Dee
2024-10-22 | 詩
暖房の効かない食堂の
おれんじ色の蛍光灯の下で
僕らは音楽の話に熱中していた
先輩が通路を通りすぎる
白いシャツは赤いペンキでRANDY RHOADSと手書きされていた
オジーのバンドに入りて~、と
奇妙な台詞を叫びながら先輩は暗闇に消えた
友人がククク、と笑いながら
「Dee」を弾き流した
僕は黙って彼の指使いをぼんやり眺めていた
TVの深夜番組のオーディションで
浅井健一が上半身裸でギターを掻き鳴らしている
猫が死んだ と叫んでいる
とてもとても切ない歌声だった
深夜の高速バスに乗り込んだ少年を
見送ったのは
あれは何時の事だったのだろう?
餞別にヴェルヴェット・アンダー・グラウンドの
キーホルダーを渡した
彼はウォーホールのバナナを見て不機嫌そうな表情をした
なんだよ、これ?
魔除けみたいなもんさ、気にすんな。
バスが発車すると僕は煙草に灯を点けた
白い息が漏れた
コートに手を突っ込んで夜道を歩いた
徘徊した夜道は街明かりに濡れていた
石畳の坂道を登りきる前に息が切れ
青い街灯の下で立ち尽くしてしまった
煙草が切れた
でも煙草をそっと差し出すはずだった君の声は永遠に聴こえない
僕が持っていたパレットには
赤い絵の具が散乱していた
林檎を描こうとしていた
林檎はなんにも云わなかった
馬鹿馬鹿しい程の当たり前さに嫌気が差していた
ためしにいろんな色を混ぜ合わせた
限りなく黒い透明な黒
あの野良猫の色と同じ色だった
冬が近ずく夜
珈琲の黒の中
少女がギターを弾いている
懐かしい旋律だった
どこで憶えたんだい?
僕が尋ねると少女は不思議そうな顔をした
あなたのレコードに入っていたわ
屋根裏部屋から見つけてきたのよ。
ねえ、お願いだからずうっと弾き続けてくれないかい。
いいけど。どうして?
気持ちがいいんだ。
やっと眠れそうな気がする
「Dee」
おれんじ色の蛍光灯の下で
僕らは音楽の話に熱中していた
先輩が通路を通りすぎる
白いシャツは赤いペンキでRANDY RHOADSと手書きされていた
オジーのバンドに入りて~、と
奇妙な台詞を叫びながら先輩は暗闇に消えた
友人がククク、と笑いながら
「Dee」を弾き流した
僕は黙って彼の指使いをぼんやり眺めていた
TVの深夜番組のオーディションで
浅井健一が上半身裸でギターを掻き鳴らしている
猫が死んだ と叫んでいる
とてもとても切ない歌声だった
深夜の高速バスに乗り込んだ少年を
見送ったのは
あれは何時の事だったのだろう?
餞別にヴェルヴェット・アンダー・グラウンドの
キーホルダーを渡した
彼はウォーホールのバナナを見て不機嫌そうな表情をした
なんだよ、これ?
魔除けみたいなもんさ、気にすんな。
バスが発車すると僕は煙草に灯を点けた
白い息が漏れた
コートに手を突っ込んで夜道を歩いた
徘徊した夜道は街明かりに濡れていた
石畳の坂道を登りきる前に息が切れ
青い街灯の下で立ち尽くしてしまった
煙草が切れた
でも煙草をそっと差し出すはずだった君の声は永遠に聴こえない
僕が持っていたパレットには
赤い絵の具が散乱していた
林檎を描こうとしていた
林檎はなんにも云わなかった
馬鹿馬鹿しい程の当たり前さに嫌気が差していた
ためしにいろんな色を混ぜ合わせた
限りなく黒い透明な黒
あの野良猫の色と同じ色だった
冬が近ずく夜
珈琲の黒の中
少女がギターを弾いている
懐かしい旋律だった
どこで憶えたんだい?
僕が尋ねると少女は不思議そうな顔をした
あなたのレコードに入っていたわ
屋根裏部屋から見つけてきたのよ。
ねえ、お願いだからずうっと弾き続けてくれないかい。
いいけど。どうして?
気持ちがいいんだ。
やっと眠れそうな気がする
「Dee」