℃-ute主演舞台「携帯小説家」レポート、今回はストーリーやメッセージなどに迫るストーリー編です。ネタバレあるので、これから観に行かれる方はまだ読まないでおいてください。
この舞台は、前半は明るく楽しく、後半はシリアスという内容なので、レポートもそれに合わせて今回は真面目(前回記事はふざけて書いた訳ではないですよ)に行きます。
まず、「携帯小説家」のあらすじを簡単に書きましょう。
℃-uteメンバー演じる七人の女の子は実は七人共同で執筆している携帯小説家で、話のストーリーを決めかねていた七人は、主人公キヨカ(舞美)が憧れている作家先生の家にアドバイスを受けに行きます。しかし、その作家先生には色々問題があり、ついにはアドバイスを貰う筈が説教を受けてしまうという展開になっていくのでした。
話の流れ的には、前半はお笑い要素が詰まった明るい展開。℃-uteメンバーの各キャラ設定も、基本的にはこの前半のお笑いタイムのためにあるのでは?と思えるほど。って言うか多分そうです(苦笑)。
作家先生の家を訪れた辺りから話はシリアスになります。先生が℃-ute達が書こうとしているのが「携帯小説」と知ってからの説教シーンでは、ほとんど℃-uteメンバーの台詞はありません。
そのため、前半は良かったけれど後半はつまらなかったという意見も聞きます。でも私的には、後半こそが見所に思えたのですが。
見所の一つが説教の後の舞美が泣くシーンですが、そこに至るまでに℃-uteメンバーが作家先生に反論するなどの℃-uteメンバーの台詞があれば、また違った印象になったのでしょうか?
でも、この説教シーンには色々なメッセージが込められていました。それは、インターネットや携帯やmixiなどに対する批判。人が便利さと引き替えに失ってしまったものがあるのではないか?という現代情報社会への警笛。
私なんぞも、こうしてそのようなメッセージの込められた舞台の感想をインターネットを使って、多数の方々へ公開してる身。更に、掲示板に書き込みもしたりしています。ああ、便利な世の中になったなと思います。しかし、この舞台でも作家先生の住所と電話番号がネット上に晒されたり、噂を書かれたりするシーンがありましたが、便利で手軽な分だけ、人を喜ばせるのも、悲しませるのも、傷つけるのも簡単です。携帯から打ったちょっとした言葉が、ある人の人生を狂わせてしまうような事だって起こりえる。
便利とか手軽だけが正解ではない。むしろ、手軽さゆえに凶器にだってなるのだ。というメッセージを、まあ確かにそうだなと心で頷きながら舞台を観ていました。そして、ふと気がつきました。
作家先生が「携帯小説家はプロではない」と℃-ute達を突き放すシーン。手軽に誰もが書ける携帯小説。手軽さがあるから、読み手にも親しみやすいけれど、そこには本当の意味でのクリエイターとしての覚悟みたいなものは果たして存在しているのだろうか? 私も日頃感じていた部分です。
そのやりとりを観ていて、タイトルにまでなっている「携帯小説家」というのは文字通りの意味だけではなく、「携帯小説家=アイドル」そして「携帯小説家=℃-ute」という意味を重ねているのではないか?と思ったのです。
℃-uteは勿論プロだし、アイドルのプロとして日々頑張っています。しかし、作り手側は「そこに満足しているだけでは駄目。更に高い目標を目指せ」という、℃-uteへの叱咤激励のメッセージを作家先生の説教に込めたのではないかと思いました。
帰宅してから開いて読んだパンフレットの中でも、作・演出の太田善也さんの寄せた文に「携帯小説家の多くはプロを目指していない」と冒頭に書かれていました。
まだ上演期間なのにエンディングの事を敢えて書いてしまいますが、最後にキヨカが小説家を目指すというシーンがあります。文章はペンではなく、慣れた携帯で書いているのだというオチも付きますが、私はこの「キヨカは小説家になる」というエンディングに、「℃-uteは単なるアイドルに終わらず、色んな事に挑戦してレベルアップしていく」というイメージを重ねました。それは太田さんの願いなのではないかと。そう思えたら、ヲタに地味で説教くさいと言われている物語後半が非常に印象深くなっていくのでした。
アイドルの舞台は、アイドルを輝かせて楽しく面白ければ、それで良いのだ。そんな意見もわかります。前半はまさにそんな展開でした。だからこそ、後半に「アイドル」というものに対するメッセージが含まれているから、前半はストーリーに直接関係ないような、お笑いドタバタ劇にして℃-ute演じる各人のキャラを個性的に設定して楽しませてくれたのではないか?そう思います。
そんな感じで、演者の皆さんが演技から発したメッセージの解釈を書いてみました。正解ではないかもしれないし、解釈は観た人によって違うものになるのが舞台の良いところ。
これから観に行く人は勿論、観に行けないけどDVDで楽しもうと思っている人にも、いろんな解釈をしながら観る事が出来る作品ではないかと思います。