眠りたい

疲れやすい僕にとって、清潔な眠りは必要不可欠なのです。

絵葉書

2009-06-01 | 
駱駝が砂の原を歩く
 旅の商人と沢山の荷物をその背に乗せ
  駱駝が灼熱の砂漠を歩き続けた
   少年は駱駝の上から世界を俯瞰した
    何処までも続く砂丘
     何処までも続き続ける日常
      虚ろな瞳で太陽を見上げた
       光が眩し過ぎて
        灼熱がじりじりと魂を焦がす
         
        全体
         僕らの旅は何時まで続くのだろう?

         一枚の絵葉書が届いた
        昔 友人だった旅人からだ
       元気か?
      おいらは今、エジプトに居る
     良かったら遊びに来いよ
    此処はいい処だ
   日本とはえらい違いだ

  僕は明日の仕事の準備をしていた
 バーボンを舐めながら
突然、奇妙な焦燥感に駆られた
 僕は何時までこの日常に埋没しなければならないのか?
  少年だった頃
   僕はこんな世界を夢見た筈じゃなかった
    
   彼とはそんなに親しい間柄ではなかった
    学生時代
     彼は世界中の山を登る登山家だった
      エヴェレストに登頂した後
       ある喫茶店で初めて僕らは出会った
        屈託のない笑みを浮かべて
         人懐っこい彼の笑顔からは
          旅の話がひっきりなしに飛び出してきた
          それは僕らの日常とはおよそかけ離れた世界だった
            僕はマンデリンを飲みながら
             彼の撮った山頂の写真を眺めていた

             今想うと
            僕らは旅を続けているのだ
        それがエジプトであろうがエヴェレストの山頂でなかろうが
          僕らはこの世界を旅しているのだ
         気に入りの音楽を流すとき
        職場までの道のりを車で通るとき
       ささやかな休日に縁側で冷えたビールを飲むとき
      眠れない夜に金子光春の詩集をぼんやり眺めるとき
     繋がらない電話に絶望し捨てられた子犬の気持ちになるとき
    不安で抱えきれない問題に直面したとき
   星空を眺めながらはっか煙草に灯を点けるとき
  
    僕らは世界を歩き続けているのだ

    てくてくと
 
    水筒に入れたワインを飲みながら
     夜の道を歩く
   僕らの旅は何時まで続くのだろう?

    猫が微笑んだ

    歩き続けるんだ

    答えは必要ない

    ただ

    歩き続けるんだ

    其れがこの世界に産まれた存在意義

        
    僕は絵葉書にもう一度目を通し
    引き出しの中に仕舞い込んだ

    それから顔を洗い
   歯を磨いて
  朝食を食べた
 靴の踵の減りに気をとられながら
 歩きはじめるのだ

  道端に小さな花が咲いている
  まるで気の利いた魔法の様に
  僕は微笑む

  不自由さの中の自由

  世界が構築されている不思議

  もしかして
  この僕の日常は
  砂漠を旅する少年のみた夢なのかも知れない

  駱駝がのんきにあくびをした

  夜空で別の世界が回っていて

  誰かが僕に信号を送る

  別れの信号

  出会いの信号
 
  
  ぴぴぴ

 

  











   
コメント (4)
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