「今は買う喜びが最初に来てるけど、本当はつくる喜びがないものに価値なんてないのさ」
といったことを、ホンダ社内で堂々と言う私。
ホンダには、「三つの喜び」がある。
つくる喜び
売る喜び
買う喜び
今ホームページを見ると、これが逆になっている。
買う喜びが先だ。
でもよく考えてご覧よ?
ものづくりの原点は、
「自分が納得したものだけを世に出す。納得しねぇもんを世に出すぐらいなら、オレが壊す」
という職人の世界だ。
作って満足できないものを、お客に渡すっていうことは、最大の裏切りなんだよ。
頭の中の「オヤジ」こと、本田宗一郎がそう言う。
私はホンダに入るときの(圧迫?)面接で、
「体裁を整えるような入社動機はどうでもいい。本当の入社動機は何なんだ!?」
「言いたくなかったんですが…。伯父を超えるためです」
と泣きながら言った。
伯父はアル中の父親から離れる代わりに、高校2年から大学院に入るまで、父親代わりに私を育ててくれた本田技術研究所のOBだ。
卒業(ホンダでは定年退職をこう呼ぶ)の時に伯父が自分で作ったテレフォンカードは、小さい字でみっちりと何十もの開発記号が印刷されたものだった。
その開発機種の中には、初期・第2期F1もあったし、マスキー法をクリアしたCVCCエンジンもあった。
伯父の仕事は開発だけではなく、人材教育指導にも及んだ。
元本田技研工業社長の吉野さん。
元本田技研工業副社長並びにセガ社長の入交さん。
「吉野くんは頭が良くてね」
「入交くんは変なことするんだよ。変なところにエキパイレイアウトするから、腕を大やけどしちゃったんだ(笑)」
「要領が悪くてね。ショボンとしてたから池袋でフグをおごってあげたんだ。今度連れて行ってやるよ」
そして実際に連れて行ってもらった。
入交さんのことはよく喋ってくれた。
実際手のかかる人だったようだけど、出来の悪い子供ほど可愛いものなのだろう。
伯父には娘二人いるが、男の子供がいなかったのだ。
退職後の伯父は代わりに私を見つけたのだろう。
「吉野くんが社長をやめる前に、なんとかならないかな?頼まれて文部科学省経由でオートレースの選手にエンジン工学とかバイク工学とか教えているんだよ。これが使っている教科書なんだけど、エンジン諸元とか型式とか全部訂正してあるから。相当いい加減だよ」
こんなに訂正するんなら、自分で書けばいいのにと思うぐらいだった。
ある日池袋のトヨタ展示場のアムラックスに連れて行ってもらった。
壁に展示してあったF1エンジンのモックアップモデルのシリンダー内壁をなぞり、
「触ってみてごらん。なぞるとデコボコしているだろう?人間の指先はミクロンオーダーの凹凸がわかるんだ。これは所詮モックアップだよ」
は、私の中の名言だ。
三現主義(現場現物現実)、原理原則、三つの喜びなんてことは一言も言わなかったが、その言葉を使わずにそのすべてを叩き込んでくれた。
だから私の頭の中には本田宗一郎がいる。
さて、今のホンダはどうだろう?
といったことを、ホンダ社内で堂々と言う私。
ホンダには、「三つの喜び」がある。
つくる喜び
売る喜び
買う喜び
今ホームページを見ると、これが逆になっている。
買う喜びが先だ。
でもよく考えてご覧よ?
ものづくりの原点は、
「自分が納得したものだけを世に出す。納得しねぇもんを世に出すぐらいなら、オレが壊す」
という職人の世界だ。
作って満足できないものを、お客に渡すっていうことは、最大の裏切りなんだよ。
頭の中の「オヤジ」こと、本田宗一郎がそう言う。
私はホンダに入るときの(圧迫?)面接で、
「体裁を整えるような入社動機はどうでもいい。本当の入社動機は何なんだ!?」
「言いたくなかったんですが…。伯父を超えるためです」
と泣きながら言った。
伯父はアル中の父親から離れる代わりに、高校2年から大学院に入るまで、父親代わりに私を育ててくれた本田技術研究所のOBだ。
卒業(ホンダでは定年退職をこう呼ぶ)の時に伯父が自分で作ったテレフォンカードは、小さい字でみっちりと何十もの開発記号が印刷されたものだった。
その開発機種の中には、初期・第2期F1もあったし、マスキー法をクリアしたCVCCエンジンもあった。
伯父の仕事は開発だけではなく、人材教育指導にも及んだ。
元本田技研工業社長の吉野さん。
元本田技研工業副社長並びにセガ社長の入交さん。
「吉野くんは頭が良くてね」
「入交くんは変なことするんだよ。変なところにエキパイレイアウトするから、腕を大やけどしちゃったんだ(笑)」
「要領が悪くてね。ショボンとしてたから池袋でフグをおごってあげたんだ。今度連れて行ってやるよ」
そして実際に連れて行ってもらった。
入交さんのことはよく喋ってくれた。
実際手のかかる人だったようだけど、出来の悪い子供ほど可愛いものなのだろう。
伯父には娘二人いるが、男の子供がいなかったのだ。
退職後の伯父は代わりに私を見つけたのだろう。
「吉野くんが社長をやめる前に、なんとかならないかな?頼まれて文部科学省経由でオートレースの選手にエンジン工学とかバイク工学とか教えているんだよ。これが使っている教科書なんだけど、エンジン諸元とか型式とか全部訂正してあるから。相当いい加減だよ」
こんなに訂正するんなら、自分で書けばいいのにと思うぐらいだった。
ある日池袋のトヨタ展示場のアムラックスに連れて行ってもらった。
壁に展示してあったF1エンジンのモックアップモデルのシリンダー内壁をなぞり、
「触ってみてごらん。なぞるとデコボコしているだろう?人間の指先はミクロンオーダーの凹凸がわかるんだ。これは所詮モックアップだよ」
は、私の中の名言だ。
三現主義(現場現物現実)、原理原則、三つの喜びなんてことは一言も言わなかったが、その言葉を使わずにそのすべてを叩き込んでくれた。
だから私の頭の中には本田宗一郎がいる。
さて、今のホンダはどうだろう?