少し前ですが、d-マガジンで興味深い記事を読みました。
引用します。
サンデー毎日 2023年4月30日号
シリーズ・路上のデモクラシー 石戸諭
「カネ」のために国会議員になった男
「公共性」とは無縁だったガーシーの正体
一連の「ガーシー騒動」とは何だったのか。ガーシーこと東谷義和元参院議員(51)は除名され議員の資格を失い、さらに警視庁の捜査が続く。しかし、ご本人はドバイ(アラブ首長国連邦)から帰国する気配もない。気鋭のノンフィクションライターがガーシーの内奥に迫 り、その行為は公共性とは無縁だったことを喝破する。(一部敬称略)
ここ最近、月刊『文藝春秋』の依頼でルポを書くために、ガーシーこと東谷義和元参院議員を追いかける日々を送っていた。
22年2月に芸能人の醜聞を暴露するユーチューブを開設し、瞬く間にトップユーチューバーの仲間入りを果たした東谷は、同年7月の参院選に旧NHK党から立候補すると2万票余を集め当選を果たしてしまった。
だが、UAE=アラブ首長国連邦の都市ドバイを拠点として一度も日本に帰国することがなかったばかりか、かつての暴露動画によって現職期間中に暴力行為等処罰法違反(常習的脅迫)などの容疑で警視庁の捜査対象になった。国会の召集を徹底して拒んだ東谷は、参院懲罰委員会で決議された「陳謝」にも応じず、3月15日の参院本会議で「除名」が可決された。
そして、除名の翌日にはネット上の暴露が名誉毀損、常習的脅迫などの容疑で、逮捕状が出されるに至った。まもなくして、兵庫県伊丹市の実家などに警察の家宅捜索が入る。東谷はインターネット上で涙ながらに「オカンは関係ないやろ」などと訴えたが、実家の捜索が捜査に必要なものであることは明白であり、支持者以外は同情しなかった。今後も粛々と捜査は進行していくが、ドバイ在住にあたって長期ビザを取得している東谷が帰国を選択することもないだろう。
事件そのものはしばらくの間、こう着状態となりそうだが、興味深いのはいまだに彼を正と邪の境界を引っ掻き回すトリックスター、もしくはダークヒーローと期待する声が根強く残っていることだ。私が見るに、彼のシンパの望みが叶う可能性は極めて低い。なぜなら、彼の発言や一連の行動にはほとんどと言っていいほど、「公共性」がないからだ。
彼がそもそも国会議員を目指したのは、本人も公言しているように「カネ」のためだ。
同じ意見を持つ単一的な空間
ことの発端は、芸能界とつながりが深かった東谷が高額レートの違法ギャンブルで作った借金にある。勝てば数千万単位のカネが手に入り、負ければ一気に失う。手持ちの現金がなければ、カネを借りてでも埋め合わせなければいけない――。そう考えた彼が資金源としたのは、“アテンダー業”で知り合った芸能人からの借金と詐欺行為だった。
その一つが韓流アイドルグループ「BTS」の名前を使ったものだ。東谷が経営するアパレル会社がグッズを手がけることになり、彼に航空機代とホテル代などを支払えば会わせることができる、というのが騙し文句だった。華麗な芸能界の人脈をちらつかせる東谷を信じ込んだBTSファンは、言われた通りの金額を振り込んでしまう。ところが、出国予定日直前になり、突如、旅行は中止になったと連絡が入り、返金をにおわせながら徐々に連絡は途絶えていく。いくつかの事実で人を信頼させ、肝心の部分は虚構だらけだった。こうして借金を膨らませた彼は、いよいよ追い詰められ知人を頼ってドバイへ と向かう。 彼の詐欺行為も広まっていくなか、関係を断ち切った芸能人も多かった。借金返済のために、東谷が手を染めたのが芸能人の暴露動画と選挙である。ユーチューブの収益化、旧NHK党からは政党交付金を原資とする“当選報酬”3億円を得るというシナリオは実現した。
一連の行為には裏切られた――と彼が感じている――芸能人への私怨、ギャンプルで作った借金を返済するための私益は確かに存在している。だが、それ以上のもの、すなわち公共的な問いは見えてこない。
大雑把なまとめになってしまうが、政治思想家のハンナ・アーレントは公共性についてこんなことを考えていた。アーレントが重視したのは、人々の「複数性」だ。一緒くたになるのではなく、異なる意見を持った人々が同じ空間に集って、共通の問題について開かれた議論を交わすことを政治、そして公共性の核心として捉えていた。
東谷にとって大切なのは、公的空間の中で議論を交わすことではなく自らの利益を守ることになってしまった、と見るのが妥当だろう。開かれた空間で異なる意見を持つ人々に語ることよりも、同じ意見を持つ単一的な空間で語ることを優先しているようにしか見えないからだ。
彼がこだわっていたのは、既得権益と戦っているという内向きの“物語”だった。
