っていた、伊藤つかささんの「夕暮れ物語」とか

「劇場版・超時空要塞マクロス」で使用されていた飯島真理さんの

「愛おぼえていますか」もこのコンビの曲とは知りませんでした。

この曲は、後の「マクロス」のシリーズでも何度となく使われていて、

アニメファンにも思い入れがある人が多い名曲ですね。

確かに映画の中では、20代半ばでロールスロイスを購入したエピソードも

紹介されていましたが、もっと上手くまとめられたらなぁとは思いました。

 

 

 

多少は不満が残る部分もありましたが、加藤さんの事をもっとよく調べようと

思うきっかけとなりました。加藤さんの再評価に繋がる事にもなりましたので、

有意義な映画だと自分では思っています。