月の裏側〜reprise〜

捻くれ者が音楽を語ったらどうにも収拾がつかなくなった件。マニアックな作品紹介と自分自身の音楽関係の思い出話を中心に。

NO.152 J.A.シーザー「J.A.シーザーリサイタル 荒野より」

2023-05-19 00:31:56 | J.Aシーザー、天井桟敷関連

某ディスクユニオンのHPを見ていたら、万有引力のベスト盤CDが

久しぶりに発売されるとの記事を見つけました。

【予約情報】J.A.シーザーによる劇団“演劇実験室◎万有引力◎”のベスト盤CD第4弾がリリース決定

2014年から17年にかけて上演された演劇からのセレクトですが、

この時期は全く見に行くことが出来なかったので、「身毒丸」、「奴婢訓」、

「レミング」といった重要な演劇を生で見れてないんですよね。

劇中で使用された音楽だけでも聴きたいので、買うつもりです。

(なお、アジアンクラックの通販サイトではすでに購入可能です。

VOL5についてもすでに製作中だとか)

「身毒丸」についてはDVDを購入してますね。(NO.19参照) 

 

そういえば、シーザー関連の記事って暫く書いていないなぁと思っていたら、

前回書いたのが、もう1年以上前になるのですね。

という事で久しぶりにCDを探してみました。今回もライブ音源です。

前回紹介したNO.38のライブから4年後、場所は同じ新宿FACEでの

ライブ音源となります。2016年5月3日4日に行われたライブから

選ばれた37曲を収録した2枚組で、音質にも拘っているものです。

 

ライブ復活してからは、一つの合唱曲をメインテーマに

5~6部程度に構成され、最後にメインテーマの合唱曲を演奏して

終了するというパターンが定着した感じですね。

2012年は「山に上りて告げよ」、2013年は「大鳥の来る日」、

そして今回の2016年は、「荒野より」。

これは、「ある家族の血の起源」という1973年にイランで

初演が行われた演劇のラストに演奏された曲です。

 

第1部は「少女革命ウテナ」に使用された合唱曲から。

NO.20で紹介した劇場版の曲からの収録です。残念ながら、

声優の榊原ゆいさんがボーカルをとった曲はカットされています。

第2部は「ある家族の血の起源」に使用されている曲からセレクト。

演劇風の 演出だったとの事。

第3部はシーザー名曲集。ここでようやくシーザーの歌声が堪能出来ます。

日替わりで色々な曲を歌っています。

シーザー自身、歌はいい味を出しているのですが、

あまり歌いたがらないですね。何か勿体ないです。

「ソドムの杉天牛」とかカッコいい曲だと思いますよ。

 

 

第4部は「歌姫絶唱」。女性アーチストがシーザーの曲を歌っています。

第5部は「シーザー アラビア思ふ名曲集」。イラン公演前後に

作られた曲を中心に集められています。シルクロード、アラビアを思わせる

エキゾチックな曲ですね。

そして最後の第6部は「荒野より」。毎回ラストを飾る合唱曲は、

メインテーマになるだけのインパクトのある曲ですね。この曲も圧巻です。

 

聴く人を圧倒するような曲が多いので、確かに聴く人を選ぶかもしれませんが、

一度ハマったら迷宮から抜け出せなくなるような、

そんな魅力に溢れていると思っています。


NO. 38 J.A.シーザー「山に上りて告げよ」

2022-05-03 22:22:43 | J.Aシーザー、天井桟敷関連

丁度10年前の今日、J.A.シーザーがほぼ30年ぶりの単独ライブを

新宿FACE(元リキッドルーム)にて開催しました。

寺山修司さんが亡くなってから、シーザーは自分で歌うことを封印し、

自ら結成した劇団万有引力での楽曲を中心にしており、

裏方での演奏に徹していました。

遂に封印が解除されるという事で、自分も無理して上京して

ライブを見に行きました。

 

ついにシーザーが歌うという事で、会場は満員。

アニメ「少女革命ウテナ」から入ったであろう若い人も多くいたような

記憶もあります。当然ながら、天井桟敷からのファンであろう

年を召した人達も…。

 

