12月18日の午後 亡き姉、道子が詠んだ時のような雪降り。
道子 (17歳)
昭和42年11月24日(午後)
雪が降る
もう降り止むことを忘れたかのように
しきりに雪が降る
大きくてわたのような雪が
私の髪の毛にも
上衣の上にも
首に巻いたマフラーの上にも
それもいたわるようにそっとのる
とても静かな雪降り
いつもは近くに見える山も
今は灰色の空の中に
とけて見えない
天と地の境は消えた
天にも地にも雪だけがある
空を見上げると
地上をめがけてまいおりてくる
点々とした雪が
限りない
家も木々も、この小さな花壇も
すべては白い雪に埋もれた
何げなく降りつもる雪が
かなでるリズムが
平和の姿を思わせる
この雪が冷たいなんて
きっと嘘にちがいない
こんなにやさしく降っているのに
手袋をはめた手のひらをひろげて
雪がのるのを待ってみた
雪はすぐに期待に応えてくれた
それを近くでじっと見ると
美しい六角の様々な結晶が
不規則に重なりあって
そこに自然なる美を
持っていた
ああ(そうか)
雪は冬に咲く小さな花なのね
すると私のまわりは花園
むじゃきな空想が
私を楽しくさせた
時々寒くて身震いしたけれど
こうして雪景色の中に
たたずんでいることに
とても満足していた
ふと思った
いつか写真で見たことのある
どこかの広い雪野原に
一人たたずんでみたいと
どこまでも続く白い雪
深く澄んだ空
そして遠くに青く連なる山々――
きっとあまりに美しくて
雪の中に埋もれて
眠ってみたくなるかも知れない
それとも
泣きたくなるかも知れない
私はそんな世界に
一人たたずんでみたい