星さんぞう異文化きまぐれ雑記帳

異文化に接しての雑感を気ままに、気まぐれに

ケロウナ便り(32) いっぺこっぺCANADA

2006年09月16日 03時28分40秒 | Weblog

ケロウナの我が家から車で5分ほどのRutlandで野菜農場を経営して野菜の自家販売をされている「荻さん」と知り合いになりました。カナダへの移民が戦後再スタートした昭和42年、日本からカナダへの最初の移民としてカナダに移住されたそうです。

アメリカでの3年の農業研修を終えて鹿児島に帰ったご主人は、郷里での農業経営の限界を悟り、カナダへの移住を決意したそうですが、移住直後は当然の如く試練の連続。常に目標を立て、目標に向かって無我夢中に突き進む毎日、たゆまざる努力の積み重ね、試行錯誤の連続、まさに寝食を忘れて無我夢中に生きてきた・・・。気が付いたら、子供三人が大学も出て、カナダ人として立派に社会に貢献している・・・。

こんなドラマチックな人生の場面場面を、肩に力入れることもなく、さほどの気負いも感じさせない自然な筆の運びでさらっとエッセイ風に書き上げてあるのが、奥さん「荻ムツ子」さんの著書「いっぺこっぺCANADA」です。郷里の新聞に投稿したエッセイに加筆して単行本に仕上げたこの本は、興味尽きない内容を平易な文章で書き上げていて、一気呵成に読み進められる、荻夫妻の半生記であるとともに、格好の「ケロウナ入門書」でもあるのです。

自家販売をしている野菜屋さんの存在を知人から聞き、ある日訪れて忙しそうに接客している合間を見て一声かけたら、「あらぁ!日本のかたぁ?」と元気な第一声。こちらの自己紹介をすると「ちょっと待っててね」と店から母屋に向かって一目散に走り出しました。どうもゆっくりと歩くのが性に合わないのか、また玄関から小走りと言うよりダッシュの様な勢いで店に戻ってくるのです。そして、息を弾ませるでもなしに「これ読んでみて。恥ずかしいんだけど私が書いたの。ケロウナのことも分かるよ。」と、この本を貸してくれました。声に張りはあるし、体中からエネルギーを発散させている「元気印のおっかさん」が第一印象でした。

その昔大学時代に、鹿児島ラサール出身の友達から「今日はいっぺこっぺされもしてすったいだれもした」とか教わった鹿児島弁を何故か覚えていて、「いっぺこっぺって確か精一杯とか、一所懸命っていう意味ですよね?」と応じたから、このおっかさんの顔が輝き、「そうなのよ、私等のいっぺこっぺが一杯詰まってるの、読んでみて!」と一見の客にもかかわらず大切な本を貸し出してくれました。どこまでも「いい人」なのです、このおっかさん。

いぼいぼの沢山付いた日本のきゅうり、お日様の恵みを無駄なく蓄えた色と香り一杯の昔ながらの露地栽培トマト、ついでに庭で出来たニガウリ等々、買い物に行ったのに、「名刺代わりに今日は持っていって。次から多めにチャージするから!」と気前良く下さるではありませんか。遠慮を知らない私は「そりゃどうも」とご好意を素直に受けて喜び勇んで帰宅するやいなや、女房に報告する間ももどかしくトマトをがぶり!うまっ!期待通りのトマト本来の味そのものでした。味にコクと力があります

借りた本も実に面白く、一気に読み進みました。荻さんご夫妻は我々と同世代です。私が大学を出てサラリーマン生活を始めた昭和42年にカナダに移住して、私は昨年定年退職して、こうして遊んで歩いていますが、荻さんご夫妻は現役真っ只中。顔の色だけは私も負けませんが、なんか妙に申し訳ないような気持ちに襲われたものです。「これでいいのか星さんぞう?」。でも、人それぞれの生き方があって当たり前。自分に言い聞かせてやりました。「これでいいのだ星さんぞう!」

元気な荻ご夫妻に育てられた野菜たちもいたって元気で、本来の味・甘さ・香りが評判で、カナダ人も毎朝の開店を待って押しかけるようです。これまでスーパーで買っていた野菜のすべてを荻さんに切り替えたこと言うまでもありません。なんと言っても嬉しいのはスーパーでは売っていない日本野菜が手に入ることと女房も大喜びです。

荻さんが心込めて育てた有機野菜からの栄養補給と、勇気野菜屋おっかさんからの元気補給のため、日本からのお客様も必ずご案内するようにしています。頂き物のお土産のお裾分け持ってOgi's Vegetable Gardenを訪れるのも新しい楽しみに加わりました。

最後に、この本を読んでみたいという人は下のサイト参照をお勧めします。
http://www.keyaki-s.co.jp/new/new31.html


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1 コメント

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よかったね (amatsuo)
2006-09-24 21:51:53
いい人と知り合いになってよかったね。こんな楽しみが海外の生活にはあるんだよね。出会いの密度が濃くて、その後の付き合いもストレートで、善意にあふれた付き合いが何の照れもなく出来る。これが本当に人生の出会いという感じがするんだよね。俺もその御夫婦にあいたくなってきた。両家の付き合いに万歳!
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