第88回全日本自転車競技選手権大会 ロード・レース
6/30(日)
9:00-男子エリートレーススタート 227㎞(10.8㎞×21周)
出場選手:入部正太朗・木村圭佑・一丸尚伍・湊諒・横山航太・黒枝咲哉・中井唯晶・小山貴大
自転車ロードレースの日本一を決める全日本自転車競技選手権大会ロード・レース・男子エリートが6月30日、静岡県小山町の富士スピードウェイで開催された。シマノレーシングにとっても、シーズン最大の目標とするレースのひとつ。さらに今年は2020年東京オリンピックの出場枠争いもかかり、ワールドツアーで活躍する別府史之(トレック・セガフレード)、新城幸也(バーレーン・メリダ)らも参戦するなど、注目度の高い中でのレースとなった。
▲富士スピードウェイのピットにてウォームアップを開始する
加えて今年の会場は、東京五輪・自転車ロードレースのゴール地点にも設定されている富士スピードウェイ。モータースポーツで使用される国際レーシングコースと外周道路を組み合わせた10.8kmを21周する227kmの長丁場でのレース。幅の広いストレートもあれば、小刻みなアップダウンや細かく曲がり込むコーナーも含まれ、スピードだけでなく上りの力やテクニックも試されるコースとなった。
しかも、全日本選手権期間中、富士スピードウェイは梅雨空が続き、最終日の男子エリートのロードレースも朝から小雨。濡れた路面で、落車などのトラブルも心配される1日となった。
▲メカニックがスタート前の最終準備を整え想定されるトラブルへの対処を進めてゆく
シマノレーシングは、ヒザの故障で戦列を離れている中田拓也をのぞく、8人が出走。入部正太朗をエースに、終盤の勝負どころまでチーム全員でサポートする。最終盤に入部をアシストするキャプテンの木村圭佑、湊諒、横山航太らも展開によっては自らのチャンスを狙いにいく作戦で臨んだ。
小雨が落ちる中、午後9時にレースはスタート。序盤からアタック合戦が続くが、別府らがハイスピードで集団をコントロール。早くも脱落する選手や、落車、メカトラブルによって後退する選手も現れ始める。
シマノレーシングでは小山貴大、一丸尚伍が集団から遅れ、リタイア。期待されていた横山も不調を訴え、前半でレースを降りた。
▲スタートラインにつく入部正太朗
4周目、集団前方では、昨年の全日本王者・山本元喜(キナンサイクリングチーム)らがアタック。シマノレーシングからは3週間前のJPT那須塩原クリテリウムでプロ初勝利を挙げた好調の中井唯晶も加わり、ようやく9人の逃げが形成される。しかし、これをさらに湊ら10人前後の選手が追走して合流し、結局、再び約50人ほど集団にまとまる。
8周目、今度は徳田優(ブリヂストンサイクリング)が単独アタックし、集団からリードを開き始める。メイン集団は、シマノレーシングがコントロールし、黒枝咲哉、中井らがローテーションする。このレースは無線が使えず、野寺秀徳監督からの直接の指示はなかったが、キャプテン木村をはじめ選手たちは「集団の後ろにいても、伸び縮みがあってきつい」と判断し、アシストの数を減らしてでも積極的にレースを進める決断をした。
▲チームをまとめる重要な役割を全うした木村キャプテン、重要な場面でレースをコントロールする
▲レース中盤、独走を続けたブリヂストンサンクリングチームの徳田選手
▲入部とチームを守るため先頭牽引を続けた黒枝咲哉(上)と中井(下先頭)、この2名の働きがチームの立ち位置を最良の場所へと導く形となった。
レース中盤になると、雨もほとんど上がってきた。タイム差が約3分まで広がると、宇都宮ブリッツェンもローテーションに加わり、徳田とのタイム差を削り取っていく。
