試験本番前日の朝、娘は明らかに気持ちが落ちていました。
言葉数も少ない。
朝食後、すぐに練習を始めるかと思えばそうではなく、
iPhoneをいじったり、漫画を読んだり、ゲームをしたり。
たぶん、弾き始めるのが怖かったのだろうと思います。
昨日の今日で、さらに状態が悪くなっているかもしれないという不安。
弾き始めたらすぐに、
あー、やっぱり状況はちっとも好転していないんだ・・・
ということが確定してしまう恐怖。
しばらく放っておこうと思い、
何気なく様子を伺いながら、家事をこなしていた私ですが、
さすがにそろそろ空気を変えなければと思い、
明るく声を掛けました。
「今日はさ、まずゆっくり練習しようよ。
メトロノームでゆっくりゆっくり。
午前中は、片手ずつの練習とゆっくりの練習だけでいいんじゃない?
インテンポの練習は午後からにしよう。」
一番の問題は、右手と左手それぞれのテンポが崩れてきてしまったことにありました。
練習の最初に、「本番のつもりでインテンポで通す」という、
いつものやり方を回避することで、
だいぶ気が楽になって練習を始めることができたようです。
簡単なことのようですけど、そんなことにも気付かないほど、
娘は動揺していたのです。
午前中は本当に、ゆっくりテンポの練習だけをしました。
「だいじょうぶだよ。」
「焦ることはないよ。」
「すでに1回仕上がって、先生にも褒めていただいてるんだから、
絶対にできないことはないよ。」
といったことを何度も言って聞かせました。
少しずつ、気持ちも調子も上向いていったように思います。
昼食のあともしばらくはゆっくり練習をしていましたが、
夕方から、インテンポでの練習を開始しました。
途中引っ掛かるし、ミスタッチするし、
まだまだ仕上がりには遠かったけれども、
気持ちは安定しているようで、空回りすることなく、
着実な練習をしているようでした。
夕食後は、さらに集中して練習。
途中お風呂に入って、午前0時半まで練習を重ねました。
翌朝は早い時間に家を出るので、
早く寝かせたかったのですが、黙ってやらせておきました。
結局、一番仕上がっていた状態にまでは持っていくことはできなかったものの、
最悪の事態は免れることができそうだったので私も少しホッとしました。
E先生も心配してくださっていたようで、
夜8時半頃、娘にメールが届きました。
「明日は、姿勢よく、音をよく聴いて、指先敏感に。
スカルラッティは、明るい音で爽やかに。
ショパンは、華やかに、優雅に、歌った音で。
以上に気をつけて弾いていらっしゃい。」
との内容でした。
前期の実技試験ではこのようなメールはなかったので、
相当気にしてらしたのだと思います。
マシュマロトースト。
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