5月の終わりに石見銀山生活文化研究所である「群言堂」から一冊の本が出版された。
大福のmokoさんも紹介していたが、素敵な本なので少しその本についてお話します。
詳しく言えば、二冊一組で、装丁は薄いグレーの綿の生地を使っている。
一冊めは、「経 たて」著者は松場大吉さんで、群言堂が今に至るまでの歩みが書かれている。
大吉さんとは、これまで色々お話はしてきたが、
こんなご苦労があったなんて読ませて頂いてびっくりした。
また、奥様の登美さんの挿入文も素晴らしい。
そして、もう一冊は、「緯 よこ」写真集で写真家の藤井保さんが撮られている。
この写真集は、モノクロが多く静寂さの中に凛とした風格がある。
この二冊を読むと、時をかけ、時代に流されず、
ぶれることがなく少しずつ歩んできた松場さんご夫妻の生き様を感じる。
そして、私たちがいつも思っていることが、
ステキな文章で表現されていたので最後に紹介します。
「心の物差し」を・・・
かつて日本は世界の中でも
あらゆる分野での優れたものづくりの国として、
高い評価を受けてきた。
繊細な感性、豊かで変化に富んだ気候風土、
勤勉な国民性によるのだろう。
ところがそれらを支えてきた産地、特に繊維産業は
全国的に極めて厳しい状況にあると聞く。
大量生産による安価な素材に押されているのが原因の一つである。
(中略)
確かに大量に作り人件費の安い海外で生産すれば
コストは下がり、安く販売できる。
しかし消費者は安いからと安易に買うようになり、簡単に使い捨てる。
それが大量のごみになった時、環境に与える負荷は計り知れない。
(中略)
ていねいにデザインされ作られたものには、
作り手の価値観や美意識といったものが表現されている。
そこに込められた思いとかメッセージを受け止めることで、
買い手は精神的な満足度を得られるのではないだろうか。
(中略)
私達の作るものは大量生産に比べれば高い。
しかし、せめてすぐにごみになってしまうものだけは
絶対に作りたくない。
消費者も、ものを選ぶ際に
「安さ」という経済的な物差しの他に、もう一つ
「身近に置いて心が満たされ、長く愛着をもてそうなものか」
という精神的な物差しを持ってほしいと思う。
(「ぐんげんどう 経 たて」 より)
繊維産業のみならず、家具業界においても同じようなことがいえる。
量産の家具に押されて、腕のいいと言われた職人さんはどんどん減り
家具の文化も危ぶまれている。
それ故、私たちは、高価ではあるが「心が満たされる家具」を
これからも販売していきたい。そして、こうした物差しを持った消費者が
増えていってくれることを強く願う。
お福さん