眠りたい

疲れやすい僕にとって、清潔な眠りは必要不可欠なのです。

2009-06-24 | 
君の声が聴きたい

  傾けたグラスの氷が音を立てる
   静けさに封印された切なさが声を震わせる
    記憶
     断層の階層の厚さに
      不安や孤独を秘め
       こんな眠れぬ夜には君に会う夢を想像する

       君の声が聴こえる

      「梅雨前線が活発化し
       今夜半にも局地的に雨になるでしょう」

       ぴー ぴー ぴー

       ガガガ

       混線した受話器越しに君の唄を探し続けた
        やがて通り来る落雷に息を潜め
         バーボンを舐め世界を耽溺した
          丸い球体
           地球と云うんだよ
            猫がしたり顔で教えてくれた
             ゆっくりと毛並みを揃えながら
              やがて意識は避雷針のように
               電流を落雷さす
                極めて不穏な一夜
                 パンを齧る
               灰色の壁の部屋に
              どうして僕は独りぼっちなのだろう?
             揺らいだ街の記憶
            交差した運命線
           手のひらをなぞり続ける
          地上60階のレストランでステーキにナイフを入れる
         味なんて覚えていないけれど
        あのシェフはまだこの現世に存在するのだろうか?
       ワインを少しだけ注いでくれたソムリエの革靴が
      やたらとピカピカしていて素敵だった
     そう多くない客の顔をぼんやり眺める余裕など
    或るはずも無い十七歳の僕
   いつか君に繋がる路を選び取ったんだ
  きらびやかな夜景を背景に
 ピアニストが洒落た運指でショパンを弾いた
高速で動くエレベーターの様に
 
  ねえ
   君に会いたい
    君の声が聴きたい

     立ち食いそば屋のカウンターで
      寒さを暖めたかけそばの一杯

       店の親父がやたらと無口だ

        誰も余計な事など云わなかった
         ただそばをすする音
          咀嚼する音
           嚥下する音
            電車の駆け抜ける音

             十七歳の僕は
              ただひたすらに奇跡を待ち望んだ

              君に会う夢


             野球中継を流していたラジオが

            不意に
           ホテルカリフォルニアを歌いだす
          
          君の声だけが聴きたい



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