コンサートは5部構成で、まずはウテナ関係の楽曲を万有引力の女性陣や

声優の小見川千明さんらが担当。

それが終わるといよいよシーザーがボーカルをとるオリジナル曲を。

「国境巡礼歌」で聴かせてくれたような渋い歌声を聴かせてくれました。

3部は80年代以降の曲をゲストのボーカルで、

4部はもう一度シーザー自身の歌唱による曲、

そして最後は「東京巡礼歌」と「山に上りて告げよ」で締めくくりました。

国境巡礼歌・完全盤」で聴いて鳥肌がたった「山に上りて告げよ」を

生で聴く事が出来て再び鳥肌がたったのを覚えています。

 

このアルバムは、このライブでのシーザーの歌唱パート全曲と

最後の「山に上りて告げよ」で構成されています。

当日の映像の一部を収めたDVDも付属してますが、

ボーナス的な扱いですね。

2時間半近くにわたる当日のライブの全曲を収めてないのは

残念ですが、記録に残っただけでもよしとしないとな。

残念ながらお亡くなりになった70年代にバンドのギタリストだった

森岳史さんが演奏しているのもポイントが高いです。

森さんがシーザーの元を離れたのもシーザーが歌を封印した要因とも

言われているだけに、大きい存在だったのかと。

 

実は、この時のライブは5月3日と4日に2日間開催されていて、

4日のライブは、3日に演奏しなかった曲も多数演奏されたと後に知りました。

仕事の都合(後、予算の都合)もあり4日のは見れませんでしたが、

当然ながら後悔することになります。

その後もシーザーのライブは何度か開催されましたが、

いずれも仕事の都合がつかず、見ることは叶わず。

コロナ過が過ぎてまたライブを見ることが出来ればいいなと、切に願います。


NO.20 J.A.シーザー「薔薇卵蘇生録ソフィア」

2022-03-11 18:22:39 | J.Aシーザー、天井桟敷関連

97年に放送された「少女革命ウテナ」というアニメに

シーザーの曲が使用された事により、

世界中のアニメファンに衝撃を与える事になりました。

「セーラームーン」シリーズの監督をしていた幾原邦彦さんがシーザーのファンであり、

アニメに使いたいと打診がありましたが、シーザーも心よく楽曲を提供してくれました。

「ウテナ」の独特であくの強い世界観とシーザーの世界観が相性が良かったため、

元々、シーザーの率いる劇団万有引力の演劇で使われていた合唱曲ですが、

「ウテナ」の決闘シーンにて使われていても違和感もなく、

非常に馴染んでいたのが印象的でした。

(編曲はアニメの中盤までは光宗信吉さんが担当していましたが)

 

99年に劇場版のアニメが公開されましたが、それに先駆けて合唱曲集が発売されました。

それが「薔薇卵蘇生録ソフィア」です。

アニメ本編では、シーザーの書き下ろしの曲はありませんでしたが、

このアルバムは全て劇場版用に書き下ろされた曲ばかりです。

実質、シーザーの新作アルバムといってもいいものですね

この手のアルバムは、やっつけ仕事になりがちですが、

このアルバムはインスト1曲(冒頭のこの曲は重さがありながら非常にカッコいい曲です)

合唱曲12曲、70分を超える大作で気合が入った作品ですね。

どの曲もクオリティも高く、聴きごたえがありますが、

聴く人を選ぶのは間違いないです。

もっとも「ウテナ」もクセが強い作品なので、人によって評価が分かれるでしょう。

 

(4) Yomigaere! Mukyuu no Rekishi "Chuusei" yo - la fillette révolutionnaire UTENA (OST 7) - YouTube

 

シーザーの「ウテナ」の合唱曲に関しては、「わたし革命ファルサリア」という

CDに音質が向上したものが収録されていますので、

もし探すのであれば、「起源譜」、「変身譜」の2種類ありますが、

こちらが入手しやすいかと。

なお、2000年代に入ってから、「ウテナ」の世界をベースにしたアルバムも

発売されています。更にクセの強い世界になってますが。

 

とりあえず、シーザーに関しては一段落つけますね。

いずれシーザーのライブ音源の作品のレヴューをするかと思いますが。

 


NO. 19  説教師の主題による見世物オペラ「身毒丸」

2022-03-05 00:50:24 | J.Aシーザー、天井桟敷関連

寄り道をしてきましたが、ようやく探していた資料も見つかり記事に出来ました。

天井桟敷の屈指の傑作と言われてきたのが「身毒丸」です。

後年になって、武田真治さんや藤原竜也さんの主演での舞台化もしていますので、

名前だけは知っている人もいるとは思います。

「お母さん、もういちどぼくをにんしんしてください」

この台詞が流れるCMを見たこともありますが、見た人は唖然としたかもですね。

ただ「身毒丸」という演劇は、寺山修司さんがシーザーの音楽のために作った

演劇とも聞いていますので、やはりシーザーが音楽を担当したものを見たいです。

 

