月の裏側〜reprise〜

捻くれ者が音楽を語ったらどうにも収拾がつかなくなった件。マニアックな作品紹介と自分自身の音楽関係の思い出話を中心に。

NO.277 PANTA&HAL「マラッカ」

2024-08-31 20:26:21 | 頭脳警察、PANTA関連

8月に入ってから、ちょっとしたきっかけでPANTA関連のアルバムのレヴューを

書いていました。「KISS」以降のレヴューは殆ど書いていなかったので、

丁度いい機会かなと。こちらの方は疎かになってしまいました。

PANTA、頭脳警察関連の記事は、少しづつ手直ししていこうかなと思います。

まずはPANTA&HALの「マラッカ」からです。

 

やはりバンドでの活動をしたいと思ったPANTAは、PANTA&HALを結成します。メッセージ性だけでなく音楽性も重視するという構想のもとで、PANTAもメンバーの一員として活動するというコンセプトでした。頭脳警察やソロのようにワンマンな形は取りませんでした。

 最初のきっかけは、フライングドッグのレーベルを経営する立場の高垣健さん。後にサザンオールスターズを世に送る事になる人物です。そこから紹介されたのが、ギターの佐藤宣彦さん。(この人も後にジギーやリンドバーグをプロデュースします)その友人関係でドラムの浜田文夫さん、ベースの村上元二さん、そしてギターの今剛さんが集まり、最初のHALが結成されます。しかし佐藤さんはすぐ脱退し、代わりに平井光一さんが合流し、『マラッカ』のレコーディングメンバーが揃います。今までの中で一番の実力者が集まったと思いますが、暫くの間は、ライブとリハーサルに専念します。実力のあるメンバーにバックを任せられて、PANTAは随分余裕が出来たと語っています。

『マラッカ』を製作するにあたり、サウンド・プロデューサーを立てる事になりました。今まではそういう事は考えてなかったようです。そして白羽の矢が立ったのが、ムーン・ライダースの鈴木慶一さんです。PANTAとはっぴいえんどは、ある時のいざこざで仲が悪いとされ、はっぴいえんど派とされる鈴木さんと上手くいくのかという声があったのですが、話してみるとすぐに打ち解けたようです。その時は、PANTAのロック葬で別れの挨拶を任される程の付き合いになろうとは思わなかったでしょうね。

『マラッカ』のテーマは『オイルロード』。マレー半島とスマトラ島を隔てているマラッカ海峡は、巨大なタンカーが通過する重要な地点。赤道直下の南国という事でサンバのリズムが使われています。そこまで深い意味はないようですが。タイトル曲の『マラッカ』は、ライブで歌われたら大合唱となる人気曲です。因みにアルバム発売の辺りで第2次オイルショックが起こっていたとか。ここでも時代とシンクロしていますね。

 

 

 

 続く『つれなのふりや』は、古の和歌をタイトルにしたものです。そしてこちらはレゲエのリズムで歌われます。これもライブでは人気曲ですね。

 

 

 そしてPANTAのバラードの中でも人気の高い『裸にされた街』。荒川少年少女合唱団が歌うコーラスは美しいです。まるでレクイエムのようです。

 

 

 それ以外にもミスなしで演奏するのが難しい難曲の『ネフードの風』、亡くなったTレックスのマーク・ボランに捧げた曲の『極楽鳥』等、捨て曲のない名作アルバムですね。レコーディングには3か月をかけ、実験的な試みを続け、挙句の果てに鈴木慶一さんは胃潰瘍になったといいます。実力のあるメンバーが一致団結して作り上げたこのアルバムは、確実に日本のロックの名盤の一つに数えられます。

 

 余談ですが、この『マラッカ』のプロデューサーの候補には、あの坂本龍一さんの名前も上がっていたそうです。しかしながら打ち合わせの段階で、ナショナリズムへと向かうのではないかと思われ、実現はしませんでした。もしも実現していたら、どんなアルバムになっていたのでしょうね。

 

 そして『つれなのふりや』は、作家の五木寛之さんが気に入ってくれて、自分の全集のCMにこの曲を使ったという事です。また五木さんは、PANTAの自伝『歴史からとびだせ』の最初の発売時の帯文も書いてくれています。

 

