宮本輝作「海岸列車 上下」を読みました。海岸列車と聞くだけでも旅愁を覚えます。この本には沢山のテーマが詰め込まれていました。恋愛、不倫、親子愛、友情、自立、それらを含めた人生などです。父の死後、母はかおりと夏彦の兄妹を夫の兄に託して、山陰の「鎧」という町で再婚しました。兄妹は何度も母に会うために山陰の「鎧駅」を訪れますが、駅から鎧の町を見下ろすだけで、実際は1度も町へ行ったことはありませんでした。国際弁護士「戸倉陸離」と出会い、2人に少しずつ変化が表れます。私は戸倉陸離という名前が気に入って、注目して読みました。人間関係が複雑なのかそうでもないのか、最後は結局「ご縁」、縁があるのかないのかが大切なのかなと思いました。登場人物が成長していくのでお話が進むのが楽しいです。何度も鎧駅が出てくるので、行ってみたくなります。実際には何もない寂しい町らしいのですが、ベンチに座って鎧の町を見下ろすとどんな気持ちがするのかなと思います。ベンチに座って静かに町を見つめていると、自分自身と対峙して心が穏やかになるのかなとも思います。
あっ、私は鎧へ行くより「みをつくし料理帖」で出てきた大坂の町や川、橋などを先に見に行きたいと思いました。
2022ー5ー17(火) 図書館資料 請求番号:913/B/ミヤ-1,2