月の裏側〜reprise〜

捻くれ者が音楽を語ったらどうにも収拾がつかなくなった件。マニアックな作品紹介と自分自身の音楽関係の思い出話を中心に。

NO.294 「時代はサーカスの象にのって」

2025-02-05 00:32:28 | 頭脳警察、PANTA関連

2月5日は、敬愛するPANTAの誕生日だった日です。この日は、PANTA、頭脳警察に関する事を何度か書いていますが、

今年もまた書かせていただきます。今回は、PANTAの音楽人生の後半における重要な曲である

「時代はサーカスの象にのって」についてです。

 

「時代はサーカスの象にのって」は元々は、寺山修司さん主催の天井桟敷のこけら落とし公演のタイトルです。

当初は「時には母のない子のように」がヒットしていたカルメン・マキさんも出演していたそうです。

観客参加型の演劇で、1年間のロングランとなっています。

 

寺山修司さんが亡くなった後、1984年に一周忌公演として「時代はサーカスの象にのって’84」が上演されています。

なお、この時の音楽担当は、ムーンライダースの鈴木慶一さんでした。PANTAと縁の深い人が、ここでもシンクロしています。

(後年、この時のサントラがCD化されたようですが、これは未聴です)

 

その後2002年に、高取英さんが主催の月蝕歌劇団により、「時代はサーカスの象にのって2002」が上演されます。

この時の公演は、高取瑛さんが元々の天井桟敷の演劇を編集し直したものとなります。

そしてこの時の音楽を担当したのがPANTAだったわけです。「時代はサーカスの象にのって」の曲は、最初は、

この時の演劇用の曲として作られたのでした。元々は色々な所に散らばっていた詩を、高取英さんが編纂し、一部修正した感じになりますね。

作詞に寺山修司、高取英となっていたのは何故かというのは、長年の疑問でした。しかしながら昔買っていたPANTAの自伝である

「歴史からとびだせ」のDVD付きの復刻版の追加のインタビューに経緯が語られていました。読んでいたと思うのですが、記憶に残っていませんでしたね。

この演劇では、月蝕歌劇団だけでなく、制服向上委員会のメンバーも参加しています。PANTAが月蝕歌劇団と、

どういった経緯で関わるようになったかはわかりません。制服向上委員会との関りも、この辺りから始まったのかもしれないですね。

制服向上委員会も、当時この曲を歌っていましたが、寺山さんの詩を若い子が歌うのは、何となく違和感を感じたりはしました。

 

 

この曲の出来が良くて、演劇だけで終わらせるのは勿体ないという事で、PANTAもライブで演奏してきたのですが、

2008年に頭脳警察としてのシングルとして発売されています。PANTAは自伝の中でヒットさせたいとは言っていましたが……。

 

 

実は、その前に映画「キャプテン・トキオ」の挿入歌として発表されていたりします。元々この映画は、頭脳警察の音楽をサントラに使用していて、

「さようなら世界夫人よ」を使う予定があったのですが、著作権の関係で難しいという事で、ならいい曲があると、PANTAが提供したものです。

ただ当時は、制服向上委員会が歌った音源しかなかったので、急遽、アコースティックギターのみで演奏したものを録音をして使用されています。

これが録音したものでは初のものとなりますね。

 

 

その後は、ライブ等でも演奏され続けていて、アルバムにも何回も収録されています。このライブアルバムでは、寺山さんの詩である「アメリカよ」を

PANTAが朗読してからの演奏となります。

 

 

頭脳警察以外でも、澤竜次さん(50周年頭脳警察のメンバーですが)とのユニットである隼での演奏もあります。

澤さんはPANTAのお気に入りだったようで、「ライブ葬」の元ネタでもある「会心の背信」でのライブにも

PANTA、トシのバックに参加してもいます。

 

 

頭脳警察最終作である「東京オオカミ」にも収録されてもいるのは、これからの世代にも歌い続ける事を願ったからでしょうか?