 ギターの今剛さんは、アルバム1枚でHALを去る事になりますが、やはりフュージョンをやりたかったのでしょう。『AGATHA』を松原正樹さんと演奏しているライブは素晴らしい出来です。

 

 

 また今剛さんは、色々な方のバンドに参加していますが、井上陽水さんのバックでも演奏していました。ギターソロのインパクトが凄いです。

 

 

 そして大ヒットした寺尾聡さんの『ルビーの指輪』でギターを弾いているのも今剛さんです。今更思うに、凄い人たちが集まっていたんだなと。

 

 


NO.276 「1968京都フォーク・キャンプ」 

2024-08-22 08:26:20 | 日本のフォーク

加藤和彦さんのドキュメント映画「トノバン」は見れて良かったです。

ドキュメント映画にしては、上映館数も多かったみたいですし。

こんな感じの対談番組もYoutubeで見る事が出来ます。

 

 

自分自身、加藤さんの主要なアルバムを持っていなかったなと

今更ながら思いました。70年代初期のサディスティック・ミカ・バンド

以前のニューロックに近づいていた時期のアルバムである、

「ぼくのそばにおいでよ」とか「スーパー・ガス」も購入していなかったなと。

気が付いたら廃盤状態でしたし、再発にも気が付かない失態でした。

(後日、いつの間にかCDが入手可能になっていましたので、購入しましたが)

とりあえず、加藤さん関係で持っているのがあるかなと探してみたら

こういうのも持っていたなというのが出てきました。

 

 

「ロック画報16号」のフォーク・クルセイダーズ特集。

久しぶりに目を通してみました。一応、2000年代の復活フォークルまで

フォローはしてあります。そして1967年10月1日の京都府立勤労会館の

ライブ音源4曲の入ったサンプラーCDが付属してあります。

(時間的には短いですが)

それと関連メンバーのディスクガイドはありがたいです。ソロとかは

分からない部分も多いですしね。

 

そんな中で、更にこういうのも持っていたなぁと思ったのが、

「京都フォークキャンプ」の音源。加藤さん関連で紹介しようと思っていて、

どうまとめようかと思っていた時に、高石ともやさんの訃報がありました。

そんなこともあり、高石さんとフォークルも参加していた

1968年の第3回の関西フォークキャンプの音源を引っ張ってきました。

 

関西フォークキャンプは、1967年から69年にかけて

高石事務所と高石友也後援会が企画したイベントです。規模的には

大きくはないですが、(第1回、第2回は100人程度)

フォーク関連の重要な人物も参加しているため、貴重な音源ですね。

この第3回は、京都の古寺で3日間にわたり行われたものです。

貴重なのは、デビュー前の遠藤賢司さんが音源を残している事。

「ほんとだよ」は、シングル盤ともまた違うバージョンです。

高石さんはマルビナ・レイノルズのカバーと、

谷川俊太郎さんの詩に武満徹さんが曲を付けた「死んだ男の残したものは」

という曲が収録されています。

 

 

更に貴重なのはURCには参加する事のなかった南正人さんの音源が

収録されている事ですね。金延幸子さんのアルバム発売前の音源も貴重です。

杉田二郎さんと越智友嗣さんの即席デュオは、綺麗なコーラスが魅力です。

ここでは、「あなただけに」を演奏しています。

この二人は後に、はしだのりひことシューベルツに参加します。

高田渡さんは、ここで「自衛隊に入ろう」を歌って注目を浴びます。

 

 

フォーククルセダーズは、ジャックスのカバーである「からっぽの世界」、

寺山修司さんの詩の「戦争は知らない」、トラディショナルソングの

「きつねの唄」が収録されています。当時の異端児であるジャックスと

フォークルの交流は、似たような感性が呼び合った結果でしょうか。

 

からっぽの世界~戦争は知らない~きつねの唄

 

それ以外にも五つの赤い風船、西岡たかしさん関連の音源もあり、

フォークの貴重な歴史ですが、現在は入手困難です。

まともな形での再発を希望したいですね。


 

 


NO.275 高石ともやさん死去

2024-08-19 08:58:31 | 墓碑銘

またしても予期せぬ訃報が舞い込んできました。

関西フォークの旗手的存在の高石ともやさんが2024年8月17日に

亡くなられた事が発表されました。82歳でした。

高石ともやさん死去、82歳 フォーク歌手「受験生ブルース」 

 

