今年からシマノレーシングの選手たちが身にまとうサイクリングウェア「S-PHYRE(エスファイア)」。その大きな特徴は、シマノレーシングの選手たちと開発スタッフが緊密に連携をとり、選手の意見が多く取り入れられて開発された、まさにレースを“勝つ”ためのウェアであることだ。
今年の全日本選手権ロードレース、シマノレーシングは「S-PHYRE」とともにエリート部門ではトップ10に4選手を送り込み、U23部門でも優勝をつかみとる活躍。また世界最高峰のツール・ド・フランスでも、チームロットNLユンボの選手が「S-PHYRE」を着用し、ステージ2勝を挙げるなど性能の高さを証明している。
「S-PHYRE」のジャージは継ぎ目のない新しい3Dパターンを採用し、肩のしわをなくてしエアロダイナミクス効果を最大限発揮している。シマノレーシングの水谷翔選手は、スプリンターだけに空気抵抗は最も気にするところだが、長距離を走るうえでの快適な着心地にもこだわったという。「空力を追及するとサイズが小さくなって着心地が苦しくなりがちです。でも、S-PHYREは伸縮性や通気性の高い素材を使って、快適性も確保されています」
タイムトライアルやクリテリウムなどで使用頻度の高いS-PHYREレーシングスキンスーツは、上下一体のワンピース構造とすることで、さらに空気の流れをスムーズにし、タイムアップに貢献するというデータもある。(40km/hで40kを超える10km/hの向かい風の条件で、SHIMANOプリントジャージ/ショーツと比較した場合、93秒のタイム短縮)
一方、クライマーの秋丸湧哉選手が特に気にかけたのが、ビブショーツのパッドとグローブ。「これらは自転車と体の接点ですからね。特にグローブは開発スタッフとマンツーマンで取り組んで、素手に近いフィーリングを求めました。もちろん、グローブとして必要な通気性、安全性も突き詰めました」。そうして開発されたS-PHYREグローブは、手のひらのパッドを取り除いてフィット感を高め、シフトチェンジやブレーキングなどの操作性を高めている。
またS-PHYREのソックスは、シマノ製サイクリングシューズの専用設計となっている。ロード用シューズ最高峰の「RC9」、オフロード用シューズ最高峰の「XC9」と一緒に履くことで、最高のパフォーマンスを発揮するのだ。具体的には、シューズとリンクした通気性能でソールから湿気を放出、足甲部は計算された厚めのクッション、また足裏部は薄く織ることでダイレクト感と湿度コントロールを保持。ソックスとしての快適性を保ちつつも、選手がこだわるダイレクトなペダリングを追及しており、秋丸選手も「パワーを出しやすい」と高く評価する。
今も選手のリクエストに応えて作られた夏用のメッシュ生地のジャージや防寒用のベストなどが、新たにレースの現場に投入されている。こうして開発されたアイテムやテクノロジーが、将来的に多くのサイクリストのもとに届く市販品にも反映されていくかもしれない。
シマノのサイクリングウェア・ラインナップの中でも、特にレースでの使用を前提とする「S-PHYRE」。シマノレーシングの選手たちも「勝利を目指す人に身に着けてもらって、レースで性能を確かめてほしい」とレコメンドする。
Photo&Text: Tatsuya Mitsuishi (OCN)