「県政オンブズマン静岡(静岡県庁の光と闇)~よりよき未来のために~」管理人のブログ

注)teacupブログから移転の2022年5月以前の投稿には、文字コードの違いから多くの文字化けがあります。

組織ぐるみ、監査も黙認、静岡県職員の事務の無法状態を公開

2014-04-13 00:35:00 | 近況活動報告
皆さんが家を新築しようというとき、どのような経過を辿るだろう。
一般な手順としては、おおむね次のようなものになるのではないだろうか。
(1)予算を決める、(2)候補の業者を選ぶ、(3)設計案、見積を取る、(4)業者決定、(5)契約をする、(6)着工、(7)完成・引渡、(8)支払
もちろん、これ以外の手順もあろう。
しかし、これが、
(1)予算を決める、(2)候補の業者を選ぶ、(3)着工、(4)ほぼ完成時に設計案、見積を取る、(5)業者決定、(6)契約をする、(7)完成・引渡、(8)支払
だったら?
通常は有り得ないだろう、あり得るとしたら発注者と受注者の間に、よく言えば強固な信頼関係が、悪く言えば癒着があり、しかもコストパフォーマンスに興味がないような場合であろう。

地方自治体における契約は地方自治法によって規制されている。
その順序はもちろん前者の例のとおりである。
しかし、現在の静岡県庁では後者の手順の違法を承知の上でこれを平然と行うことに何らの抵抗がなくなってしまっていることが分かったのである。

では、前置きを終えて、以下に実例を示そう。
事業名は「富士山世界文化遺産登録機運醸成業務委託」、業務は「(1)登録直後に堅調本館前で行う登録記念セレモニー(6月23日実施)、(2)6月29日から8月1日までの期間で県内主要駅や商業施設等で行うキャラバン隊の編成を中心とした広報、(3)8月4日にグランシップで行う世界遺産登録感謝の集いの企画運営、の3つの事業からなるもの」である。
なお、県の所管部署は昨年6月にメール御送信事件を起こし謝罪した静岡県文化・観光部文化学術局世界遺産推進課(H26年度の富士山世界遺産課の前身)である。

書証(2月13日請求の公文書開示請求により入手)から見えた時系列の流れは以下のとおり。
1 H25.5.24 委託契約の契約予定者を電通東日本株式会社外1社に決定
2 H25.6.22 (富士山の世界遺産一覧表への記載が決定)
3 H25.6.23 契約予定者らが委託事業のうち「富士山世界遺産登録記念セレモニー開催」を完了
4 H25.6.26 (富士山の世界遺産一覧表への記載により登録完了)
5 H25.6.29 契約予定者らが委託事業のうちキャラバン隊事業の初回を完了(第2回7/6、第3回7/13、第4回7/20)
6 H25.7.26 随意契約執行伺を起案、同日決裁、同日事業者(電通東日本・SBSプロモーション共同企業体)に見積書提出を依頼
7 H25.7.27 事業者が委託事業のうちキャラバン隊事業の第5回を完了
8 H25.7.30 事業者が見積書(契約希望金額9,421,650)を提出
9 H25.7.31 見積どおりの金額で支出負担行為伺(契約の伺い)起案
10 H25.8.1 事業者が委託事業のうちキャラバン隊事業の最終回を完了
11 H25.8.4 事業者が委託事業のうち「富士山世界遺産登録感謝の集い開催」を完了(この時点で設計書金額ベースで99%の業務が完了)
12 H25.8.9 支出負担行為伺の決裁完了
13 H25.8.9 委託業務実施計画書受領
14 H25.8.22 富士山静岡空港富士山回廊に設置予定の別注の展示パネル製作の遅れから展示作業に係る委託期間の延長依頼を起案、翌日に事業者に通知
15 H25.8.27 契約書に知事印押印(地方自治法上の契約成立日)

16 H25.8.27 事業者から8月4日開催の「富士山世界遺産登録感謝の集い」の必要経費が契約額を上回ったとして契約額の246,750円増額を申し出
17 H25.8.27 申出どおりの金額で支出負担行為伺(変更)起案
18 H25.8.29 支出負担行為伺(変更)の決裁完了
19 H25.9.5 増額し、期間延長(8/30を9/30に)した変更契約書に知事印押印(契約成立)
20 H25.9.27 委託期間の再延長依頼を起案、同日決裁、同日通知
21 H25.10.15 期間延長(9/30を10/31に)の変更契約書に知事印押印(契約成立)
22 H25.10.28 事業者から委託期間の再延長の申し出、同日県起案・決裁
23 H25.10.29 期間延長(10/31を11/15に)の変更契約書に知事印押印(契約成立)
24 H25.11.15 事業者から「委託業務実績報告書」が提出される
25 H25.11.29 11/22に完了検査(県HPに公開の出張記録になし)をしたとして「検査合格通知」を事業者に通知
注:2月13日に請求し3月に開示された公文書上では、請求や支出(支払)の公文書はなかった。

見てのとおり、見金額積や契約が成立する前にほとんど事業が完了しているという異常な手順を経ていることが分かろう。

なぜか?
この事業は自分の金ではなく税金という使い切りが奨励されている他人の金で行うものであるため、前置きで述べたとおり、県職員にとってはコストパフォーマンスに興味が向くわけがないのである。しかも相手がマスコミ関係とあらば、政治力の落ちた建設業者と違って気前良く信頼関係(癒着)をとなるのも無理からぬところであろう。

しかし、発注者と事業者の癒着だけでこの違法を完遂できないはずである。
それは審査機関があるからだが、問題は、静岡県においてはそれが機能していないということだ。
以下の画像は、この金額・内容で契約をして良いかを執行機関内だけでなく出納機関にも伺う「支出負担行為伺」という書類の裏面の記載である。8月9日の段階で審査機関が書類を見れば手続きの違法は明白であるにもかかわらず、是としているのである。


さらに、見てのとおり、既製のゴム印に日付を入れているだけであることが分かろう。
すなわち、繰り返しこのような違法が見過ごされるという、執行機関、審査機関が手を組んでの組織ぐるみの違法状態にあるということである。

また、類似の事案を監査請求した結果が示すとおり、監査委員においては違法であって損害があるかもしれないとしても、その損害額が立証できなければ不問としたことから、もはや誰からもとがめられないとして、会計事務にとどまらず自らの行う違法行為に不感症になっているのが今の静岡県庁なのである。

ここに、「地方公共団体は、その事務を処理するに当つては、住民の福祉の増進に努めるとともに、最少の経費で最大の効果を挙げるようにしなければならない」(地方自治法第2条)という地方公共団体の使命感が見られるだろうか。

これこそ、まさに堕落である。国民財産を守るパブリックサーバントから国民財産をむさぼるシロアリへの。

ゆえに、「静岡県水利用課、大井川広域水道企業団補助金不適切事務処理関係公文書の開示を拒否」や、「静岡県の不適切事務で1億2,840万5千円の国庫補助受けられず」は起こるべくして起こったという意味で、偶然ではなく堕落の必然というべきである。