幸いに「身毒丸」に関しては、レコードだけでなく天井桟敷による映像が残されていて、

ビデオも発売されていました。多分DVD化はしてないと思います。

 

 

まあ内容的に再発は難しいかもしれません。

「身毒丸」は、中世の説教節「しんとく丸」をベースに、母と子の愛憎、「家」、「家族」の問題等を

織り交ぜ、シーザーの抒情的というか、時には呪術的で狂気に満ちた音楽で人を圧倒していきます。

劇場中心には見世物小屋が設置され、周りには大編成のバンドがありオペラを盛り上げます。

見世物小屋という概念は、令和の世の中では肩身が狭いかもしれません。

さらに籟病の台詞もあり、オリジナルの台本での再演は難しいだろうと思っていました。

(現在はハンセン病での表記。昔はかかると隔離されていましたが、現在は治療可能です。

しかしながら差別意識は残っているようです。)

 

そんな中、満を持してシーザー率いる劇団、万有引力により2017年3月に

オリジナル台本にて蘇りました。天井桟敷にも引けを取らない圧巻の演劇です。

今回も音源は残されていて、後日発見された天井桟敷版の完全盤音源とともに

BOXでの発売もされました。

 

 

さらに、カメラ10台を使用して撮影された映像もノーカットで収録しているDVDと

台詞を再録して再構築したラジオドラマ風のCDのセットも発売されています。

 

 

いずれも現在入手困難なのが残念です。YouTubeには、DVDの予告編であれば時間はわずかですがあります。

 

(28) J・A・シーザー 光来復活した大歌劇 『身毒丸』予告編 - YouTube

 

もし共感できるなら探してみてください。大半の人は拒否反応をするかもですが。

残念ながら、自分の拙い文章力では、シーザーの魅力を伝えきれませんでした。

時間かけてもまるで纏まらないです。

万有引力の公演を生で観れなかったのが残念です。生で迫力のある演劇が観れたら、

もっと強い印象が残ったと思います。「身毒丸」は一区切りついたという事なので、

生で見る機会はもう無いのかもしれませんね。

 


NO.14 天井桟敷 呪術音楽劇「邪宗門」

2022-02-16 01:24:09 | J.Aシーザー、天井桟敷関連

1993年頃ですか、ある音楽誌のCD紹介の小さな記事として

見つけたのがこの「邪宗門」です。

初めて聴いたシーザーの音楽であり、天井桟敷の演劇の音源でした。

小さな店では取り扱いがないと思い、大きめのレコード屋に

探しに行った記憶があります。

 

天井桟敷の演劇である「邪宗門」は、まずヨーロッパにて公演が行われ

1972年の1月に渋谷公会堂にて1回限りの凱旋公演として

行われたものです。

「革命の演劇でなく演劇の革命を」という事で、

最後には黒子に支配されていた役者もすべてを投げ出し崩壊していく、

血生臭い演劇であり、当時は御詠歌ロックと言われたシーザーの音楽が

全編に響き渡っています。

寺山修司さんによる演出で、黒子が客を煽ったりして

危険な空気の漂う中の公演だったとの事。

実際に乱闘による中断もあったといいますし、

寺山さんは、ドスを隠し持って演劇に臨んだとの逸話もあります。

まあ入手した当時は、えらいものを聴いてしまったという思いがありましたが、

それ以降、シーザー関連の音源を探し続けることになりました。

万人向けではない「邪宗門」ですが、覚悟のある人は聴いてみてください。

 

なお後年、CDブックという形ですが、シーザー所有のテープから

編集された別音源も発売されています。

 

 

ビクター盤アルバムには収録されなかった三上寛さんの熱唱も収録された

より完全に近い盤になります。

(三上さんの歌詞には放送禁止な四文字もあったりして流石に当時は収録が厳しいかと)

音質的にやや劣る部分もあるので一長一短ですが、

興味があれば出来れば両方聴いてもらいたいところです。

とはいえ、オリジナルのビクターのアナログ盤は帯付き備品なら6桁価格、

高品質CDの紙ジャケでも再発されてますが、それも入手困難、

CDブックもまた然り也。う~む。