一般的には、やはり「受験生ブルース」の方が知られていると思いますが、

想い出の赤いヤッケ」とか心に染みるようなフォークソングを歌っています。

後はベトナムの反戦歌である「坊や大きくならないで」ですか。

どちらかというと、マイケルズのバージョンの方が知られていると思いますが、

高石さんが訳を手伝っているバージョンの歌詞の方が原詞に近いといいます。

その分、血生臭さは感じるとは思いますが。

 

 

 

反戦歌を多く歌ってきた高石さんですが、バリー・マクガイアの

(オリジナルはP.F.スローン)「明日なき世界」のカバーとかは

インパクトあります。アルバムでも取り上げていますが、

ここではジャックスと共演しているライブバージョンを。

後にRCサクセションも「COVERS」で取り上げているものの元ネタですね。

 

 

そういえば、京都の夏の風物詩でもあった「宵々山コンサート」も

長く続けていましたね。確か三上寛さんが参加した時のレコードを

持っていたはずだから探してみようかなと。 

ご冥福をお祈りします。

 


NO.274 PANTAと加藤和彦さんの意外な対談

2024-08-17 01:34:17 | アラカルト

最近、調べる事が多い加藤和彦さん。そして昔からのファンであるPANTA。

この二人は交わる事はないなと思っていました。

しかしながら最近、頭脳警察の公式HPにて、

昔の二人の対談記事がアップされました。これはちょっとした驚きです。

やはり「トノバン」の映画の影響って大きいんだなと改めて思います。

自分でも加藤さんの事は意識はしてなかったんですが、

ここに来て、買っていなかったアルバムを買ったりもしましたので。

 

40年前の音楽雑誌『MUSIC STEADY』に掲載されたリレー対談。

加藤さんがPANTAを指名したそうです。(加藤さんは矢野顕子さんから指名)

当時は、PANTAが『サルベージ』を発表。加藤さんは

『あの頃、マリー・ローランサン』を発表したころです。

嘗ては頭脳警察とサディスティック・ミカ・バンドで

何度か共演はしているようですが、二人の接点はなかったと思います。

その当時に話題となったアルバムを出していたから対談させたような

感じもしますが。しかしながら、自分のやりたい事をマイペースでやるっていう

そんなところは、この二人は似ているかもしれないと思いましたね。

そして、PANTAの『KISS』、『唇にスパーク』の

次のアルバムの予定では、カバー曲を集めたものだったのですが、

これは実現しませんでした。そのアルバムのプロデュースを加藤さんに

お願いしたかもしれないっていう話は興味深かったです。

 

【復刻特別掲載】40年目の真実――加藤和彦とパンタ 40年前の幻の対談を復刻!


NO.273 『THE TIMERS 35周年祝賀記念品』発売予定

2024-08-14 01:25:39 | 発売予定

ついこの間、スペシャルエディションを買ったと思っていたのですが、

(調べてみたら発売は2016年でした)

2024年11月13日に『THE TIMERS 35周年祝賀記念品』なるものが発売予定です。

 

彼らの登場でロックの歴史は塗り替えられた!衝撃のデビューから35周年、幻の音源が発掘!

 

スペシャルエディションでは、デビュー直後の映像とか

収録されたDVDもありましたが、今回はCD3枚組で音源のみの収録のようです。

しかしながら発掘音源9曲は大きいですね。

『原発賛成音頭」や『覚醒剤音頭』はスタジオ録音なんてあるんですかね?

その辺りは興味あります。オリジナルアルバムも2024年の

リマスターバージョンのようですね。しかしながら、3CDで7700円、

LPに関しては13200円(いずれも税込み)は厳しいなぁ。

 

タイマーズに関しては頭脳警察と同じく、

時代とリンクしてしまう事があります。例えば『メルトダウン』とかは、

後の福島で「恐ろしい事になった」事とシンクロしました。

 

 

松本サリン事件の事を題材にした『サリン』とかは、

後に本当にサリンがバラ撒かれる事態が起こっってしまったので、

アルバムに収録はされる事はないでしょうね。