残り7周、ついに徳田が捕まり、集団は再び活性化。新城らが積極的にアタックを仕掛けては、吸収されるのを繰り返す。集団の人数も約30人に絞り込まれ、中盤までアシストとして力を尽くした黒枝、中井はレースを終えた。しかし、この2人のおかげで力を温存した入部、木村、湊は積極的にアタックに対応する。
▲最終的な入部の攻撃力を守るため他チームの攻撃に対応し続けた湊諒
残り3周、早川朋宏(愛三工業レーシングチーム)のアタックに入部が反応。ここに新城と横塚浩平(チーム右京)が追いつき、早川が遅れて先頭は3人に。落車のケガから復帰したばかりの新城だが、それを感じさせない強力なペースを刻む。追走集団との差を徐々に広げ、入部もこれにくらいついて行く。
▲入部を含む3名がハイペースを刻み、レースの流れは決定づけられた
レースも大詰めを迎えると、再び雨が降り出し、霧もサーキットを覆い始めた。先頭3人は、残り1周でタイム差1分12秒と、逃げ切りはほぼ確実な状況に。そして最終ラップに横塚が遅れ、優勝争いは入部と新城の2人に絞られる。入部は経験豊富な実力者の新城に対し、冷静に勝負に徹し、残り3kmはその背後で息をひそめる。
向かい風のホームストレート、入部は残り150mでスプリントを仕掛け、新城を振り切る。最後は今年5月に亡くなった父・正紀さんのいる天を両手で指差し、悲願の全日本選手権優勝を飾った。
▲新城選手との一騎打ちを制し悲願の選手権タイトルを手に入れた入部正太朗
追走集団の争いは、湊諒が制し全日本自己ベストの4位。木村も20位で完走した。
過去数年、全日本にこだわって目標としてきた入部だが、悲願のタイトルをつかみとり、表彰台でチャンピオンジャージに袖を通した。シマノレーシングにとっては、野寺監督が現役時代に勝ち取った2008年以来11年ぶりの全日本チャンピオン誕生となったが、まさにチーム一丸でつかんだ王座となった。
<コメント>
■入部正太朗
「何回か勝って、チャンピオンジャージを着る夢を見たことがあるんですよ。目が覚めてから『夢やったんか』って。そういうのもあって、実感が沸かないですね。新城さんが強すぎて、みるみるうちにタイム差が離れて行って、1分以上広がったときはこれは決まるかなと思いました。今日のレースはなんのストレスもなく、チームメイトみんなが守ってくれた。本当にチームの勝利ですね」
■湊諒
「(4位は)素直にうれしいですね。2年前くらいから自信がない消極的なレースが続いて、途中で千切れてしまったり、僕は勝てない人間なのかなと思っていたので。1位になれなかったとしても、全日本で動けてたので自信になりました」
▲共に戦ったチームメイトに迎えられる入部、チームにとっても悲願のタイトル獲得となった
<リザルト>
■第88回全日本自転車競技選手権大会 ロード・レース 男子エリート
1 入部 正太朗(シマノレーシング)6:12'27
2 新城 幸也(BAHRAIN MERIDA)st
3 横塚 浩平(Team UKYO)+00'08
4 湊 諒(シマノレーシング)+01'41
5 伊藤 雅和(NIPPO VINI FANTINI FAIZANE)+01'49
6 草場 啓吾(愛三工業レーシングチーム)+01'49
7 小林 海(GIOTTI VICTORIA-PALOMAR)+01'49
8 増田 成幸(宇都宮ブリッツェン)+02'30
9 鈴木 譲(宇都宮ブリッツェン)+02'34
10 西村 大輝(NIPPO VINI FANTINI FAIZANE)+02'50
20 木村 圭佑(シマノレーシング)+06'51
DNF 中井唯晶(シマノレーシング)
DNF 黒枝咲哉(シマノレーシング)
DNF 一丸尚伍(シマノレーシング)
DNF 横山航太(シマノレーシング)
DNF 小山貴大(シマノレーシング)
Photo&Movie&Text:Tatsuya Mitsuishi(OCN)