それはどうかはわかりませんが、これからも歌い継がれていってほしい曲であることは間違いないですね。

 

 


NO.293 マリアンヌ・フェイスフル死去

2025-02-02 00:18:23 | 墓碑銘

自分にとっての世代ではないですが、やけに印象に残っている女優、アーチストであるマリアンヌ・フェイスフルが

2025年1月30日に死去されました。78歳でした。

 

Marianne Faithfullが享年78歳で逝去

 

印象的なヒット曲は「As Tears Go By」ですね。他にも色々な曲がありますが、やはりこの曲は多くの人の心に残っていると思います。

 

 

そしてミック・ジャガーの恋人だったという事もあり、その点でも印象に残っている人が多いでしょう。

そして日本ではどちらかというと、映画「あの胸にもういちど」でアラン・ドロンと共演した時の、ライダースーツでバイクに乗る姿が、

「ルパン三世」の峰不二子のモデルになったと言われている事の方が印象深いかもしれません。

その美貌と歌声から、当時のミュージシャンにとっての女神的存在とされてきた人ですね。ご冥福をお祈りします。

 

ローリングストーンズも「As Tears Go By」をカバーしていますが、これはレアなイタリア語バージョンです。

 

 

 


NO.292 ちあきなおみ「あまぐも」

2025-02-01 00:26:32 | ニューミュージック

NO.219で、ちあきなおみさんの「ルージュ」について書いてから、もう1年以上経ってしまいました。

「あまぐも」について書くという予告はしましたが、どのようにまとめるか悩んでいるうちに、時間が経ってしまったわけです。

「ルージュ」は、中島みゆきさんや井上陽水さんといったニューミュージック系の人の作品を多く取り上げた異色作ですが、

「あまぐも」は更に異色の作品となります。A面は河島英五さん、B面は友川かずきさんの作品を取り上げています。

ジャケットはビル・エヴァンスの名盤『Waltz for Debby』のオマージュです。

そして演奏は、ゴダイゴのメンバーが参加しているというから、何とも豪華なものです。これなら名作となる事を約束されたように思えますが、

実際には、ちょっと不満が残る部分があったりします。編曲がスタイリッシュ過ぎる感があるからです。

 

 

A面の河島英五さんも、アクが強いアーチストですが、出来としては悪くないとは思います。シングルカットされたタイトル曲の「あまぐも」も

洗練された感じがいい方向に出ているとは思います。ただ、アルバムバージョンは少し大人し過ぎるかなとは思ったりもします。

シングルバージョンは、こちらになります。

 

 

因みに、河島英五さんのバージョンはこちらになります。

 

 

問題は、B面の友川かずきさんの作品ですね。友川さんの強烈なアクの部分が生かされていない感があります。

普通の曲として聴けば、決して悪くはないとは思いますが、やはり友川さん独特の個性が感じられないのがどうかなと思ってしまいます。

特にその点が顕著なのが、『夜へ急ぐ人』ですね。大人しく抑えたアレンジが勿体ないと思います。

この曲もシングルで発売されていて別バージョンですが、まだ抑えられている感じですね。

 

 

因みに友川かずきさんによる歌唱はこんな感じです。やはり迫力が違います。

 

 

結局、行きついたのは、当時ちあきさんがテレビに出演している時の映像でした。山川アナが「気持ち悪い歌ですね」と思わず言ってしまった

紅白歌合戦の時の映像は今は見れませんが、1977年のNHKの番組に出演時の映像のインパクトは凄かったです。これが求めていたものだと。

ちあきさんの表情も迫力があり、レコードのものとは別物です。

 

 

これを聴いてしまうと、アルバムも全てこの路線で聴きたかったと思ってしまいます。そういった点から、非常に評価がしにくいアルバムだと思います。

余談ですが、近年NHKBSにて、ちあきさんの特番が放送されましたが、改めてちあきさんの実力の凄さを感じさせられました。

(『夜へ急ぐ人』も放送されたのは嬉しかったですね)

後年、ポルトガルの歌謡曲であるファドを歌ったものもありますが、圧倒されるような歌唱は、もっと再評価されるべきかと。

 

 

2024年には、デビュー55周年という事でシングルを含めた配信もされていますので、チェックしたい所です。