眠りたい

疲れやすい僕にとって、清潔な眠りは必要不可欠なのです。

雨の夢

2022-09-05 | 


   救って


    石畳の回廊を抜けると大広間に辿り着いた
     赤い絨毯に目を落とし
      僕はぼんやりとしていた
       過去と未来と現在に想いを馳せていた
        
        あなたは此処に来たわ。

         哀し気な表情の声で
          言葉が流れてきた    
           頭を挙げると深紅の玉座に少女が座っていた
            気怠そうに僕を一瞥し
             それからもう一度云った

              あなたは此処に来たわ。

               此処は何処?

               ぼんやりとした意識で僕は少女に尋ねた

                あなたが帰る場所
                 永遠の「最果ての国」よ。

                  ひどく水が飲みたかった
                   僕は少女に尋ねた

                    煙草を吸ってもいいかい?

                     構わないわ。

                      紙煙草を咥え
                       僕はダンヒルのライターで灯を点けた
                        白い煙が白線の様に流れた

                         今は何時だい?

                         月が昇り太陽が沈む頃よ。

                        少女は自分に言い聞かせるようにそう呟いて
                       ヴェネチアグラスに赤葡萄酒を注いだ
                      そうして其れを神様の血の様に大切に口に含んだ

                     深紅のドレスがとても似合っていた
                    それで僕はその色が赤だとやっと認識で来た

                   此処は本当に最果ての国なのかい?

                  煙草をブーツで踏みつぶして僕は少女に聴いた

                 あなたは此処を探して沢山の旅をしたわ。
                此処は王国なの。

               あの幕の開かなかった舞台は此処で始まるのかい?
              あの永遠のパレードは此処にやって来るのかい?
             あの訪れなかった革命前夜は?

            そう。

            少女は宙空をぼんやりと眺め気怠そうに呟いた

           輪廻する魂

          贖罪されるはずの僕の現存在

         「我が創りし人を
           拭い去らん
        
           人より獣

          天空の鳥に至る

         滅ぼさん

        我 創りし 悔ゆればなり
      
       かくて   後

      洪水地に望めり

     大淵の源皆破れ

    雨四十日夜

   注げり

  方舟は雨に漂えり」




 ねえ

  僕は唱える

   君は何処へ行ったの?
    辿り着いた果ては此処ではないの?


     雨宿りの古本屋の軒下
      傍に佇む少女に傘を差しだした

       良かったらこれ。

        少女は一瞬怯え
         それから言葉を紡いだ

          あなたはどうするんですか?

           僕は微笑んで呟いた

            いいんです。雨が止むまで待ちます。
             僕には急いで帰る場所なんてないから。

              少女は僕の目を見つめた

               この雨が
                この雨が永遠に止まなくても?

                 僕は煙草に灯を点けた

                  永遠に待ちます。
                   其れが僕の贖罪だから。

                    雨は晴れたのだろうか?

                     あれから長い月日が経った


                      何度も月が昇り太陽が沈んだ

     
                       方舟は


                        最果ての国に辿り着いたのだろうか?


                         君の後姿を探して


                          僕は古本屋の軒下で煙草を吹かしている


                           永遠に


                            永遠に






                             救って





















































     





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