芸能界、実業家、そして既成政党の政治家が自分たちの利益を守るために、異物である東谷を排除しようとしている、それが今回の捜査であるという物語を生きている。彼は捲し立てるような関西弁で公権力を含む既得権益を批判し、自身の正当性を訴える。真実を語っている自分は、国策捜査と戦うのだ、といういささ大仰な主張を最後まで繰り返していた。その根拠とやらも彼やその周囲にいる人々は信じられるのかもしれないが、強固なものとは言い難い。
東谷の暴露を「一人週刊誌」「ガーシー砲」と持ち上げてきた人々がいる。彼らの発信は反マスメディア感情を刺激し、東谷の政治進出への期待感を高めた。なるほど、確かに法的リスクが伴う暴露行為で収益をもたらす構造は週刊誌のスクープとそう変わらないのかもしれない。だが、重要なのは公共性、開かれた空間のなかで、意見が異なる人々に向けて語れる言葉があるか否かだ。
私は、取材のなかで、少なくとも一度は政治を志した東谷にとって「民主主義とは何か」と尋ねてみた。答えはこうだった。
「民衆のためにある主義が民主主義やって思ってるから。選んでくれた30万人の有権者がいるのに、参議院のお爺ちゃんたちが反対しただけで除名にするのはもう民主主義じゃないって。日本はどこまでも資本主義なんやろうなと。お金を持ってる人、権力者が既得権益を持っていて、お金のない人、弱者といわれる人たちはどんどんダメになって いく」
この言葉を聞いた時、私は東谷をめぐる問題の本質的な部分が見えてきたように思う。彼はポピュリズムの担い手にはなり得ない。ポピュリストは少なくとも、人々の意思を代弁しようとする。人々、あるいはもっと狭い範囲かもしれないが支持者が思っていることを掬い取ろうと試みる。こう言い換えてもいい。ポピュリストもまた公共的な課題を語ろうとはする。お金がない人がどうすれば持てるようになるかを荒唐無稽なビジョンであったとしても、ポピュリストならば語るだろう。しかし、彼からこうした言葉を聞くことはない。自分の利益を守るための既得権益論ばかりが出てくるだけなのだ。
今、私たちが目の当たりにしているのは、あまりに私的でかつ関心の大半をカネにあると公言する人々が、政治を新しい“ビジネス”の場として見定めているという現実だろう。
公共性軽視で政治は動かせない
東谷が前例になってしまった以上、彼のような存在が旧N党に限らず、他の政党からも出てくる未来は容易に想像できる。「民主主義の危機」を嘆きたくなる人々もいるだろうが、私はそう絶望もしていない。今のところ私欲や目先の選挙戦術が公共性に勝る限り、私怨を晴らすか、せいぜい少数議席だけで終わる可能性のほうがはるかに高い。彼らが社会を変えることもなければ、政治家としての活動が持続する可能性も薄い。東谷を一時的に政治家にすることはできたが、政治家としての結果を残せなかったという前例もまた残っているのだ。
「政治家の暴露ネタは持っているが出していない。どうせ既得権益に潰されるから」というのが東谷や旧N党の言い分だったが、期待されたような政治家への暴露はほとんどと言っていいほどなかった。
それも当然の帰結である。30年近く、関係を構築してきた芸能界の暴露ならばいざしらず、いきなり飛び込んだ政治の世界でそう簡単に確度の高い情報が入ってくるわけがない。東谷が既成政党への不満をある程度吸収したことで支持を伸ばしたという分析も当たってはいるが、より重要なのは公共性を軽視する限り、政治を動かすことはできないということだ。
ガーシー騒動から見えてくるのは、たとえ偽善的だと揶揄されても、公共的な課題を語り続けることの大切さなのかもしれない。偽善は少なくとも善を意識する。彼らが語る露悪的なホンネの先には善すらないのだから。
【解説】
どうしてガーシーのような人がユーチューバーとして人気を博し、国会議員にまでなったのか、私には訳が分からなかった。
要するにお金に困ってユーチューバーになり、またお金に困って国会議員になったのですね。
呆れた人物です。
このような人物を自分の党の候補とした旧N党の立花氏もいいかげんな人物ですね。
この記事をどのカテゴリーに入れるか迷ったのですが、ガーシーを友人と公言してはばからない奥野卓志(たかしさん)にちなんで、「反ワクチン・陰謀論」のカテゴリーに入れました。
ちなみに、たかしさんのLINE VOOMの記事(2023.2.9)に次のような記載があります。
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久しぶりにドバイのお兄ちゃん(ガーシー)から連絡あって「拡散してな?」とのことだったので書きます(^^)
過去一くらい怒ってるお兄ちゃんの様子はコメント欄に貼り付けておきます
そして時を同じくしてNHK党の立花さんの動画もめちゃめちゃ勢いとエネルギーを感じたので貼り付けておきます
(以下省略)
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獅子風蓮